2024年3月25日8:00
韓国、台湾、中国をはじめとするアジアからの日本の玄関口であり、外国人利用客の割合が日本人を大きく上回る関西国際空港(関空)では、日本の空港の中でも最も早くから海外の決済手段の導入を進め、積極的にキャッシュレス化の推進に取り組んできた。現在、関空内の施設・店舗でのキャッシュレス決済比率は70%超。決済手段別では、国内利用者の件数ベースで交通系電子マネーが最も多い。金額ベースではAlipayがトップ。決済単価では、高級ブランド品の購入に多く使われている銀聯カードが最も高くなっている。またクレジットカード利用では、レジ混雑緩和を目的に利用を推進してきたタッチ決済が、利用件数全体の3分の2を占める。関空を運営する関西エアポートに話を聞いた。
海外の決済手段を積極的に導入
国内3つのコード決済に対応へ
成田空港と同様、国際線が主体で、空港の利用客における外国人の割合が日本人を大きく上回る関空では、1994年の開港以来、積極的に海外の決済手段の導入を進めてきた。
特に中国のAlipayとWeChat Payに関しては、かなり早い時期に導入を完了。さらにAlipay+(アリペイプラス)のグローバルパートナーとして名を連ねる20ほどの決済ブランドにも順次対応を拡大する方向で、2021年12月にはAlipayHK(アリペイ香港)とKakao Pay(カカオペイ、韓国)、2023年4月にはTouch‘n Go eWallet(マレーシア)、GCash(フィリピン)、TrueMoney(タイ)への対応が可能になった。
国際ブランドはVisa、Mastercard、American Express、Diners、銀聯、JCBに対応。さらに日本人向けのキャッシュレス決済手段としては、ICOCAやSuicaをはじめとする交通系、および、WAON、楽天Edy、iD、QUICPayなどの電子マネー。これに加えて間もなく、PayPay、auPAY、d払いの3種類のQRコード決済が利用可能になる予定である。
国内利用者の件数は交通系電子マネーが最多
中国人向けの利用促進キャンペーンを展開
関空、および、大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港の3港を運営する関西エアポート 非航空事業本部 管理・BIグループリーダー 森裕嗣氏によると、関空の2023年の国際線旅客数は1,641万3,831人で前年の7倍、コロナ禍前の2019年の66%まで回復。外国人旅客数は前年の7.6倍の1,300万6,209人で、2019年と比較して78%まで回復している。これを国籍別に見ると、韓国、台湾、香港からの旅客数が2019年を上回っている一方で、中国からの旅客数は2019年の半分以下にとどまっている。
このような状況下で、現在、関空内の施設・店舗のキャッシュレス決済比率は70%超。使われている決済手段は、 国内利用者の件数ベースでは交通系電子マネーが最も多いが、全国籍ではVisaが最多だ。金額ベースではAlipayが最も多い。また、1回当たりの決済単価では、高級ブランド品の購入に使われる頻度の高い銀聯カードがトップ。ちなみにAlipay、 WeChatPay、銀聯カードの3種が、中国人旅行客の決済全体に占める比率は、9割に上る。
これら決済3ブランドは、利用促進キャンペーンの展開にも積極的だ。たとえばAlipayが、関空内の店舗でAlipayを使って買い物をした人に対し、即座に、1時間以内の次回の買い物で使える10%割引クーポンを配信。このような施策の実施は、旅客の空港内の買い回り促進に着実な効果を上げている。
タッチ決済の推奨によりレジ混雑が解消
買い回りが促進され売り上げが向上
フライトまでの限られた時間内に、効率良く空港内で買い回りをしてもらうために、レジの混雑は一番に解消しなければならない大きな課題だ。このため、関空では、スピーディに決済を完了できる国際ブランドのタッチ決済の利用促進に力を入れてきた。導入当初はクレジットカード利用全体のうち10%程度だったタッチ決済の比率は、現在では3分の2まで拡大。台湾、香港からの旅行客ではタッチ決済の利用が8割以上、日本人でも63%に上る。カードブランド別ではVisaが最も多く、次に多いのはMastercardだ。
また、独自に開発したセルフオーダーシステムも、レジの混雑解消に貢献。「白い恋人」「東京ばな奈」などのブランド菓子6種類の販売に、20台の端末を設置している。
セルフオーダーシステムでは、利用者は端末のタッチパネルを使って注文した後、レジで会計を済ませ、商品をピックアップする。従来のように大量の商品をカゴに入れてレジまで運ぶ必要はなくなったものの、まだ改良の余地が残る。関西エアポートでは、タッチパネル操作で商品の選択と決済を同時に行えるようにする方向で、システム改修を進めたい考えだ。
世界各国では次々と新しい決済手段が生まれている。関空では、これらに感度良く対応しながら、早々にキャッシュレス決済比率を80%まで拡大することを目指す。