2018年2月15日9:43
レポート「クレジットカードビジネス市場要覧」では、1949年に京都の専門店会がチケットで分割払いを開始以降の、日本のクレジットカードビジネスの展開について年表で紹介している。今回は、デビットやプリペイドも含め、日本のクレジットカードビジネス、カードビジネスに触れたい。
丸井がクレジットカードを国内で最初に発行、デビットカードは不毛地帯に
日本のクレジットカードの取り組みは1960年代に始まり、アメリカより10年ほど遅いものの、諸外国に比べても早い段階で取り組まれてきた。丸井が、クレジットカードを国内で最初に発行に発行したと言われている。
CD(キャッシュディスペンサー)やATMの導入も1970年代から始まり、世界で最も普及した国になっていた。欧米では、CDやATMの普及に際し、1980年代から1990年代にかけてバンクPOSデビットカードの普及と合わせて取り組みが行われてきたのに対して、日本は1984年の大蔵省(当時)の機械化通達により、ネットワークとしてのオンラインデビットカードの取り組みが実質的に困難となり、デビットカード不毛地帯となってしまった。
1990年代のIC電子マネートライアルは頓挫
デビットカードがすでに普及していた欧米やアジアのシンガポールや香港で、1990年代中頃からコンタクトIC カードを用いたIC電子マネーのトライアルが行われた。欧米では、決済単価の低いデビットカードをIC電子マネーへ振り向ける目的があり、デビットカードへのIC電子マネー機能の搭載が試みられていた。日本では、デビットカードは全く発行されていなかったが、VISAキャッシュやスーパーキャッシュなどのトライアルが1997年から1999年にかけて、神戸、渋谷、新宿、大宮などで行われた。日本の場合は、ATMカードやクレジットカードへのIC電子マネー機能の搭載を目指していたが、こうしたIC電子マネーのトライアルは欧米と同様に不評で、ほとんどのプロジェクトが頓挫した。
2000年代は少額決済をコンタクトレスペイメントが担う
2000年代に入ると、日本ではコンタクトレスICカードを用いたIC乗車券やIC電子マネー(Edy、nanaco、WAONなど)が2000年代にいち早く普及し始めた。モバイルペイメントについては、モバイルFeliCaが2004年に他国に先駆けてスタート。イギリスやカナダ、オーストラリアでは、クレジットカードやデビットカードなどのペイメントカードがEMVスタンダードのコンタクトICカードに切り替わると、次いでデュアルインターフェースのICカードによるVisa pay WaveやMastercardコンタクトレスなどのコンタクトレスペイメント機能が搭載されるようになり、少額決済をコンタクトレスペイメントが担うようになっている。
EMV ICカード化が遅れたアメリカでは、デュアルインターフェースのICカードによるEMV ICカード化が行われ、これと同時にコンタクトレスペイメント機能の搭載が進められている。また、2014年のApple Payや2015年のAndroid PayやSamsun Payなどと、コンタクトレスペイメントのインフラを使ってモバイル財布が次々に登場し、拡大している。
これまでの成長過程(歩み)のを今一度振り返る必要がある
ようやく日本でもJCBやVisaなどのオフラインデビットカードやオープンループのオンラインプリペイドが普及し始めた。キャッシュレス化には、クレジットカードのみならず、デビットカードやプリペイドカードといった3本の矢が欠かせない。かつてのようにカード形状をした3本の矢ではなく、モバイル財布やデジタル財布にクレジット、デビット、プリペイドのいずれかの機能、あるいはすべての機能を搭載できるようになっている。
スタートはアメリカより10年ほど遅れたものの、ペイメントカード大国でありキャッシュレス化が進むイギリスやカナダ、オーストラリアといった国には遅れてはいなかった。しかしCD/ATMの普及過程におけるデビットカード浸透の遅れが、こうした国々との大きな差を生んでしまった。モバイル財布やデジタル財布が台頭するだろう次の時代に、日本のペイメントカードがいかに発展していくかを考える上で、これまでの成長過程(歩み)のを今一度振り返る必要があるだろう。