2017年4月12日8:00
国内で初めて前払式支払い手段を用いた送金サービス
Kyash(キャッシュ)は、2017年4月5日に記者会見を開催し、本人確認不要な個人間の無料送金アプリ「Kyash」の提供を開始した。事前に登録したクレジットカード、Visaプリペイドカードと連動することにより、消費者はアカウントに残高がない状態でも送金や決済が可能だ。
決済や送金の仕組みを自社で構築した開発力が強み
「送金+決済」でお金の動き方、あり方をより自由に
Kyashは、2015 年1月創業。2016年12月までに総額約13億円の資金調達を実施したことでも話題となった。決済領域では、TISがリリースしたクレジットカードなどの決済カードの利用管理システム「CARD×DRIVE(カード・ドライブ)」 において、決済カード利用情報のリアルタイムプッシュ通知・履歴閲覧システムを提供している。新たにサービスを開始した無料送金アプリ「Kyash」は、2016年12月14日から、招待制のクローズドβ版を提供していたが、このほど正式にローンチとなった。Kyashでは、決済や送金の仕組みを自社で構築した開発力が強みとなっている。
「Kyash」の提供にあたり、「スマホで、いつでも、どこでも、簡単に、即座に、無料で送金・決済できる仕組みを目指した」と、kyash 代表取締役 鷹取真一氏は説明する。お金の動き方、あり方をより自由にすることで、友人等への送金、店舗やウェブでの支払いをはじめ、日常のお金のやりとりが便利にできる世界観を構築したそうだ。
本人確認なく、誰でも送金が可能
アプリをダウンロードしていない人にも送金できる
国内でも消費者が気軽に送金できることを売りにしたさまざまな送金サービスが登場しているが、前払式支払い手段を用いた送金サービスであることが「Kyash」の特徴だ。ヤフーの「Yahoo!ウォレット」で提供する「Yahoo!マネー」や、LINEの「LINE Pay」は資金移動業となり、本人確認が必須だ。また、AnyPayが提供する「paymo」では、収納代行の仕組みを利用した割り勘アプリをうたっており、本人確認は不要だが、レシート共有者のみの送金となる。「Kyash」は、本人確認が不要で利用でき、かつ誰でも送金が可能で、そのうえ国内外のVisa加盟店での支払いが行えることを売りとしている。
利用者は、スマートフォン(iOS)に「Kyash」のアプリをダウンロードし、氏名やメールアドレスといった情報を入力すると、バーチャルなVisaプリペイドカードが発行される。同カードは、国内のクレジットカード会社の協力を得て発行している。
アカウント登録を済ませた消費者は、クレジットカードもしくはデビットカード(VisaおよびMastercard)、一部のプリペイドカードなどを登録することで、無料で送金が可能だ。「Kyash」では、LINE、Facebook、Twitterはもちろん、メールなどでつながる相手に対して送金ができる特徴も備えている。その際、仮に代金を受け取る立場の人が、「Kyash」アプリをダウンロードしていなくても、送金や請求が可能だ。
残高0円でも紐づけされたクレジットカードから送金できる
夏頃にはVisaのリアル加盟店での支払いも可能に
また、アカウントにあらかじめ金額をチャージする送金サービスの場合、その残高がなくなった場合、送金できない状況が発生するが、「Kyash」ではその課題を解決。利用者は、事前に登録したクレジットカードからVisaプリペイドカードに紐づけてサービスを利用できるため、仮にプリペイドカードの残高がなくなっても、即座の送金が可能だ。また、「Kyash」アカウントにお金を貯めることもでき、そこから送金できる。
さらに、「Kyash」ではVisaプリペイド機能により、Visaが使えるウェブサイトでの支払い、モバイルSuicaへのチャージも可能だ。ローンチ当初は、Visaのオンライン加盟店のみで支払いが可能だが、「夏頃までには広い範囲で使用できるように準備をすすめている」と鷹取氏は話す。なお、プラスチックカードの発行、銀行口座から「Kyash」アカウントへの入金は想定していないとのこと。また、Visaプリペイド機能の有効期限は5年間となり、期限後は新カードに切り替えられる。
具体的な利用については、「割り勘、プレゼンの割り勘、旅行時の割り勘、クラウドファンディングの企画を立てるときに複数人からお金を集める、セミナーの講演料やイベントの参加費なども回収できます」と鷹取氏。
個人間送金が浸透していない日本でのKyashの勝算は?
若年層のセグメントに向けてさまざまな協業が進む
「Kyash」では、コマースやソーシャルメディアなど、ベースとなる会員基盤を有していないが、勝算はあるのだろうか? その点に対し、「既存の顧客基盤が協業優位性を持たないのは米国の例(“Just Venmo Me.”という造語ができるほど米国ではVenmoが浸透)があります。フリマアプリのメルカリのように、アプリのユーザビリティと機能性をもっとも高くできれば外部性を享受できるものと考えております。具体的には、学生など若年層のセグメントに向けてさまざまな協業の話が進んでいます」と回答。
セキュリティ面では、カード会員情報や取引情報を保護するためのペイメントカードのセキュリティ基準である「PCI DSS Version 3.2」、 個人情報管理における認証マーク「TRUSTe(トラストイー)マーク」を取得している。
「Kyash」の当面の目標として、2020年までに1,000万人の利用を掲げる。また、安価な運用コストと高い柔軟性を生かして、海外展開も視野に入れているそうだ。