2019年3月1日8:00
インターネットの普及率は95%、スマートフォンは10人中8人が所有しているといわれる北欧は、キャッシュレス化が進んでいる。北欧にはスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの5カ国とグリーンランドなど3地域が含まれる。ソ連邦の崩壊に伴い、旧ソ連邦から独立したバルト3カ国の中でもエストニアはフィンランドに近く、北欧の4カ国に次いで、キャッシュレス化が進んでいる。「キャッシュレス2020」では、北欧各国のキャッシュレス化の状況について紹介している。
北欧のキャッシュレス化の背景は?
スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの北欧4カ国の国土面積は、九州とほぼ同じであるデンマークを除いて日本と同等もしくは上回っている。人口は、スウェーデンが1,000万人を超えているが、デンマーク、ノルウェー、フィンランドは500万人を超える規模で、人口規模は日本の東京や大阪に近い。政治体制は、共和制のフィンランドを除き、イギリスと同様の立憲君主制の国である。
2017年の名目GDPは、スウェーデンが5,356億ドル(約59兆円)で世界23位、ノルウェーが3,988億ドル(約44兆円)で世界29位、デンマークが3,255億ドル(約35兆円)で世界第36位、フィンランドが2,527億ドル(約28兆円)で世界第44位にランクされている。1人当たりのGDPは、ノルウェーが75,389ドル(約810万円)でルクセンブルグ、スイス、澳門に次いで世界第4位、デンマークが56,631ドル(約573万円)で世界第10位、スウェーデンが52,925ドル(約562万円)で世界第12位、フィンランドが45,927ドル(約478万円)で世界第17位といずれも高い。
スウェーデンとデンマークは、EU(ヨーロッパ連合)に加盟しているものの、統一通貨ユーロは導入しておらず、スウェーデンは独自通貨で王冠を意味するスウェーデン・クローナ(SEK)を、デンマークは独自通貨のデンマーク・クローネ(DKK)を採用している。ノルウェーは、EU(ヨーロッパ連合)に加盟しておらず、統一通貨ユーロも導入しておらず、独自通貨のノルウェー・クローネ(NOK)を採用している。フィンランドは、EUに加盟し、統一通貨ユーロを1999年のスタート時から導入している。
北欧のスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、バルト3カ国のエストニアのキャッシュレス化には、デビットカード決済の普及とモバイル財布によるモバイルペイメントの拡大、これらを支えるデジタル認証制度の普及という背景がある。
デビットカードとモバイル財布、デジタル認証制度は?
(図表)は、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドのキャッシュレスを牽引する北欧のデビットカードとモバイル財布、デジタル認証制度を示したものである。
(図表)キャッシュレスを牽引する北欧のデビットカードとモバイル財布、デジタル認証制度
北欧の国 |
スウェーデン |
デンマーク |
ノルウェー |
フィンランド |
デビットカード |
Visa、Mastercard |
Dankort |
Bank Axept |
Visa、Mastercard |
モバイル財布 |
SWISH他 |
Mobile Pay他 |
VIPPS他 |
Pivo、Siirto他 |
デジタル認証 |
Bank ID |
Nem ID |
Bank ID |
TUPAS |
デビットカードは、デンマークがDankort、ノルウェーがBank Axeptというナショナルベースのデビットカードが普及している。スウェーデンとフィンランドもかつてはナショナルベースのデビットカードが普及していたが、今日ではVisaやMastercard、VISAエレクトロンやMaestroといった国際デビットカードに移行している。
モバイル財布は、スウェーデンがSWISHなど、デンマークがMobile Payなど、ノルウェーがVIPPSなど、フィンランドがPivoやSiirtoなどのモバイル財布が急速に普及し、トランザクションを拡大させている。
デジタル決済のインフラともいえるデジタル認証(eID)では、スウェーデンがBank ID、デンマークがNem ID、ノルウェーがBank ID、フィンランドがTUPASを、いずれも2000年代初めから導入している。