2023年2月27日10:00
ネットプロテクションズは、2023年2月21日に「経営層と現場担当者のDXに対する意識調査」および「決済業務における現場担当者の働き方実態調査」に関するオンライン説明会を開催した。当日は、同社広報の村山智美氏が調査結果について発表した。同社では、後払いによる集金DX・請求DXを提供していきたいとした。また、地域の金融機関等と連携したDXの推進にも力を入れるそうだ。
支払いや督促業務の課題が顕著に
営業や現場作業員の多くがトラブル解消に直面?
ネットプロテクションズは、2000年に創業し、2022年から後払いサービスを展開している。2022年3月期の年間取扱高は4,700億円。毎年、右肩上がりで事業成長を続けている。後払いサービス「NP後払い」では年間で日本の7人に一人、BtoBの「NP掛け払い」では8社に1社が使用しているという。
今回の調査では、DXの本来の意味である「企業の成長、競争力強化のためのデジタル活用」において、何がボトルネックとなっているのかを調査した。また、DXの手段は多岐に渡るが、決済領域のDXについて専門プロバイダーとして説明した。最後に、同社が提供するDXソリューションおよび、他社との協業を通じて目指す今後の展開について紹介した。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の中小企業のDX推進に関する調査(2022年5月)によると、DXについて「理解していない」「あまり理解していない」と回答した人は6割を超えた。村山氏は「日本国内のおいてはDXに関する理解が決して進んでいる状態ではない」と話す。
一方、従業員規模が20人以下の企業では、「理解している」との回答が4.6%と1割にも満たず、「理解していない」が38.7%と4割近くを占めた。DXの理解度については、従業員規模が小さい企業ほど低くなった。
JEITA / IDC Japanが実施した2017年の調査によると、企業がIT投資にかける予算が増えている理由や、その使途について日本と米国を比較したが、日本国内では予算額の増額の使途の1位として、「ITによる業務効率化」、「コスト削減」が挙がった。他の使途の回答率は相対的に低い状態だ。一方で、米国の回答を見ると、予算額、増額使途の1位として、「ITによる製品」、「サービス開発の強化」、また、いわゆる攻めのIT投資に位置付けられるような人の回答が多いことがわかった。日本は米国と比べても、IT投資に対する捉え方として、守りの意味合いとして捉えられているということが非常に多い。
DXに取り組むにあたっての課題に関して、上記の中小企業のDX推進に関する調査では、「DXに関わる人材が足りないと」が31.1%、「ITに関わる人材が足りない」が24.9%など、DXやITに関する人材の不足を課題として挙げている企業が多くある。次に「具体的な効果や成果が見えない」が24.1%、「予算の確保が難しい」との回答が22.9%などとなった。
ネットプロテクションズでは今回、役職や担当業務が異なる各社員を対象にDXに対する意識調査を実施した。具体的には2種類の調査を実施。1つ目は、例えば、リフォームや修理、家事代行など、客先への訪問集金、サービス提供を行っている現場作業員を対象とした調査、2つ目は、督促、入金や与信確認など、請求業務にも携わっている経営者や営業職を対象とした調査となる。
調査の主な目的は、役職や担当業務が異なる各社員のDXに対する意識の違いを問うため、そして、決済の専門プロバイダーである同社の立場として、請求や集金といったバックオフィスの業務の実態や課題を明らかにして、DX化によって改善余地があるのかどうか明らかにするためだという。
まず役職や担当業務が異なる各社員のDXに対する意識についてだ。「あなたの会社でDXの取り組みは進んでいると思われますか」という質問を、経営者と現場の営業担当それぞれに対して行った。その結果、「進んでいない」と回答した人が、8割以上を占めた。自社においてDXが進んでいない状況認識については、役職の如何に関わらず、同様であるということが伺える。
次に「あなたの会社でDX化が必要とされている部門・部署はありますか」という質問について、経営層、現場の営業担当それぞれに質問したところ、役職によって回答結果が分かれる結果となった。
具体的な回答結果として、経営者は営業販売との回答が18.6%、企画開発が18.1%、経理財務17.5%と、全体的に低調・分散している状況に対して、営業職は営業販売との回答が50.7%、企画開発、次いでマーケティング・広報宣伝が21.9%と、比較的自身が所属している部署に対して、DX化の必要性を感じている状況だ。
現場の社員は、自分自身が所属している部署に効率性を感じており、そこに対してDX化を求めている。経営者側は、会社全体を俯瞰しており、フロントやバックオフィスにおいてもDXが必要な部署として捉えている傾向にある。経営・社員それぞれがDXの必要性を感じているが、その意識の差は随所にあるとした。
また、そもそもDX化が必要とされる部門部署は特にないと回答した経営者が53.1%あった。それに対して、DX化が必要とされる部署部門は特にないと回答した営業職はわずか25.8%となり、社内の役職間におけるDXに対する意識の違いを示す1つの結果となった。
DXによって期待される効果に関して、経営層および営業職と現場作業員の3社に調査をした結果、DX化によって期待される効果として、経営者は「業務の効率化」が68%、次いで「コスト削減」が53.9%、営業職も「業務の効率化」が73.4%、「コスト削減」が51.7 %、現場の作業員も同様の回答が69.1%となり、その効果に対する期待はおおよそ一致していることがわかった。
役職や立場を問わず、コスト削減に意識がある一方で、自社製品、サービスの品質向上や、新規事業、新製品の創出といった価値の創造に繋がるような取り組みと回答している人が相対的に少ないという実態が明らかになった。
次に、DXによって期待される効果として、「社内の業務がもっと効率化した時に、空いた時間でより価値創造に繋がるような業務に挑戦してみたいと思いますか」という質問を経営層、現場の営業担当それぞれ聞いた。その結果、「社内業務の効率化による期待・効果をポジティブに捉えている」という経営層は5割を下回った。その一方、6割弱の現場社員は「社内業務の効率化による期待・効果をポジティブに捉えている」ことがわかり、経営層と現場の営業職ではDXへの効果認識に少し差分があることが明らかになった。
さらに、企業間および企業と一般消費者の間の商取引において、欠かせないプロセスの1つである決済や請求業務にフォーカスを当て、現場の担当者である営業担当、現場作業員の2者に対して、主に働き方の実態に対して調査をした内容を紹介した。
営業担当者に対し、日常の業務推進の中で行う決済について聞いたところ、中でも支払い・督促や回収業務、入金管理業務の経験者が多いことがわかった。また、営業担当の2人に1人は、請求や決済に関する業務に携わっていることがわかった。自社の製品やサービスの販売を通じて、顧客への価値提供を追及することが主なミッションである営業担当が入金管理や督促といった決済に関わるノンコア業務に時間を割かれているという実態が明らかとなった。
続いて、営業担当や家事代行、修理などの訪問を要する役務サービスの作業員に対しての調査結果だ。「あなたの1日あたりの平均労働時間はどれくらいですか。残業時間も含めてお答えください」という質問と、「あなたが行う決済業務にかけている時間は1日何分くらいありますか」という2つの質問をしたところ、それぞれの役職が異なる2者の結果に対して、営業担当、現場社員、現場作業員ともに1日の平均労働時間が約9時間、そのうち決済や請求に関わる業務に割いている時間は、営業担当が1日40分程、現場作業員が1日100分程あった。 これを年間換算すると、営業担当は年間18営業日、現場作業員は年間44営業日もコア業務に時間を割けていない実態が明らかとなった。
続けて営業担当、家事代行や修理、事業者などの訪問を要する役務サービス向けの現場作業員に対する調査結果だ。「お金にまつわるトラブル解消のために、業務を自ら行ったことがありますか」との質問では、営業担当は50%を超える人、現場作業員は80%を超える回答者が「対応実績がある」と回答した。
請求書や現金での支払いに対して、自社で対応している企業における営業担当や、現場作業員の多くが、お金のトラブルの解消のために、時間を多く投下している実態が明らかになった。
また、トラブル対応において、「営業担当および現場作業員は具体的にどのような対応を行っているか」を実際に質問したところ、現場担当者ならではの不満の声が挙がった。営業担当が決済にまつわるトラブルとして経験したことがあるものの多くは、顧客への支払い遅延、踏み倒しが多くの回答として集まった。その一方、現場作業員が自ら顧客の自宅に出向いて現場で集金をする人もおり、横領などの現金の不正など、現金を扱う企業ならではの困り事も発生していることが明らかになった。
現場作業員向けの調査結果として、「業務上で現金の取り扱いをやめるべきだと思いますか」と質問したところ、「とても思う」が44.6%、「やや思う」が34.9%と、約8割の人が現金の取り扱いをやめるべきだと回答した。また、「なぜ業務上で現金の取り扱いをやめるべきだと思うのか」という質問も重ねてしたところ、「実際にお客様の自宅に訪問することによる負荷が大きい」という回答につ続き、「現金の過不足のチェックの負荷」「現金の盗難や紛失のリスクを抑えたいから」といった回答など、決済や請求業務の中でも現金を取り扱っていることならではの業務負荷が発生している。また、それが故にやめたいという回答が集まっていることがわかったそうだ。
村山氏は「サービス及び企業では、まだまだ決済手段の1つとして、現金が採用されているというシーンが少なからずある中で、作業員は課題を感じており、やめたいという声も挙がっているという実態が明らかになったことから、社員の働き方によからぬ影響をもたらしている1要因となってしまっているかもしれないということがえ伺えます」と話す。
調査のまとめとして、各役職によって、社内のDXに対する意識差分があることが明らかになった。特に、請求業務に携わる営業職と経営者とではそのギャップは大きいとした。現金集金や請求業務などのいわゆる“ノンコア業務”において、高い割合でトラブルが発生。少なくとも年間18営業日分もノンコア業務に時間を投下していることが判明している。『社内のDX意識格差』が生じる一因は、現場の実態に対する把握・理解が遅れていることにあるのではないかとした。
地域金融機関と連携した戦略は?
カード会社のJCBやオリコとも提携
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