2017年12月14日12:34
2017年の事業活動を報告し2018年を展望する記者懇親会を開催
デジタルセキュリティ・ソリューションを提供するグローバル企業、ジェムアルト(Gemalto)は、2017年12月11日、東京都港区にて記者懇親会を開催。各事業の日本における責任者が2017年を振り返り、2018年を展望するとともに、デモを交えて各種ソリューションを紹介した。
通信ネットワーク環境の進化によりIoTが一気に広がると予測
ジェムアルトは、認証と暗号化、IoTをはじめとするデジタルセキュリティ・ソリューションをグローバルに展開している。記者懇親会では、5分野の事業責任者が、2017年の事業活動と2018年に向けた展望についてのプレゼンテーションを行った。
モバイルサービス&IoT事業本部 蔦田剛士氏は、はじめに通信ネットワークがLTEから5Gに進化すると説明。また、「Low Power Wide Area(LPWA)」ネットワークの導入が進むことにより、IoTの世界が大きく広がると述べた。
同社では、マイクロソフトのSurface ProでのLTE Advancedによる常時接続を実現したり、ダイムラーがメルセデス・ベンツに採用するデジタルキー向けにトラステッド・サービス・ハブ(TSH)を提供したりとさまざまなIoT事業を展開。2018年も引き続き「コネクト」「セキュア」「マネタイズ」の3つをキーワードに、デバイス、クラウド、サービスを統合させ、事業展開を図っていく。
漏えいを想定した対応が求められる時代
データの暗号化、強固な認証は必須
企業向けソリューションを提供するアイデンティティ&データプロテクション事業本部 中村久春氏は、まず、データ漏えいの現状について解説した。2017年上半期に世界で報告されている漏えいデータ数は19億以上。データ漏えい件数918件の中には世界のそうそうたる企業が含まれており、このうち、59.3%は、漏えいしたデータ数が不明なのだという。その理由は、長期間にわたって盗まれたり、アクセスデータが残らない方法で抜き取られたりするケースがあるからだ。漏えいしたデータを特定できなければ、例えばクレジットカード会社であれば、すべてのカードを発行し直さなければならないという大変な事態になりかねない。
また、漏えい件数のうちデータが暗号化されていたのは4.6%にすぎず、95%以上ではローデータがそのまま流れてしまっているという。ここに同社の技術を役立ててほしいと中村氏は言う。
データ漏えいに見舞われた企業は決してセキュリティ対策をとっていなかったわけではなく、むしろ信頼にたるセキュリティソフト等を利用していた。つまり、データ漏えいを完璧に阻止するのはほとんど不可能であり、データ漏えいを想定した対応を考えておくことが必要だとした。データの暗号化、暗号化した鍵の厳重な管理、強固な認証とアクセス制御の3点が重要と中村氏は説いた。
ソリューション導入の効果を最大化するためコンサルティング部隊を立ち上げ
ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 前田利幸氏は、ソフトウェア収益化についての見解を述べた。かつて売り切り型だったソフトウェアは、2017年にはサブスクリプションモデルが主流となった。2018年にはソフトウェア市場では熾烈な競争が起こると考えられ、これに勝ち抜くにはサービスにシフトした企業戦略が必要。同社では提供するソリューションの効果を最大化するため、プロフェッショナル・サービスとしてコンサルティング部隊を立ち上げ、すでに大手3社に対してサービスを提供しているという。
世界100以上の政府プログラムに参画
パスポートリーダーは世界トップのシェア
公共事業本部 酒匂潔氏は、ジェムアルトの事業内容を紹介。同社は世界100以上の政府プログラムに参画しており、米国ではデジタル運転免許証の実験運用をしている事例もある。また、空港やホテルで使われているパスポートリーダーに関しては世界トップのシェアを持つ。同社はさまざまな分野で培った経験・知見をもとに、来る2018年以降もデジタルセキュリティの世界的リーダーとして社会に貢献していきたい考えだ。
注目の決済分野の2018年の動向を予測
生体認証の活用が進み、2020年に向けて非接触EMV決済が本格化?
注目のバンキング&ペイメント事業については、西健治氏が説明。
2017年には、2016年に日本に上陸したApple Payが浸透したり、決済に絡んで指紋や顔認証などの生体認証が利用されることが増えるなど、金融サービスのデジタル化が進んだとした。同社ではこれに対応し、ワンタイムパスワードでセキュアにバンキングのシステムにアクセスできるモバイルやトークン型、カード型のデバイスなどを提供してきた。
また、デビットカードの非接触ICカード化も進んだとう。非接触ではこれまでSuicaなどFeliCaを活用した独自の決済が先行していたが、世界標準のEMV化が始まっている。
この流れを受けて、2018年はさらにデジタル化が進展するとした。Android端末を使った決済も増えてくると想定される。その中で、指紋、顔、声などを用いる生体認証がますます普及し、多様化していく。利便性とともに安全性を確保するために、生体認証と合わせて、例えばスマホを見る角度や入力スピードなどを用いた行動認証が採り入れられていくと予測される。
2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックに向けて、非接触EMV決済が急速に拡大すると見られ、同社もそれを強力にバックアップしていくと西氏は述べた。