2018年3月30日8:00
中国のモバイル決済「Alipay」「WeChat Pay」の利用は想定以上に推移
加森観光が運営する「ルスツリゾート」は、新千歳空港や札幌から約90分で訪れることができる、羊蹄山の麓に抱かれた本格リゾートとなる。同リゾートでは、中国のモバイル決済サービスである「Alipay」や「WeChat Pay」、「銀聯」、各種電子マネー、クレジットカード(多通貨決済サービス含む)など、顧客の利便性を考え、さまざまな支払い手段に対応している。
インバウンド観光客が増加
観光シーズンに向け準備を整える
ルスツリゾートは、夏は60種類以上のアトラクションを揃えた遊園地、4コース72ホールのゴルフ場、北海道最大級のスケールとなる300mの流水プールが楽しめる。また、周辺でもラフティングや熱気球など、北海道ならではの壮大な体験が可能だ。冬は3つの山にまたがる、総コース数37、総滑走距離42kmの北海道最大級のスケールを誇るスキー場を楽しむことができる。
ルスツリゾートでもインバウンド観光客は増えており、「平均すると3割、ピーク時は5割を超えることもあります」と、加森観光 ルスツ事業部 管理部 部長 渡邊智明氏は話す。これまで、インバウンド決済として、銀聯カード決済や多通貨決済サービスを導入していたが、2017年7月から、一部施設の「宿泊」「売店」「アトラクションチケット」「入館料」などで、「WeChat Pay」と「Alipay」決済を順次導入した。決済処理は、専用端末に加え、冬場は夏にゴルフ場で使用していたiPadも活用しており、通信タイプのため、持ち運んでの利用が可能だ。
現状、ルスツリゾートに訪れる中国人観光客は約2割。ほかに、東南アジア、中国、韓国からが多く、雪質が良い時期にはオーストラリアからも旅行者が訪れている。中国人観光客は、夏場はゴルフをする人は少ないというが、冬に訪れるスキー客が多いため、早めに中国で普及しているモバイル決済を導入して準備を整えることとなった。採用に向けては、同社の海外営業部が中国でWeChat PayやAlipayが日常的に利用されている状況を目にしたことも大きい。導入時には、スタッフで勉強会を実施。決済のスピードも早く、便利な手段であると実感できたそうだ。
なお、これまでの中国人観光客の決済時の傾向として、銀聯カードに加え、現金利用者も多くなっている。その理由として、ルスツリゾートでは外貨両替機を設置していることも大きいと同社ではみている。
マーケティングへの活用も想定
利用はさらに伸びると期待
モバイル決済を導入したもう1つの理由がマーケティングへの活用だ。渡邊氏は、「例えば、中国では、WeChatが国内のLINEのような形で使われていて、情報が拡散すると伺っています。ルスツリゾートでもある程度の利用が出てくれば、それを見た方が興味を示していただけると期待しています」と語る。
2018年1月までの状況として、「会社で想定していた以上にAlipayやWeChat Payが利用されており、現状、銀聯と同程度、モバイル決済が使われています。少額での利用もありますが、まとまった金額で使われるお客様もいらっしゃいます。お客様からは、“ここでもモバイル決済が利用できるので便利ですね”と喜ばれています」と成果を口にする。ただ、渡邊氏自身は、まだまだモバイル決済の利用は伸ばしていけるとみている。
加森観光の他施設でもモバイル決済導入
日本国内のモバイル決済の動向に注目
加森観光では、ルスツリゾートに加え、「サッポロテイネ」「登別マリンパークニクス」などでもAlipayやWeChat Payを導入している。渡邊氏は、「マリンパークは導入してすぐ、入園券の利用が増えたと聞いています」と話す。
なお、ルスツリゾートの店舗では、クレジットカード(多通貨決済サービスを含む)、KitacaやSuicaなどの交通系電子マネー、楽天Edy、nanaco、WAONといった各種電子マネーを導入している。現状、キャッシュレス決済では、クレジットカードの利用が圧倒的に多く、電子マネーの利用はわずかにとどまる。ただ、少額やファーストフード系の利用において、電子マネーの取り扱いが伸びているそうだ。
今後の展開として、「現在は中国のWeChat PayやAlipayを導入していますが、将来的には日本国内のモバイル決済サービスの導入を検討していきたいです。また、ビットコイン決済にも興味があります」と渡邊氏は構想を口にする。ビットコインに関しては、日本人は現金が安全という認識があるため、現時点での採用は見送ったが、将来的には予約の段階でビットコイン決済の需要が出てくる可能性があるとした。