2015年6月16日7:18利便性が高く、安全性に優れたモバイル決済サービスの普及を目指す「MasterPass」や「MDES」のアジア・太平洋地域で推進を強化
国際ブランドのMasterCardでは、デジタル・ウォレットサービス「MasterPass(マスターパス)」の推進、カード情報のトークン化により消費者が安心してモバイウォレットを利用可能な「MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」の提供などにより、利便性が高く、セキュリティを確保したモバイルサービスの実現を目指している。MasterCard アジア・太平洋地域エマージング・ペイメント・グループ責任者 ラジ・ダモハラン氏にアジア・パシフィックエリアでのサービスの現状と今後の展開について話を聞いた。
「Apple Pay」、「Samsung Pay」等で「MDES」が採用
オーストラリアでは多くのイシュアが採用
――近年、グローバルでは「Apple Pay」をはじめとするデジタル決済サービスが登場していますが、MasterCard様と連携されていますね。ラジ・ダモハラン:
MasterCardでは、「Apple Pay」、「Samsung Pay(サムスンペイ)」のサービスを提供するApple、Samsungとそれぞれのパートナーとなっていますが、課題となっているのはどのようにセキュリティを確保するかとなります。デジタルウォレットでは、MasterCardの「マスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」により、トークン化することで安全性を担保しています。また、Apple Pay、Samsung Pay経由のすべてのMasterCardトランザクションは業界標準のEMVレベルの安全性を確保しています。トークン化しながら新しいソリューションを提供することで、市場に対してのオプチュニティになっています。
Apple Payは米国でスタートしましたが、Samsung Payは米国と韓国で展開される予定です。「MDES」では、セキュアエレメント、クラウド上の双方でトークン化を提供できます。たとえば、オーストラリアでは、大手銀行のCBA(Commonwealth Bank of Australia)がAndroidプラットフォームによるNFC決済を開始しましたが、MasterCardのクラウドベースのシステムを利用しています。消費者が現在使っているデジタルプラットフォームを使って、より安全に利用できるのがキーになります。
また、オーストラリアでは、銀行や加盟店でMDESをご利用いただいています。そのほか、アジアの多くの銀行がMDESをご利用いただく予定です。
アジアでは中国で「MasterPass」のサービスを開始
「MDES」との融合もグローバルに進める
――NFCをはじめとしたモバイルペイメントについては、話題性はありますが、実際の利用はそれほど進んでいない地域も多く見受けられます。ラジ・ダモハラン:
PRIME Researchという企業に協力して作成した「Mobile Payments Study」では、TwitterやFacebookといたソーシャルネットワークで、どのような話題がされているのか調査しましたが、2年前はセキュリティについての会話がほとんど占めていました。ただ、現在は如何に早く、便利に決済できるかというトピックが増えており、リワードやクーポンといった会話が多くなっています。モバイルペイメントには、ブラウザベース、アプリケーションベース、NFCなどのタップ、QRコードでのかざす決済に分けられます。たとえば、インドと中国では、ブラウザを使ってモバイル決済が行われています。また、デジタル決済サービス「MasterPass」はPC経由での決済が可能で、モバイル端末でも多く利用されています。また、中国ではすでに「MasterPass」をローンチしております。
「MasterPass」の支払いでは、主に①PCやブラウザベースのオンラインペイメント、②アプリケーションやブラウザベースのモバイルペイメント、③コンタクトレスの3つの支払いに分けられます。また、QRコードによる支払いにも対応しています。「MasterPass」では、カード番号や送付先の住所などは事前に登録することができ、決済の都度、カード番号を入力する必要はありません。また、マイレージカードやクーポンといった付加価値サービスも提供できます。
なお、コンタクトレスペイメントについては、違った名称(MasterCard ContactlessもしくはMasterCard PayPass)としてローンチされていますが、将来的にはすべて「MasterPass」に統合する予定です。
――MasterCardでは、2015年は、「MDES」と「MasterPass」の融合に力を入れるという情報もあります。また、今後はデジタル決済においてトークン化は主流になると思われますか。
ラジ・ダモハラン:MDESとMasterPassの融合に注力するのは事実であり、現在加盟店の協力を得ながら進めています。また、今後はトークン化が主流になると思います。コンタクトレスに加え、モバイルアプリケーションでもトークンに置き換える必要も出てくるでしょう。MasterCardでは、セキュリティの課題を解決するため、より安全に決済ができることを目的にトークン化を進めています。
すでに、アジア・パシフィックエリアのイシュアは、「MDES」を利用されています。MasterCardでは、コンタクトレスが受け入れられているマーケットではすべてのイシュアがターゲットとなると考えています。
日常生活で受け入れられるモバイルサービスを目指す
日本でもユーシーカードがサービスをローンチ
――NFCによるモバイルペイメントでは、HCE(Host Card Emulation:ホスト・カード・エミュレーション)によるクラウドベース、組み込みのセキュアエレメントやUSIMベースの決済などが展開されていますが、今後の推進についてお聞かせください。また、カードも含めた非接触IC決済のアジアでの展開についてはいかがでしょうか?ラジ・ダモハラン:
HCEかUSIMかについては、特にどちらかに限定するのではなく、それぞれの利点があるため、双方をサポートしていきたいです。韓国とシンガポールでは双方が展開される予定です。
また、コンタクトレス決済は市場で受け入れられてきています。一番進んでいるのはオーストラリアですが、シンガポール、香港、台湾などが続き、新しいマーケットとして中国とインドがあります。
――最後に、今後の意気込みについてお聞かせください。
ラジ・ダモハラン:消費者はモバイルペイメントに、今まで以上に興味を示しています。私たちMasterCardが信じているのは、オンラインでの買い物だけではなく、食材を購入したり、朝起きてコーヒーを買ったり、毎日の生活の中でモバイルが受け入れられていくことです。
MasterCardは加盟店がよりよい購買体験を消費者に提供するためのサポートをすることを目的としており、安全に、便利に使えると消費者に認識していただければ、より多くの方にご利用いただけるようになり、飛躍的にサービスが広がると期待しています。
「MasterPass」には、数多くの金融機関も興味を示しており、日本でもすでにユーシーカードがサービス開始を発表しています。MasterCardとしてもそれをさらに拡大していくことが目標になります。