福岡市地下鉄でVisaのタッチ決済実証実験開始、三井住友カードは2025年に全国で使える状況を目指す

2022年6月1日9:45

福岡市地下鉄の7駅において、日本で初めて交通系IC/タッチ決済一体型改札機による「Visaのタッチ決済実証実験」がスタートした。三井住友カード、ビザ・ワールドワイド・ジャパン、日本信号、QUADRACは、福岡市地下鉄において、三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用し、Visaのタッチ決済による一体型改札機通過に関する実証実験を5月31日~2023年2月末まで実施する予定だ。福岡市交通局では、福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)が実施する、AIやIoT等の先端技術を活用した社会課題の解決等に繋がる実証実験プロジェクト「福岡市実証実験フルサポート事業」の一環として実証実験のフィールドを提供している。なお、三井住友カードでは、これまでの交通乗車へのタッチ決済導入で手応えを感じており、「大阪・関西万博」が開催される2025年までには、全国の交通事業者で一般的に使える状況を目指している。

入場時のタッチ決済

地域の人々に加え、観光・ビジネス利用想定
駅務機器や券売機のメンテナンスコスト削減効果も

福岡市地下鉄の取り組みでは、福岡空港、東比恵、博多、祇園、中洲川端、天神、呉服町の7駅に交通系IC/Visaのタッチ決済一体型の自動改札機を設置。九州の玄関口である福岡空港や博多駅から、ビジネス・観光の中心である天神や中洲川端駅まで利用できるのが特徴だ。

今回の実証実験では、Visaのタッチ決済機能付きのクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード(モバイル含む)を使うことにより、切符を買ったり、ICカード(nimoca,はやかけん,SUGOCAなど)へのチャージをすることなく交通乗車が可能だ。福岡市交通局 総務部マーケティング推進室長 稲田剛氏は「福岡市の方だけではなく、ビジネスや観光のお客様、世界からのお客様においても利便性が高い」とした。福岡市交通局でもクレジットカード1枚で買い物から乗車まで可能なサービスとして期待している。また、切符を購入することなく乗車できるため、将来的に駅務機器、券売機のメンテナンスなどの削減につながる可能性もあるとした。

右から質疑応答に応える福岡市交通局 総務部マーケティング推進室長 稲田剛氏、三井住友カード Transit事業推進部長 石塚雅敏氏、日本信号 九州支店 部長 林章弘氏、QUADRAC 営業部長 高野泰典氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパン デジタルソリューションディレクター 今田和成氏。ビザ・ワールドワイドでも人員を増やし、タッチ決済の対応を強化している

Visaのタッチ決済は、日本を含む世界約200の国と地域で発行されている。国内のVisaのタッチ決済対応カードの発行枚数は、7,100万枚、利用可能な端末数も100万台を超えている(2022年3月末現在)。 公共交通機関では、世界500の公共交通機関で導入されているため、インバウンド需要回復時には、海外からの観光客が便利に利用可能だ。福岡エリアでは、7月から西日本鉄道での実証実験も予定されている。

交通系IC/タッチ決済両対応の一体型自動改札機設置
入場と出場でタッチ部のデザインや高さを変更

今回の実証実験では、三井住友カードの公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用している。「stera transit」は、「stera」の決済プラットフォームと国際ブランドの非接触決済「タッチ決済」を活用した公共交通機関向けソリューションだ。

また、今回の実証実験では、三井住友カード、日本信号、QUADRACが協力し、交通系IC/タッチ決済の両方が利用できる一体型自動改札機を設置したのが特徴だ。日本信号では、南海電鉄の実証実験において、ポール型読み取り機を他社の自動改札機と連動した仕組みを開発した実績はあったが、自動改札機本体でタッチ決済機能に対応したのは国内初となった。自動改札機では、入場と出場でタッチ部のデザインを変更している。入場時はタッチ部分が横向きとなっており、出場時は正面からタッチできるようにした。タッチの画面の高さも入場が78.8cm、出場が74.4cmと変わっており、「利用者のタッチしやすさを検証する」(日本信号 九州支店 部長 林章弘氏)ことも目的となる。

汎用モデルとして日本全国での展開を視野に
前回の実験時よりも利便性は向上?

タッチ決済は、「はやかけん」などの交通系ICに比べると処理スピードの時間が若干かかる。国際ブランドのルールでは、0.5秒以内での処理が求められているが、0.35秒程で処理している。今回、リーダーのタッチ部を工夫し、「利用者のかざす動作がスムーズになることで早いと実感してもらいたい」とQUADRAC 営業部長 高野泰典氏は説明する。

三井住友カード Transit事業推進部長 石塚雅敏氏は「人の通過する速度や使い勝手が把握できれば、このモデルを汎用的に日本全国展開できる可能性があります。首都圏、関西など、大手企業でもご利用いただけるモデルを実証します」と意気込む。また、オーソリについては国際ブランドのルールに則っているそうだ。

なお、QUADRACは、交通事業者向け決済および認証に関するSaaS型プラットフォーム「Q-move」を提供している。乗車履歴は、交通事業者向け決済及び認証のプラットフォームを提供するQUADRACのQ-moveサイトにアクセスし、「マイページ」の会員登録手続後に閲覧可能だ。

Visaのタッチ決済が利用できることを告知するポスター

福岡市地下鉄では、2021年4月16日~8月15日まで、Visaのタッチ決済を活用した「天神・博多間1日フリーきっぷ」の販売および地下鉄乗車の実証実験が行われた実績がある。当時はVisaのタッチ決済と、デジタル企画切符を紐づける形となり、購入サイトで切符を購入する手間があった。今回は事前にオンラインなどでチケットを購入する必要なく、手持ちのクレジットカード等をそのまま利用できるため、より利便性が高まると期待している。また、前回は改札窓口の専用リーダーにクレジットカードをタッチする必要があったが、今回は自動改札機にかざすことができるため、利用者にとってわかりやすいとした。

福岡市地下鉄では他ブランド対応も準備?
交通事業者の継続利用などで成果

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