2014年1月27日8:00
コールセンターが顧客経験価値(カスタマー・エクスペリエンス)を創造する
総 論:コールセンターに求められる全社的なカスタマー・エクスペリエンス向上のリーダーとしての役割
多くの企業においてお客さま対応の最前線に立つコールセンターがカスタマー・エクスペリエンス(CX)向上に果たす役割は大きい。応対品質の向上によって一義的なCX 向上に寄与するだけでなく、VOC の活用などによる全社的なCX 向上をリードする役割を担うことも期待されよう。
商品やサービスのコモディティ化の中で注目が集まる“カスタマー・エクスペリエンス”の重要性
近年、ブランド・ロイヤルティの醸成やLTVの向上における“カスタマー・エクスペリエンス”の重要性に注目が集まっている。
カスタマー・エクスペリエンス(CX:Customer Experience)は、日本語では「顧客経験価値」と訳される概念であり、この概念を提唱した米コロンビア大学ビジネススクール教授、バーンド・H・シュミット氏によれば、その根幹は「顧客は商品を購入するだけではなく、商品を購入する経験を得ている。つまり、安く買えるという経験、新しい商品を知るという経験など、顧客が体験するさまざまな経験を価値とする」というものである。
昨今では情報化の進展などによって商品やサービスのコモディティ化が進み、本質的な意味での差別性を長期間にわたって維持することが困難となっている。こういった中で、商品・サービスとともに、それらにかかわるどのような経験を提供できるかに注目が集まるのは当然のことであり、さらに近年では、「モノ(商品)は顧客に価値を提供するサービスの一部である」と考える“サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic)”という概念を取り入れる企業も増えているほどである。
なお、カスタマー・エクスペリエンスの向上は、顧客サービスの向上と同じベクトルの上にあるものと考えられるが、前者が顧客側の受け取り方に視点が置かれているのに対して、後者は提供主体側の取り組みがフォーカスされているという点が異なると考えられる。
カスタマー・エクスペリエンス向上においてコールセンターが果たす役割
カスタマー・エクスペリエンスの向上を図る上で、コールセンターの役割は大きい。特にメーカーや通信販売事業者、無店舗型のサービス提供事業者などにおいては、コールセンターは顧客との数少ない直接のコンタクト・チャネルであるため、コールセンターにおけるコミュニケーションの品質・内容が顧客のブランド・イメージ形成に大きな影響を与えることは想像に難くない。
一方、コールセンターでのお客さま対応は、店舗などの対面チャネルと比較して、そもそも“お客さまの顔が見えない”というハンディを負っている。また、WebサイトのFAQの充実化などが図られた昨今、多くの生活者にとって、コールセンターはいわば“最後の砦”となっており、コールセンターにおけるお客さま対応は、お客さまの不安や不満に起因する問い合わせやクレームなど、マイナスからのスタートとなるケースが多いことから、良好なコミュニケーションを成立させるための難度は高い。
そして、コールセンターのお客さま対応の問題点としてしばしば指摘される“たらい回し”やそれに伴うお客さまの手間の増大などが、カスタマー・エクスペリエンスを著しく低下させることは疑うべくもない。
このような条件の下で、コールセンターはいかにカスタマー・エクスペリエンス向上に寄与できるのか。今回の特集では、コールセンターを通じたカスタマー・エクスペリエンス向上に積極的に取り組む企業のケーススタディを中心に、その方向性と課題を探った。