2024年10月8日8:30
オリンピック・パラリンピック競技大会の国際決済テクノロジーパートナーであるVisaでは、過去のオリンピック・パラリンピックでもさまざまなイノベーションを提供してきた。2024年8月29日に開催したセミナー「Visaの五輪での決済イノベーションについて」では、マーケティング ディレクターでスポンサーシップを担当するクリムキ美帆氏がVisaのオリンピック・パラリンピックのスポンサーシップおよび「Team Visa」、およびモバイルアプリ「Visa Go」について紹介した。また、コンシューマーソリューションズ 部長 寺尾林人氏が過去のオリンピックで展開したVisaのタッチ決済ソリューションについて説明した。
唯一の決済テクノロジーパートナー
「Team Visa」でアスリートをサポート
Visaはオリンピックのワールドワイドスポンサーとして、1986年から国際オリンピック協会(IOC)によるオリンピックパートナー(TOP)プログラムに参入し、30年以上にわたる長期のパートナシップ契約を結んでいる。1988年のカルガリー冬季オリンピックにて唯一の決済テクノロジーパートナーとなり、2002年には国際パラリンピック協会(IPC)と契約し、世界初のトップパートナーとなった。この活動を通して世界がインクルーシブで包括的な社会が築けるように活動を続けている。
2000年以降、アスリート支援として「Team Visa」プログラムを立ち上げており、さまざまなアスリートをサポートしている。また、テクノロジーでは、2012年のロンドンオリンピックがタッチ決済の普及に貢献したように、開催国でさまざまな決済ソリューションを紹介できるように取り組んでいる。
「Team Visa」は、大会を重ねるごとに参加するアスリートが増えているが、パリ2024大会では最大となる147名となった。IOCやIPCではオリンピックやパラリンピックがオープンなゲームであるというポリシーを持っているが、Visaでは「Pas Sans Vous(あなたと共に)」をテーマにあらゆる地域のすべての人が大会に参加できるよう取り組んだ。今回の「Team Visa」では女性のアスリート、パラリンピックのアスリートが過去一番多く参加した。日本での活動では3名のアスリートを支援している。また、冬のアスリートとして高梨沙羅選手はソチ2014大会から長きにわたり参加している。
高梨選手が夏のオリンピックに観客として参加
モバイルアプリ「Visa GO」を開発
Visaでは、「世界をよりよい場所にするために」をミッションに決済を提供しているが、サステナブルでインクルーシブな大会を目指し、「Team Visa」アスリートが競技以外のオフサイトでも取り組んでいる活動を支援している。例えば、冬季オリンピックのアスリートである高梨選手は、今回初めて夏のオリンピックに観客として参加し、ブレイキンのShigekix(シゲキックス)選手を応援した。また、最もサステナブルな大会の実現を目指したパリ2024の取り組みは、高梨選手が立ち上げ「自然とふれあう」「自然からまなぶ」「自然をまもる」を行動指針とした「JUMP for The Earth PROJECT」と相通じるところがあり、公共交通を使ってパリの会場に向かう様子や、会場内のプラスチックを排除した取り組みなどをサステナブルな観点からレポートしてもらった。
テクノロジーの観点では決済のデジタル化に向けてモバイルアプリ「Visa GO」を開発した。大会期間中はもちろん、大会前から幅広いオファーをインタラクティブに紹介できるつくりを意識しており、パリなどを訪れた人に利用してもらった。「Visa GO」では「Team Visa」コンテンツやVisaマーケティングコンテンツへアクセスできる。フランス全土の公式パートナーや現地中小企業からのオファーを提供し、大会に訪れる人に楽しんでもらった。決済としてはモバイルアプリの即時発行が初めて可能となり、Visaカードを保有していなくてもダウンロードして会場などで利用できるようにした。
ロンドン2012大会が交通決済加速の契機に
ウェアラブル端末を活用した取り組みも
Visaのテクノロジーの取り組みとして、オリンピック・パラリンピックでの過去十数年のイノベーションの取り組みは、対面でのキャッシュレスの普及、特にタッチ決済の拡大・普及とともにあった。直近発表している数字として、Visaの対面取引に占めるタッチ決済の割合は、米国を除き80%を超えている。5回に4回がタッチ決済で取引されており、 過去の五輪でのさまざまな活動を通して、各所の協力を得ながら広がりを見せている。
その過程として、ロンドン2012大会では、モバイルのタッチ決済を試験的に導入した。当時、欧州では少しずつタッチ決済が普及し始めていたが、交通分野では本格的に始まったものはなかった。ロンドン2012大会を契機に地下鉄やバスで使えるようになり、ロンドンが公共交通機関でのタッチ決済導入の先駆けとなった。
さらに、2年後にロシアで開催されたソチ2014大会でもさらに大きなスケールで、タッチ決済と会場をつなぐ形でトランジットに導入した。タッチ決済の普及が進んでいたヨーロッパに比べるとロシアは推進の途上であったが、一般加盟店やATMなどに導入がすすんだ。
さらに、ブラジルでのリオ2016大会では、Team Visaアスリートに指輪型の端末を配布した。また、リストバンドも試験的に導入したが、ウェアラブル端末を同大会で利用してもらうことで、幅広いタッチ決済の用途を体感してもらった。
タッチ決済の商用化の動きが加速したのは韓国の平昌2018大会だ。手袋の外側にチップを埋め込むことで手袋を外さなくても決済ができる取り組みを実施。寺尾氏も実際に平昌で同技術を体験したが、凍えるような寒さの中、手袋を外さなくて済むため便利だったという。また、ピンバッチで決済できる取り組みも実施。会場でも一般の来場者に販売するなど、ウェアラブル普及の契機になる取り組みとなった。
東京2020大会では、一部を除きほとんどが無観客となったが、開催に向けてさまざまなパートナーと取り組みを行った。国内でもタッチ決済をより便利に使ってもらうためにイシュアによるタッチ決済対応カードの発行、加盟店での端末対応など、オリンピックを目標に進めた。また、国内でも交通分野における取り組みを開始した時期だ。幅広い人が会場で使用するという目標は無観客のため達成できなかったが、2020年が1つのマイルストーンとなり、国内でも広がる流れができた。
このように、Visaのオリンピック・パラリンピックの過去十数年の取り組みはタッチ決済にかかわるものが中心であり、対面決済での安全でスピーディな支払いにつながる最優先事項となったが、結果的に多くの国でタッチ決済の導入比率は成長している。その観点では1つの転換期を迎えている。
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