2020年6月25日10:46
PayPal(ペイパル)は、2020年6月18日にオンラインでのプレス説明会を開催し、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大によるリモートでの作業とデジタルトランザクションが新しい標準となっている今日の状況におけるリスクとセキュリティの重要性の高まりについて紹介した。PayPalでは、ビッグデータ解析、AI(人工知能)の活用など、さまざまな技術を駆使して、トランザクションが増加するデジタルペイメントの取引を支えているそうだ。
eコマースの利用拡大とともにサイバーアタックも活発化
新型コロナウィルス感染拡大の状況の中、デジタライゼーションがより重要になる。企業にとっては、テクノロジーを駆使してプロダクトを如何にニューノーマル(New Normal)に適用させていくかが課題となる。デジタル化の進展とともに、サイバーアタックも活発化しており、その対策も求められる。
PayPalは、20年に渡り、送金や決済ビジネスを展開しており、現在は世界200以上の国と地域、3億人以上のユーザーが利用している。PayPal テクノロジー・エンジニアリング責任者、Guru Bhat(グル・バート)氏は、PayPalのコマースサービスは「現在の状況や時代に適している」とした。新型コロナウィルスにより、生活様式が変化しているが、将来も同様に変化していくという。
グル氏は、現在の大きな変化として、①さまざまな分野でフィジカルからデジタルにシフト、②PayPalのドメインであるeコマースの拡大、③デジタルペイメントが必要不可欠なサービスに、という3つを挙げた。PayPalでは、4月、5月の売上がアップしたというが、それと同時に売り手と買い手を守る責任があると感じているそうだ。eコマースやデジタルペイメントの利用者が増えるとともに、不正を働く者の技術も高まっており、それに対抗していく必要がある。
ビッグデータの解析、AIを活用した手法でトランザクションを保護
PayPalでは、セキュリティに関する技術や人材への投資を行っており、それによりビジネスのボリュームを維持できているとした。現在、1日3,300万回のトランザクションがあり、1秒平均2万2,000ドルのトランザクションが行われているが、今後はこの数もさらに伸びると見込んでいる。また、支払いに紐づく情報を保有しているが、ユーザーの情報や決済情報が安全に保管されているとした。
実際、フィッシングサイトも世界的に大きく増えている。また、メールやモバイルのテキストメッセージをクリックするとフィッシングページに遷移し、データを盗み取られる行為も増加した。さらに、人工的なIDが作られ、売り手や買い手を装う被害も増えている。犯罪者もAIによる機械学習により不正の情報を蓄積しており、より不正手口はさらに巧妙化している。PayPalでは、そういった不正に対抗するため、AIに関する投資を継続して行っている。セキュリティのオペレーション機能として、米国とシンガポールにセンター機能を設けて、対策を実施。また、ビッグデータの解析、AIを活用した手法などによってトランザクションがどのように行われているかを分析している。
実際、PayPalでは、過去5年で50万のWebサイトをシャットダウンしたそうだ。また、自社による対策に加え、売り手や買い手を教育していくことも重要だとした。
600~700億ドルのセキュリティ投資
PayPal APAC チーフ・インフォセック・オフィサー Phoram Mehta(フォーラム・メタ)氏は、PayPalでは、600~700億ドルのセキュリティへの投資を行うなど、同分野への投資を継続して強化していることを強調した。
これまでeコマースはパスワードによる認証に依存してきたが、特にモバイル取引ではバイオメトリクスに移行しつつある。アジアではモバイルを使ったデジタル決済が急速に拡大しているが、新しい技術を取り入れる際にどのようにポリシーを制定し、プロテクションをかけるかが懸案事項となるため、早急に研究していきたいとした。
なお、PayPalでは、買い手については、クレジットカード情報をPayPalが保持することで、マーチャントに支払い時にカード情報がわたらないメリットがある。また、買い手に商品が届かないといった問題やトラブル発生時のため、「買い手保護制度」を設けており、安心・安全なデジタル取引を支援している。