2021年8月3日8:00
キャッシュレス決済の普及を加速させるため、クレジットカードでの決済があった際に、加盟店契約会社(アクワイアラー)がクレジットカード発行会社(イシュアー)に支払う手数料である「インターチェンジフィー」の標準料率の開示を求める圧力が強まっている。公正取引委員会が、19年の報告書で標準料率の開示を促す見解を示したのに続き、経済産業省も今夏、有識者や事業者を集めた検討会を設置し、標準料率の開示の是非を検証する方針を固めた。キャッシュレス推進室長の降井寮治氏に検討会の状況について話を聞いた。(ライター:小島清利)
インターチェンジフィーの公開を一段階として視野に
インターチェンジフィーは、クレジットカードでの決済があった際に、アクワイアラーがイシュアーに支払う手数料のことを指す。イシュアーとアクワイアラーが同じ会社である場合(オンアス取引)ではインターチェンジフィーは発生しないが、イシュアーとアクアイアラが異なる会社である場合(オフアス取引)では発生する。
海外では、インターチェンジフィーの上昇に歯止めをかける目的で上限規制を導入したケースもある。米国は小売チェーンとの法廷係争なども考慮し、国際ブランドが自主的にインターチェンジフィーの標準料率を公表している。これに対し、日本では、インターチェンジフィーの標準料率をカード会員や加盟店は知ることができない。
経産省の「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」は今年初め、中間整理をまとめた。それによると、「日本ではクレジットカードを中心としたキャッシュレス決済が拡大しており、今後、ますますその動きが広がっていくことが想定される中、市場の透明性を高め、インターチェンジフィーによるバランス調整を適切に作用させることが必要であると考えられる」と指摘している。
そのうえで、近年の環境変化や日本市場ならではの特性も踏まえつつ、「インターチェンジフィーの公開を一段階として視野に入れ、合わせて公開が市場に対してより有効に機能するような環境を整備するための論点について、官民一体となって整理していくことが求められる」と提言している。
これに対し、イシュアー側としては「インターチェンジフィー公開そのものについては、イシュアー収益への影響はない」とする一方で、「将来的にインターチェンジフィー引き下げへの影響が及んだ場合は、収益性の低下、セキュリティ水準の低下、サービス低下による会員の離反などにつながることが考えられる」と懸念を示す向きもあった。
日本固有の事業には留意が必要に
同検討会の議論では「各国固有の事情が大きく影響しているため、海外事例が日本に直ちに当てはまるわけではないことには留意が必要」との指摘もあった。海外では、イシュアやアクワイアラが銀行である場合が多く、個人向けも加盟店向けも、決済サービス単独での収益を考慮せず、銀行取引全体として扱われるほか、決済のうち、デビットの占める割合が大きい傾向があるからだ。
このコンテンツは会員限定(有料)となっております。
「Paymentnavi Pro2021」の詳細はこちらのページからご覧下さい。
すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。