2024年4月12日8:00
国内でも電子商取引(e コマース)や電子決済(e ペイメント)が拡大しているが、欧州の状況についてグローバルペイメントの動向に詳しい和田文明氏に紹介してもらった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の
パンデミックと電子商取引(eコマース)
2020年の初頭に発生したCOVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミック禍は、世界中の人々の生活に大きな影響を与えた。その中でも決済分野に関しては、硬貨や紙幣のやり取りに伴う感染症への恐怖から欧米などでキャッシュレス化がさらに進展したほか、パンデミック以前から着実に成長を続けていた電子商取引(eコマース)はさらに加速し、この電子商取引の拡大は主にインターネットを介した決済方法である“eペイメント”(電子決済)の拡大へとつながった。
2020年には、世界の電子商取引の売上高が前年比28%増の4.28兆ドルに達し、日本でも、2020年の電子商取引の売上高が前年比22.2%増の19兆円に達し、1990年代以降の過去最高の伸び率となっている。こうして、電子商取引の売上高が初めて世界の小売売上高の10%を超えた。
電子決済(eペイメント)
電子決済(eペイメント)とは、電子商取引(eコマース)において、商品やサービスの代金を支払う方法のことで、電子商取引の普及に欠かせない決済手段である。インターネットとスマートフォンの普及により、パソコンベースのオンライン決済やスマートフォンベースのモバイル決済に簡単にアクセスできるようになった。こうした電子決済は電子商取引における商品やサービスの代金の支払い・決済を行い、売上データの収集・分析を可能にし、顧客の利便性を向上させるものである。
ヨーロッパの電子決済
ヨーロッパの電子決済(eペイメント)は、電子商取引(eコマース)の拡大と急速なデジタル化、消費者の嗜好の変化、従来の国ごとに細分化されていた決済の枠組みをヨーロッパ全体に統合したSEPA(Single Euro Payments Area、単一ユーロ決済圏)のペイメントの枠組みに改めたことにより、成長・発展している。SEPAの決済サービス指令(PSD2)などのヨーロッパの進化する規制環境は、電子決済の競争とイノベーションの市場を開拓し、新しい決済ソリューションの誕生を促進している。
(表1)は、2022年におけるヨーロッパ全体のCP(Card Present、カード提示)ベースのPOSペイメントとCNP(Card Not Present、カード非提示)ベースの電子決済の決済方法別シェアを示したものである。
ヨーロッパのPOSペイメントの現金決済は2020年の22%から2026年には15%へと7ポイントもシェアダウンし、さらなるキャッシュレス化が進むものと予想されている。ヨーロッパの多くの国ではデビットカードがキャッシュレスの主役で、2022年の42%を占めている。他に比べてクレジットカード決済のシェアが高いのは、イギリスやフランスである。近年大きくシェアを伸ばしているのが店頭での電子財布による決済で2020年は18%で4番目のシェアであったが、2026年は20%と2ポイントシェアアップし、現金決済を抜いて3番目になると予想されている。また、アメリカで取り扱いを増やしている店頭での後払い(BNPL)である“POSファイナンス”もヨーロッパでも2%とすでに一定のシェアを確保している。
一方、電子決済においては、アカウント2アカウントのダイレクトデビットやダイレクトクレジットといった銀行口座によるオンラインペイメントやデビットカード決済のシェアが高く、アメリカや日本などに比べ、電子決済におけるクレジットカードのシェアはさほど高くない。
(表2)は、キャッシュレス化が大きく遅れているドイツ、デビットカードをメインにキャッシュレス化が進んでいるベルギーやオランダ、クレジットカードやデビットカードなどのペイメントカードが普及しているイギリスやフランスの2022年における電子商取引における電子決済の金額ベースのそれぞれのシェアを示したものである。
<参考資料・参考文献>
・「GPR(The Global Payments Report) 2023」、
World Pay from FIS
・「オンライン決済の基本ガイド」、Stripe
・The PapersのHP