「楽天カード」が成長を続ける理由とは? トリプル3の早期達成を目指す

2023年6月13日9:00

楽天カードが展開する「楽天カード」の発行枚数は2023年3月時点で2,863万枚(前年比+10.2%)、2022年のショッピング取扱高は18.2兆円(前年比+25.8%)となった。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査をもとに算出したクレジット業界での取扱高のシェアは23.4%だ。国内のクレジットカードの中でも高い成長率を誇る同社の取り組みについて、楽天カード 常務執行役員 マーケティング本部長 小山幸宏氏に話を聞いた。

楽天カード 常務執行役員 マーケティング本部長 小山幸宏氏

コロナ禍でも高い成長を維持
成長の鈍化は懸念していない?

楽天カードは2005年7月にカード発行を開始したが、それ以来順調に成長しており、2017年に自社発行ベースのショッピング取扱高はクレジットカード業界トップとなった。また、コロナ禍で業界全体の取扱高が落ち込む中でも成長を維持している。さらに、第三者の各種顧客満足度調査やNPS(Net Promoter Score)でも高い評価を得ている。

年会費永年無料の「楽天カード」。Mastercard・Visa・JCBブランドはタッチ決済にも対応している

 

クレジットカード会員の稼働率は非公表だが、コンサルティング会社の調査では7割ともいわれる。小山氏は「稼働率は以前と変わることなく、全体としては高い成長率を維持しています」と説明する。

楽天カードが高い成長を続ける要因として、キャッシュレス市場が変わらずに拡大していることが大きい。小山氏は「クレジットカードは一般的に一人3枚ほど保持していることを考えると、まだまだシェアを拡大していく余地はあると考えており、成長の鈍化は懸念していません」と自信を見せる。

「楽天カード」の発行枚数は2023年3月時点で2,863万枚(前年比+10.2%)と順調に成長
2022年のショッピング取扱高は18.2兆円(前年比+25.8%)と右肩上がり
クレジット業界での取扱高のシェアは23.4%に

楽天経済圏の便利な体験に貢献
楽天ポイントも有効なツールに

ECやモバイル、フィンテック(FinTech)など、楽天経済圏の便利でお得な体験に貢献できることも他社にはない強みだ。例えば、楽天市場では約7割の決済が楽天カードで行われている。また、FinTechサービス間のクロスユースは前年同期比32.8%(2022年12月時点)の成長となっており、相乗効果が生まれている。さらに、他の楽天グループが提供するサービスでの支払いでも成長の余地があるそうだ。

楽天カードでは、楽天経済圏以外での利用拡大にも力を入れる。クレジットカードはグループ外での支払いが多くのウェイトを占めるため、そこでの稼働を高めるアプローチは継続的に行っている。

小山氏は「会員サイト、アプリ、コンタクトセンターなどを含めて、クレジットカードとして如何に使いやすいカードであるかということを、シンプルに意識して展開しています」と話す。支払いの行為をストレスなく、便利にお得で不安なく提供することに努めている。

楽天グループには、「楽天ポイント」という楽天経済圏をつなぐサービスがあり、楽天カードでも有効に活用している。当然、ポイント付与には一定のコストが発生するが、継続的にサービスを提供できる形で還元しているそうだ。例えば、これまで0.2%だった「楽天証券」でのポイント進呈率を0.5%に引き上げるなどのポイント還元の変更に際しては、「サービスのバランスは変わっていきますので、その時に応じて継続的にサービスを提供できるよう最適化を図っています。個別では付与がマイナスになる時はありますが、お客様が大きく不利になることがないよう注意しながら変更の判断をしています」と小山氏は強調する。

楽天カードでは、特定の年齢層に偏ることのない顧客基盤の確立を目指している。楽天カードの会員構成比は非公表だが、インターネット企業としてWebで会員を獲得してきたため、インターネット申し込みが苦手な層は若干弱いと認識しているが、そういった課題をクリアしながら会員数を伸ばしている。

2枚目の楽天カードは好評
リボやキャッシング、分割は収益に貢献

カード会員の利便性向上に向けて、すでに持つ楽天カードに加えて、もう1枚楽天カードを作成できるサービスを2021年6月から開始している。楽天カードでは、2枚目の発行枚数は、2022年6月には150万枚を超えたと発表している。前述のようにクレジットカードは一人3枚ほど保持しているため、銀行口座やブランド、利用用途によって使い分けている傾向がある。小山氏は「例えば、楽天銀行と他の口座で分けたり、ビジネスとプライベートで分けるなど、複数枚持っていただいたお客様の方が楽天カードの利用が高まります」と成果を述べる。

楽天カードは、シルバーの一般カードの利用者が中心だが、年会費2,200円(税込)の楽天ゴールドカード、年会費1万1,000円の楽天プレミアムカードを保持しているユーザーも多い。例えば、前述の楽天証券の投資信託の購入でポイントが貯まるサービスでは、券種ごとのロイヤリティプログラム(一般は0.5%、ゴールド0.75%、プレミアム1%)を提示している。また、楽天プレミアムカードはプライオリティ・パス会員カードの発行を無料で申し込むことができるなどお得なカードだ。小山氏は「短期的な視点で収益を犠牲にすることはなく、中長期にサービスを提供できるようにプログラムを設計しています」と話す。

特定の層に向けたデザインカードとしては、武尊デザイン、イーグルスデザイン、YOSHIKIデザイン、ヴィッセル神戸デザイン、イニエスタデザインなどを発行している。2023年1月に発表した武尊デザインの発行は、計画通りに推進している。

なお、楽天カードの収益では、ショッピングリボルビング払い・キャッシング残高の回復、分割払いの増加も増益に貢献している。

「楽天ペイ」の支払いでも重要な存在に
ウォレットはAppleやGoogleサービスよりも快適な体験を

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