2024年5月2日8:00

小売り事業者など金融以外の事業を行う非金融事業者にFinTech(フィンテック)のテクノロジーを用いて金融機能を提供するエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance、組込型金融)がアメリカやヨーロッパ、アジアなどで急速に拡大している。本項では、ヨーロッパにおけるエンベデッド・ファイナンスと、ドイツのプラットフォームであるSolaris SE( 旧Solarisbank AG)を紹介してみたい。

和田 文明

BaaS(Banking-as-a-Service)と
エンベデッド・ファイナンスとは

エンベデッド・ファイナンスとは“埋込型金融”とか“組込型金融”とも呼ばれ、金融以外の事業を展開する非金融事業者が、自社のサービスにクレジットカードや電子マネー、デビットカード、送金、決済、投資、預金、保険などの金融機能を組み込んで、金融サービスを提供するものである。顧客が直接銀行など金融機関や証券会社、生命保険会社などの金融事業者にアクセスしなくても利用できる金融サービスのことを指し、金融機関がAPI(Application Programming Interface)と呼ばれるインターフェースを通じて、非金融事業者に対して決済サービスやローン、保険、投資などの金融サービスを提供することである。

エンベデッド・ファイナンスにより、非金融事業者は自社のサービスに金融サービスを埋込み、適切なタイミングで金融サービスを消費者にオファーすることができる。エンベデッド・ファイナンスには次のようなものがある。

・リテイラーなどが提供する独自のクレジットカードや電子マネー決済
・eコマースなどが提供する後払い(BNPL)
・自動車メーカーが提供するカーリース
・旅行代理店が提供する旅行保険、などエンベデッド・ファイナンスは、次のようなメリットをもたらすことができる。
・消費者にとって、金融サービスがより身近に、便利になる
・非金融事業者にとって、新たな顧客の囲い込みや収益源となる
・銀行などの金融業界にとって、新たな顧客を獲得することができる

ヨーロッパのエンベデッド・ファイナンス

EU委員会は、2022年7月に「金融サービスにおけるデジタル化の進展に関する報告書」を公表し、エンベデッド・ファイナンスの潜在的なメリットとリスクについて分析して、エンベデッド・ファイナンスの規制に関する提言をまとめている。ヨーロッパ(EU)におけるエンベデッド・ファイナンスへの規制は、潜在的なリスクを軽減し、消費者保護を強化することに重点がおかれている。今後、ヨーロッパでは、エンベデッド・ファイナンスの認可制度の導入や情報開示の強化、リスク管理に関するガイドラインの策定などが予想される。

ヨーロッパ各国の金融当局も、エンベデッド・ファイナンスの規制に関する検討を進めている。ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)は、2023年3月に「エンベデッド・ファイナンスに関するガイドライン」を公表し、提供事業者は、消費者保護や金融システムの安定性の観点から、以下の事項を遵守することが求められている。

・適切なリスク管理を行うこと
・透明性の高い情報提供を行うこと
・消費者保護のための体制を整備すること

BaaSプロバイダーSolaris

Solaris(旧Solarisbank AG)は、ヨーロッパをリードするエンベデッド・ファイナンスのプラットフォームである。ドイツの首都ベルリンに本社を置き、ロンドン、パリ、ミラノ、マドリードのほか、バルト三国のリトアニアの首都ビリニュスにオフィスを置くヨーロッパで認可されたクレジットインスティテュート(信用機関)で、ドイツのFinTech企業であるFinleapなどにより2016年3 月に設立されている。

Solarisは、デジタルバンキング(銀行口座、デビットカード、クレジットカード、消費者ローン、BNPLなど)およびその他の金融サービス(電子マネー、支払い取引)の運営、および取引を可能とするクラウドベースのBaaSプロバイダーである。BaFinから承認・監督された銀行ライセンスやリトアニア銀行(BoL)などからEMI(電子マネー機関)のライセンスを取得し、VividやTomorrowなどの多くの非金融事業者のクライアントを介してエンベデッド・ファイナンスを提供している。なお、Solarisは、サムスンやVisa、日本のSBIグループなど多くの投資家による出資を受けている。

Solarisの統合された金融サービスのBaaSプラットフォームは、金融商品や金融サービスをそれぞれのプロダクツ環境に統合して、別途銀行ライセンスを必要とせずに金融サービスを提供することができる。Solarisのプロダクツは、APIを経由してビジネスパートナーに提供され、いくつかのクライアント企業では独自のVisaカードを発行することができる。

Solarisの非金融事業のクライアントパートナーは、APIを通じて、次のような金融サービスを自社のプロダクツに組み込むことができる。

・デジタルバンキング(Digital Banking、銀行口座)
・クレジットやデビット、プリペイドなどのバンクカード(Bank Cards)
・カード用バッファ(Buffer for Cards)
・消費者金融(Consumer Lending)
・貸付(Lending)
・Splitpay(分割払い、BNPL)
・仲介(Brokerage)、など

<参考資料・データ>
・SolarisのHP
・Metrics of success: Evaluating Banking-as-a-Service and Embedded Finance、The Papers
・金融エコシステムの未来、組込型金融(Embedded Finance)普及の打ち手とは、デロイトトーマツ

冊子「決済・金融・流通サービスの強化書2024」より

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