2023年3月14日8:00
コストを抑えながらスピーディなキャッシュレス決済を可能に
静岡県道路公社では、これまで現金と回数券のみだった伊豆中央道と修善寺道路の通行料の支払いを、ETCXでも行えるようにした。ETCXは、ETC技術を活用して高速道路以外の施設でも決済を行える会員登録制のサービス。ETCと異なり、料金所で一旦停止する必要があるものの、財布から現金を取り出したり、釣り銭を受け取ったりする手間が生じる現金払いと比べれば、ドライバーははるかにスムーズかつスピーディに決済を完了できる。事業者側にとっても、ETCと比べて大幅にコストを抑えながらキャッシュレス決済を導入できるというメリットがある。静岡県道路公社は地元の利用者を中心にサービスの周知に努め、現状、約4%の利用率を、早々に10%まで引き上げたい考えだ。
コストに見合うキャッシュレス決済
ETC技術を活用したETCXを採用
伊豆スカイライン、箱根スカイラインなど、静岡県内の5道路を管理運営する静岡県道路公社では、2021年7月、伊豆中央道と修善寺道路の通行料の支払いに、ETCXを導入した。
それまで通行料の支払い方法は、現金と回数券のみ。財布から現金を取り出したり、釣り銭を受け取ったりするのは面倒だと、利用者からはかねてより、ETCを使えるようにしてほしいという声が多く聞かれていた。公社側も、平均10秒ほどかかる現金払いをキャッシュレス決済に置き換えて、利便性を向上させたいと考えていた。しかしETCを導入するには何十億円もの費用がかかる。通行料金は普通車で200円程度、交通量は伊豆中央道の江間料金所で年間約540万台(1日当たり平均約1万5,000台)、修善寺道路の大仁料金所で年間約330万台(1日当たり平均約9,000台)という状況で、この導入費用を回収するのは難しい。
今回、同公社が導入したETCXは、国土交通省が推進するETC多目的利用サービスの1つとして、ETCソリューションズが提供を始めたキャッシュレス決済サービスだ。料金所の各ゲートにすべてのデータとシステムを配して瞬時の認証を可能にしているETCとは異なり、ゲートには最小限のシステムを備え、クラウド上で認証処理を行うネットワーク型ETCのため、総計10レーンへの導入コストを約9億6,000万円に抑えることができた。
ETCXの利用には会員登録が必要
ゲート入場から退出までの平均時間は6秒
ETCXを利用するには、ETCカードおよびクレジットカードの情報を入力して、会員登録を行うことが必要。登録料や年会費などはかからず、ETCカードや車載器は現在使っているものをそのまま利用できる。
車両が料金所のゲートに入ると、車両検知器が自動的にクラウド上のサーバとの通信を開始。車両が一旦停止している2~3秒の間に、決済情報のやり取りを行う。ドライバー側からのアクションは一切不要だ。ドライバーはデジタルサイネージの表示で決済が完了したことを確認し、ゲートを退出。入場から退出までの時間は、平均して約6秒だ。
同公社では、ETCXの利用回数に応じた「いずトクX割引」を実施しており、最大50%の割引が適用される。割引率は、従来の紙の回数券と同じに設定している。製作・販売コストを考えると、回数券からETCXへの切り替えが進むことが望ましいが、「使い慣れた回数券を使い続けたい」「2台目・3台目の車にはETC車載器を積んでいないのでETCXが使えない」という利用者も少なくないため、当面は回数券の廃止は考えていないという。
地元住民へのサービス周知を図る
当面は10%程の利用率が目標
現在のところETCXで通行料を支払っているのは、全通行車両の約4%。同公社では、料金所の案内板やホームページでの告知のほか、ローカルのTVCMなども使いながら、地元住民へのサービス周知を図っている。同公社 道路部企画業務課 参事兼課長代理 松永学氏は、「会員登録というハードルがあるため、一足飛びに利用者を拡大できるとは思っていませんが、まずはできるだけ早く、利用率を1割程度まで引き上げたい」と話す。また、将来的には、伊豆スカイラインでもETCXの導入を目指したい考えだ。
ETCXはETCを街中でも使えるようにし、生活をもっと快適・便利にすることを目的に2020年に始まったサービスだが、現在利用できるのは、3月1日開始の松島有料道路(熊本県)を含めると、有料道路6カ所、ガソリンスタンド2カ所、駐車場1カ所にとどまっている。導入企業が増えれば自ずとサービスの認知が広がり、利用者も増えるはず。利用施設の拡大に関しては、ETCソリューションズの今後の動きに期待したいところだ。