2016年12月21日10:45
世界各国でさまざまなモバイルペイメントサービスの支援を行ってきたGemalto(ジェマルト)。日本では大日本印刷(DNP)と連携してサービスを提供している。同社 モバイル・ファイナンシャル・サービス プロダクト・マーケティング ディレクター Thierry Koeberle氏に、モバイル決済サービスの取り組みについて話を聞いた。
カイシャバンクがスペインで初めてSamsung Payを開始
日本ではDNPがApple Payに対応したサービスを提供
――まずはグローバルにおける貴社のモバイルペイメントの取り組みについてお聞かせください。
Thierry Koeberle:弊社では「Allynisトラステッド・サービス・ハブ(TSH)」により、カード発行会社(イシュア)にモバイル決済サービス開始への支援を行うワンストップの接続サービスを提供しています。2015年から極秘でさまざまなプロジェクトが行われてきましたが、その1つがスペインの金融サービスプロバイダであるカイシャバンク(CaixaBank)となり、Samsungの「Samsung Pay」をヨーロッパで初めてローンチさせました。
TSHでは、EMV、MIFARE、日本のFeliCaなどのシステムを受け入れることが可能となっています。Appleの「Apple Pay」、Googleの「Android Pay」、Samsungの「Samsung Pay」といったOEM Payをはじめ、さまざまな決済の仕組みに柔軟に対応可能です。たとえば、DNPでは、弊社のハブを通すことにより、日本で「Apple Pay」に対応したクラウド型決済サービスを構築されました。
フランスでも2017年以降はHCEの採用が進む?
各リージョンや銀行にあったサービスにアダプト
――HCE(Host Card Emulation)ベースのモバイルペイメントの採用状況はいかがでしょうか?
Thierry Koeberle:スペインにもカルフール(Carrefour)という大きなスーパーマーケットがありますが、AndroidベースでHCEの仕組みによるウォレットサービスを構築されました。現在、グローバルではOEM Payを確立させる流れが進んでいますが、HCEの利用もいずれ増えると考えています。オーストラリアではHCEの仕組みが使われ出していますが、フランスでも2017年の第一クオーターをめどに協定ができ、HCEを採用する流れが進む予定です。
――世界には複数のデジタルセキュリティベンダーがありますが、競合と比べた貴社の強みついてお聞かせください。
Thierry Koeberle:弊社は競合企業がサービスを開始する前からモバイルペイメントの準備を進めてきました。また、テクノロジについてもさまざまな仕組みをカバーできるキャパシティがあり、すでにトークナイゼーションの仕組みができあがっています。たとえばPROSA(プロザ)というメキシコで最も有名なプロセッサーにもトークンサービスを紹介しており、各リージョンや銀行にあったサービスにアダプトできます。
さらに、他社との違いという意味では、オランダの郵送のシステムに関しても弊社が作り上げた実績があり、ICカードキーで部屋の電気をつけたり、モバイルフォンで明るさをコントロールできるなど、アプリケーションの広がりも期待できます。
フランスのRATP、SNCF、ORANGEとJV設立
企業のデジタル化を全面的にバックアップ
――今後の展開についてお聞かせください。
Thierry Koeberle:フランス国内では、地下鉄などを運営する「RATP」、国鉄の「SNCF」、携帯キャリアの「ORANGE」、弊社でジョイントベンチャー(JV)を設立しています。その「Wizway Solutions」では、将来的にすべての公共のシステムをシームレスに作り上げて、ドア・ツー・ドアの移動を容易にするモダンでシンプルなチケットソリューションを提供するために活動しており、行政の後押しもありスタートした事業となっています。
弊社では、企業のデジタル化を全面的にバックアップしていける企業になりたいと考えています。たとえば、銀行に来てはじめて口座を開設する時から、モバイルペイメントシステムを使ったり、認証のサービスを利用するなど、高いセキュリティを駆使して、消費者の生活をできる限り豊かにするサービスを銀行等に提供していきたいですね。
※取材は2016年11月29日~12月1日まで、フランス・カンヌで開催された「TRUSTECH(トラステック)」にて