Apple Payに採用された「MDES」と「MasterPass」の融合に注力(MasterCard)

2014年12月17日8:09

Apple Payに採用された「MDES」と「MasterPass」の融合に注力
MasterCardのデジタル決済のネットワークを世界中で構築へ

Appleが発表した「Apple Pay」の支払いには、国際ペイメントブランドのMaterCardが提供する「マスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」が利用されている。2015年以降はMDESと、MasterCardが推進するデジタル決済サービス「MasterPass」との融合も考えているそうだ。同社のデジタル決済の取り組みについて、グループヘッド&SVP モバイル&エマージングペイメント ジェームス・アンダーソン氏にインタビューした。

MDESを利用する金融機関は増加
MasterPassとの融合は2015年第二四半期にスタート

――Appleが開始したApple Payでは、クレジットカードやデビットカードの情報をトークン化し、別の番号に置き換えて利用していますが、MasterCard様では、このトークンを生成し、スマートフォンやサーバへ書き込む機能である「MDES」を提供されていますね。

ジェームス・アンダーソン:Appleが開始した「Apple Pay」では、サービス開始当初から、Bank of America、Capital One Bank、Citi、Wells Fargoが、MDESを利用しています。その後、利用する銀行はさらに増えています。

MasterCard グループヘッド&SVP モバイル&エマージングペイメント ジェームス・アンダーソン氏
MasterCard グループヘッド&SVP モバイル&エマージングペイメント ジェームス・アンダーソン氏

次の展開として、MDESのインフラを「チェックアウトサービス」、「ウォレット・サービス」、「高付加価値サービス」の3つの機能が提供できるデジタル決済サービス「MasterPass」とつなげていきたいです。最初のMasterPassプログラムは来年の第二四半期にスタートする予定です。すでに数百の銀行がパイプラインに入っており、さらにデジタル決済環境を強化することで、世界の中でネットワークを構築していきたいです。今は米国の銀行だけで200はあると言われています。現在はApple PayでAppleのみの接続ですが、他の企業にも勧めていきたいです。

――MDESの他地域での展開は考えていらっしゃいますか?

ジェームス・アンダーソン:アジア・太平洋、欧州、南米など、どのマーケットであっても銀行、デジタルの業界のコネクションを必要としている地域であれば、MDESがブリッジとして使われると思います。アジアパシフィックからも米国に訪れ、サービスについて説明を求められるケースも出てきています。

Apple PayはMasterCardのネットワークを活用
NFCモバイルペイメントではHCEでもセキュアなサービスを実現

――MasterCard様でも非接触ソリューションを展開していますが、Apple Payの位置づけについてどのようにお考えですか?

ジェームス・アンダーソン:Apple Payで大切なのは、MasterCardの支払いを取り換えていることです。Apple Payは表面の部分であり、消費者が支払いをするときにはMasterCard等のネットワークを活用しています。また、加盟店への支払いはMasterCardを使ったトランザクションとなります。これは非常に重要で、Apple Payは使う人のインターフェースを増やしていることであり、また従来通り銀行と消費者はつながっています。弊社では、多くの方にMasterCardのコンタクトレスソリューションを使ってほしいと考えており、その1つがApple Payとなります。

――非接触決済は米国において、どの程度浸透されていますでしょうか?

ジェームス・アンダーソン:まだまだ、消費者が日本のように慣れていません(笑)。Appleは市場において大きな存在です。それにより、消費者はNFCによる支払いに興味を持ちました。

――現在、NFCモバイルペイメントでは、クラウド上でデータを管理する「Host Card Emulation(HCE)」が注目されていますが、セキュリティ面での不安を指摘する声もあります。

ジェームス・アンダーソン:HCEにおいてはセキュリティモデルが従来と異なったものとなります。通常のNFCモバイルペイメントの場合、基本となる暗号キーをハードウェアに搭載しますが、HCEではキーをサーバに入れます。そこからサブキーを出しますが、そのマネージも気を付けて行わなければいけません。MasterCardとしては、厳格にキーをマネージできるスペックがあり、セキュアなソリューションを実現しています。また、American Express、Visaとともに、カード番号を他の乱数に置き換えることで安全性を担保する「トークナイゼーション」の考え方についてリリースを行っており、EMVにおいてトークンでどういった仕様にするのかについて合意しています。

MasterPassは4万加盟店が利用 来年以降はPOSでの利用も増加

――これまでのMasterPassの導入の成果についてはいかがでしょうか。

ジェームス・アンダーソン:MasterPassは導入初期ですが、すでに4万加盟店が利用しています。今後は、先ほど申し上げたように、MDESとMasterPassの融合が必要になると思います。それが来年、再来年となり、POS、インターネット、アプリケーションの決済がMasterPassのフレームワークの中でできるようになります。これまで、MasterPassはオンラインの世界で利用されてきましたが、来年以降はPOSでの事例も増えてくるでしょう。なお、「MasterCard PayPass」については「MasterCard Contactless」に名称変更しました。MasterPassとMDESを融合できれば、コンタクトレスをサポートすることになります。

――今後の展開について意気込みをお聞かせ下さい。

ジェームス・アンダーソン:消費者は今後も自身の持っているデバイスを便利に使用していきたいと考えていますので、MasterCardでは、彼らに合ったデバイスをサポートし、便利な支払いツールを提供していきたいです。MasterCardでは、お客様が使用した時に直観的に使いやすいサービスを、世界レベルで高いセキュリティを持った状態で提供するという考えのもとAppleにサービスを提供しました。 また、日本においては、コンタクトレスでの支払いは長い間使用されていますが、MasterCardとしても日本の非接触決済サービス「iD」とターミナルをサポートしています。日本でも大きなビジネスチャンスがあると考えており、MasterPassを通じてより良いサービスを提供していきたいですね。

 ※取材は2014年11月2~5日まで開催の「Money20/20」にて

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