【専門家が解説】”空の旅の新基準 JALとANAにおけるステイタスプログラムの進化”

2024年3月6日8:00

クレジットカードやポイント、マイレージなどを研究してきた筆者が日本の2大航空会社である全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)のステイタスプログラムの進化について解説する。

大澤日出男

【ANAのSFCとJALのJGC】

航空会社が提供するフリークエントフライヤープログラム(FFP)は、搭乗実績に応じて特別待遇を享受できる魅力的な制度である。エコノミークラス搭乗時でも専用チェックインカウンターの利用、ラウンジアクセス、優先搭乗などの特典を受けることが可能になる。

日本では、全日本空輸(ANA)の「スーパーフライヤーズカード(SFC)」と日本航空(JAL)の「JALグローバルクラブ(JGC)」が上級会員向けの主要なプログラムとして提供されている。これらのステイタスを獲得すれば、該当するクレジットカードを保持する限り、資格を維持できる。

これらのステイタスを保有している場合、その航空会社だけでなく、ワンワールドアライアンスやスターアライアンスなど、同じアライアンスに属する航空会社からも上級会員向けのサービスを受ける資格がある。これにより、一般の搭乗客とは一線を画した、充実したサービスを空港で享受できる。ただし、これらのステイタスを保持するには、定められた条件を満たし続ける必要がある。

ANAのSFCは「プラチナ」以上、JALのJGCは「サファイア」以上のステイタス基準を達成すれば、それぞれANAカード・JALカードの更新を続ける限り、特別待遇を永続的に受けられる。

JALのJGC会員は、上級会員ステイタス「JMBサファイア」以上を一度でも獲得すれば「JGC」会員になれた。しかし、JALは2024年1月に上級会員プログラムを改定した。

【JALは搭乗以外の活動でポイント獲得を可能にした一方、JGC獲得難易度は大幅に上昇】

JALグローバルクラブは、これまでJALマイレージバンクで50,000FOP(フライオンポイント)を積算し、サファイアを達成することで入会できた。

しかし、2024年1月から、JALグローバルクラブの入会基準が「JAL Life Status プログラム」により新たに設定された。これまでの入会条件はサファイアステイタスを達成することであったが、新プログラムではLife Statusポイントを1,500ポイント貯めることが求められる。

JAL Life Status プログラム - 毎日、そして生涯ずっと一緒に(出典:JAL)
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jmb/life-status-program/

Life Statusポイントは、従来のマイルやFOPとは別に計算される。国内線の場合は1搭乗につき5ポイント、国際線は1,000区間マイルごとに5ポイントが加算される。たとえば、国内線で300回の搭乗か、あるいは東京からニューヨークまでの往復25回(片道6,739区間マイル)に相当し、1年間で達成するのは以前よりも難易度が高くなった。

搭乗でためる(出典:JAL)
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jmb/lsp/service/

さらに、JALカードやJAL Payでの決済、JAL Mallでの買い物など、ライフスタイルサービスの利用でLife Statusポイントを獲得することもできる。例えば、JALカードでの買い物により2,000マイルを獲得すると、Life Statusポイントが5ポイント得られる。JALカード特約店での追加特典を考慮しない場合、20万円の利用で5ポイントが付与され、その基準で計算すると、6,000万円の利用で1,500ポイントを獲得できることになる。

ライフスタイルサービスでためる(出典:JAL)
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jmb/lsp/service/

これらのポイントは累積であり、JALの提供するサービスを継続的に利用することで、ステイタスを獲得する道が開かれる。これはこれまでの制度との大きな違いである。

【ANA 搭乗とライフスタイルサービスの利用を組み合わせることで、SFC獲得への道筋を複数用意】

ANAは一昨年、プログラムを改定し、「ライフソリューションサービス」という新しい制度を導入した。この制度では、ANAカードの利用額に応じて、ステイタス基準をクリアするのに必要なプレミアムポイントを減らせるようになった。

2021年に開始された「プレミアムメンバーステイタス獲得チャレンジ」という制度では、ライフソリューションサービス利用でのステイタス獲得条件が設けられた。年間プレミアムポイントにより与えられるステイタスは従来の条件に加え、年間の獲得プレミアムポイント(ANAグループ運航便利用分のみ)、ライフソリューションサービス利用数、ANAカード・ANA Pay決済額の総額の3つの要素が判定に利用され、ステイタス達成が可能になっている。

例えば、SFCのプラチナ会員資格を得るためには通常50,000プレミアムポイントが必要だが、この制度を利用することで、30,000プレミアムポイント、対象サービスの利用7つ、そしてANAカードやANA Payで600万円決済することで資格を得ることが可能になる。

ライフソリューションサービス利用が多い方のステイタス獲得条件|プレミアムメンバーサービス|ANAマイレージクラブ (出典:ANA)
https://www.ana.co.jp/ja/jp/amc/premium/overview/status-life/

【会員制度見直しの背景と上級会員制度の将来展望】

パンデミックによる乗客数の大幅減少に直面し、航空業界はラウンジの閉鎖や縮小、プライオリティ・パスへの一部開放など、苦境を乗り越えるために多くの対応を余儀なくされた。しかし、新型コロナウイルスの分類変更による水際対策の終了により、乗客数が急速に回復した。JALのデータ※によると、国際線で70%、国内線では94%の回復率を見せている。この乗客数の急増は、ラウンジのキャパシティ不足や、上級会員と提供サービスのバランス崩れを引き起こし、顧客満足度の低下に繋がりやすい。

※JAL2024年3月期 決算説明会資料 (出典:JAL)
https://www.jal.com/ja/investor/library/results_briefing/pdf/fy2023q3_ja0202.pdf

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