2021年6月29日8:00
世田谷区商店街振興組合連合会では2021年2月より、新型コロナによる世田谷区の緊急経済対策の一端として、デジタル商品券「せたがやPay」の運用を始めている。大きな経済的打撃を受けている中小個店を支援すると同時に、決済のデジタル化の推進を図る。これまで紙で発行してきた区内共通商品券のノウハウを活かしつつ、日本各地でデジタル地域通貨運用の実績を持つフィノバレーと組んで、将来は地域通貨としての活用を目指す。
記事のポイント!
①世田谷区のデジタル商品券・地域通貨「せたがやPay」
②紙とデジタルを並行して提供
③商店街を応援しようという機運を醸成
④区の補助期間以降も商店街連合会加盟店は無料を想定
⑤区の一部の施設でも利用がスタート
⑥ギフト券の発行を準備、コミュニケーション機能も活用
⑦区内商品券を取り扱う2,800の加盟店全店への導入を推進
紙とデジタル、2つの商品券を共存
商店街活性化のベストプラクティスを探る
世田谷区商店街振興組合連合会(以下、商店街連合会)では2021年2月20日より、デジタル商品券「せたがやPay」の運用を開始した。コロナ禍における世田谷区の緊急経済対策の一環として、区から補助金の支給を受けて行っているもので、特に大きな経済的打撃を被っている区内の中小個店の活性化を図ることが目的だ。同時に区には、決済のデジタル化を進めたいとの意向があり、スマホアプリを用いたデジタル商品券が採用されることとなった。
商店街連合会では、プレミアム付きの紙の区内共通商品券を発行してきており、「せたがやPay」はいわばその電子版だ。しかしせっかく始めるにはそれだけにとどまらず、「将来的に電子地域通貨として、長く地元商店街の活性化に貢献するシステムを構築したい」(世田谷区商店街連合会 専務理事 坂本雄治氏)との思いがあった。スタートにあたって商店街連合会では共に取り組む事業者を公募。応募のあった6社の中から、岐阜県飛騨高山地域の「さるぼぼコイン」や千葉県木更津市の「アクアコイン」など各地域のデジタル通貨事業で実績のあるフィノバレーとの連携を決めた。
「せたがやPay」へのチャージは全国のセブン銀行ATMで、1,000円単位、上限10万円まで行える。コインと呼ばれるチャージ残高の使用有効期限は最終履歴から1年間。キャンペーンなどで付与されるポイントの有効期限は基本的には6カ月であるが、別途期限が設けられる場合もある。
サービススタートから約4カ月。アプリダウンロード数は約1万6,000、アクティブユーザー数は8,000~9,000。加盟店数は約900。累計コイン総額は2億円強。「まだまだ発展途上で、成果までは至っていません。お客様や加盟店の声を一生懸命に聞きながら、フィノバレーといっしょにひとつひとつ改善を加えている段階です」と、坂本氏はあくまで謙虚だ。
紙の区内共通商品券の発行も続けていく。利用有効期限があり、10%、30%などのプレミアムを付けて発行される区内共通商品券は、発売のたびに抽選競争率が3倍前後に上り、6億~10億円の販売総額が即日売り切れる。「サービスが定着していてお客様が使い慣れていることと、手元で現物を確認できる安心感が人気の理由なのでは」と坂本氏は見る。商店街連合会ではデジタルへの切り替えを急ぐ考えはなく、しばらく両方のサービスを並行して提供していく方針だ。
7月から「サンキューマスクキャンペーン」を展開
地域に根付いた通貨としての活用方法を模索
「せたがやPay」がスタートした2021年2月20日からはチャージ額の30%をポイントバックするキャンペーンを行った。また同日から3月19日まで、商店街連合会では「せたがやPay」で支払った飲食代の20~30%をポイントバックする「飲食店応援キャンペーン」を実施。6月1日~8月19日までは支払額の5%をその場でポイント還元する「つかって5%キャンペーン」を実施。7月1日からは、飲食店で〝黙食〟と歓談時のマスク着用に協力すると、「せたがやPay」の支払い額の10%をポイントバックする「サンキューマスクキャンペーン」を展開する予定だ。
こういったお得感のあるキャンペーンが、新規ユーザーの獲得や利用促進に効果を上げているのは事実だ。しかしお得感だけで勝負を仕掛けても、資金力豊富な大手決済事業者には太刀打ちできない。坂本氏は「せたがやPay」の立ち位置について次のように語る。
「地域に根付いた商店街は、街路灯の維持管理、清掃、AEDの設置、通報の窓口など、地域コミュニティを見守るという大きな役割を担っています。お客様にそのことに気づいてもらい、商店街を応援しようという機運を醸成していくことが重要。『せたがやPay』はそのためのツールであり、それが“全国どこでも使えてお得な”大手決済サービスとの大きな違いです」
区の補助期間後も決済手数料は商店街連合会加盟店は無料を想定
地域のイベントや公金の支払いでの利用も視野に
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