2010年10月1日10:17
開始から6年が経過した「おサイフケータイ」
「NFC」とのスムーズな融合は進むのか?
携帯電話にソニーのFeliCaの技術を搭載した「おサイフケータイ(FeliCa対応携帯電話)」は2004年7月にNTTドコモから発売された。同社ではケータイクレジットのブランドである「iD」、ケータイクレジット「DCMX」を展開。6年の間におサイフケータイの機能を徐々に向上させ、適用分野、サービスも広がりを見せているという。また、おサイフケータイのインフラを拡大させるNFCの展開にも着目している。NTTドコモ フロンティアサービス部 おサイフケータイ事業推進担当部長 中村典生氏と同部 おサイフケータイ事業推進 NFC推進 担当課長 市川剛氏に「おサイフケータイ」の利用促進に向けた取り組みやNFCビジネスへの展望について話を聞いた。
おサイフケータイの所持ユーザーの約3割が利用
利用促進に向けNFCタグ機能の活用に注力へ
――サービス開始から6年経過しましたが、現在の状況からお聞かせください。
中村:おサイフケータイの保有契約者はドコモだけで3,750万を超えました。そのうちおサイフケータイの利用者は3割強となっています。まだまだ利用者数を伸ばしていかなければいけないと考えていますが、お使いになられていない方の理由をうかがうと、「そもそも電子マネーを使わない」「携帯電話に電子マネーを載せると面倒そうだ」「携帯を落としてしまったら心配」「なんとなく難しそう」などの意見が多かったです。ただ、一度おサイフケータイをお使いになられた方からは、「便利で手放せない」といったご意見をいただきます。
――おサイフケータイの利用率を高めるための取り組みについては、どのような施策を行っていますか?
中村:弊社は携帯クレジットの「DCMX」を展開しており、その契約者に向けての利用促進の訴求を行っています。ただ、電子マネーにネガティブな印象をお持ちであったり、「なんとなく難しそう」という方には、どんなに訴求してもすぐに利用していただくのは難しいと考えています。そのため、まずは気軽におサイフケータイの機能を使っていただこうと。すぐに電子マネーや乗車券の機能としてお使いいただくことが難しいのならば、FeliCaのNFCタグ読み取り機能を利用して楽しく便利に利用していただけないかということです。
これはiアプリを起動して、NFCタグを搭載した紙のポスターに携帯電話をタッチさせるだけで、店舗情報やお得なクーポンなどを入手できる仕組みです。7月に凸版印刷様が紀伊国屋書店様やアニメイト様などの店舗で実施した「FeliCa Lite搭載ポスターをタッチする実証実験」でも弊社がタグリーダアプリを提供しました。
ここでは、FeliCa Liteにより標準規格にしたがったNFCタグを実現して使用しています。例えばNOKIAの一部の携帯電話にはNFC読み取り機能が搭載されていますが、FeliCa Liteを使ったNFCタグならば読み取ることが可能です。
市川:今後は世界中でNFC機能を搭載した携帯電話を投入する動きがあります。NFCはFeliCaだけではなく、TypeAやTypeBも包含しており、データの格納形式を標準に合わせれば、暗号化されていない部分については、世界中のいろいろな機器で読みとることが可能です。
瀬戸内国際芸術祭2010で案内サービスを実施
健康器具との連携にも期待
――行動支援サービスである「iコンシェル」やトルカ(ToruCa)といったサービスの現状についてはいかがでしょうか?
市川:最近では、iコンシェルと連動して、トルカを携帯電話に保存しておくと自動更新機能によって常に最新の情報を見ることができる取り組みを行っています。
中村:例えば、マクドナルドではiDで購入したお客様に抽選で商品がその場で当たる懸賞を実施しましたが、この懸賞は決済と同時に取得できるトルカの機能を利用しており、生活者からすると非常にわかりやすいカタチであると思います。各メーカーからトルカに対応したリーダライタが出荷されていますので、例えばメールマガジンの代替やクーポンなど、いろいろなシーンでお使いいただければと考えています。また、おサイフケータイの「iC通信」を利用すれば、お互いのケータイをかざすだけで電話帳や写真・トルカなどのデータを送受信できます。
市川:iC通信は携帯電話間の利用だけがメインに見えますが、NFC機能が家電製品に入ってくればiC通信を用いて情報が取得できるようになります。また、「CROSS YOU」のような仕組みを入れれば、ハードディスクレコーダーにケータイをかざすことでbluetoothやWi-Fiのペアリングが成立し、それら経由で録画した番組を手軽に取り出すといったことも可能になるでしょう。
――行動支援サービスなどにもおサイフケータイを利用する動きがあるようですが?
中村:行動支援サービスは、トルカとiコンシェルの機能を利用したサービスが第1点で、すでにさまざまな事業者の方がサービスしています。そして先ほどもお話したNFCタグ機能を利用したものが2点目です。たとえば、7月19日から10月31日まで開催されている瀬戸内国際芸術祭2010では、FeliCa Liteを添付した芸術作品の案内板にケータイをかざすと、芸術作品の詳細な情報などを案内する取り組みを実施しました。
市川:他では健康器具の中にFeliCaを搭載して健康データを収集し、健康指導に利用するようなサービスも誕生してきました。歩数計や血圧計のようなものはそれを直接インターネットに接続するのは難しいため、いったんケータイに情報を集めてから、お医者さんやアドバイザーの方に相談するような流れです。世界的にも、コンティニュア・ヘルス・アライアンスなどで、健康器具と外部機器間でやりとりするデータの標準フォーマットが定められたりしており、今後こうしたサービスも益々拡充してくると思います。