2026年4月27日8:00
キャッシュレス化の進展、決済手段の多様化を受けて、決済業界を取り巻く規制の見直しが進められている。このトレンドを、①新しい決済手段に対する法規制状況、②eKYCの見直しと不正対策、③個人情報保護法の3年ごとの見直しによる改正、④規制が及ばなかった分野への規制の動きの4つの切り口から解説する。(2026年3月17日開催「ペイメント・セキュリティフォーラム2026 Spring」の講演より)
現代ビジネス法研究所 代表 博士(法学) 吉元 利行氏
決済環境は刻々と変化 注目を集めるステーブルコイン
本日は規制の見直しについて、強化の部分と緩和の部分に焦点を当てて、簡潔にお話しさせていただきたいと思っております。合わせて、現在検討中の分野についてもご紹介いたします。
まず、新しい決済手段に対する法規制の状況についてお話しいたします。特に2024年から2025年にかけて、また今年2026年に施行されたもの、それから来年に予定されているものなどをまとめてご紹介いたします。
これまで暗号資産の取引は、資金決済法の中で行われていました。本日は簡単な説明にとどめますけれども、今までは暗号資産というとどちらかといえば投機的な、価格が非常に上がったり下がったりするものでしたけれども、ステーブルコインというのはその名の通り、安定的なコインということで、いろいろな担保的な措置を講じて、資産価値が変動しないように工夫されたものです。典型的なのは通貨、日本の場合であれば円に連動したものです。つまりこれは電子マネーのようなものです。電子マネーは1円チャージすれば、1円相当の決済に利用できます。
そこで、暗号資産の中でもステーブルコイン、さらに法律上、電子決済手段に該当するものについては、2024年に新たに定義が設けられて、資金決済法の規制の対象になりました。これに対応して、暗号資産やステーブルコイン、電子決済手段を扱う業者を、電子決済手段等取引業者という新しい括りで定義するようになりました。登録制度の下で、消費者の保護を図りながら、取引に介在していくというかたちになりました。
現在ステーブルコインは、日本では1社しか発行していません。銀行はまだ発行のルールが定まっていないので、発行時期がいつになるかわからないのですが、信託銀行などは今、次々と実証実験を行っているところです。
電子マネーの場合、電子マネー業者が自ら加盟店を開拓して、独自のネットワークの中で、使える領域を拡大させていきます。一方、暗号資産や電子決済手段は、Web3(ブロックチェーン技術を基盤する分散型ネットワーク環境)で流通しますので、発行会社が直接管理をしているわけではありません。ですから、概念としては誰でも扱えるのですが、実際は扱える基盤がないと扱えませんので、取扱業者が必要であり、利用者保護のための登録条件が設定されています。
本日は時間の都合でここまでの説明にとどめさせていただきますが、ご興味ある方は後ほどお声がけいただければ個別に対応させていただきます。
利用者保護の観点から資金決済法を改正
資金決済法は、国境をまたぐ収納代行についても規制を課しています。国内のBtoCの収納代行については、決済代行会社が受け取った段階で決済が完了するといったかたちで利用者保護が図られているものについては、資金移動業の登録は不要とされてきました。これが海外の場合はどうかというと、さまざまな業者が間に入って、誰が責任を持つのかわからないということから、収納代行会社については例外措置ではなく、資金移動業の対象にするということになりました。
最近ときどき報道されますけれども、海外では適法でも国内では違法になる取引があり、そういった取引を仲介する決済代行会社がかなりあることから、規制の対象になったものと思われます。
また、利用者保護のために、規制の見直しが図られています。資金移動業において倒産等で破綻したときには還付手続きをしなくてはいけないのですが、これまでは供託の払い戻しで対応することになっていました。しかし供託金から払い戻しをするには最低でも170日かかるということで、これを速やかにするために、資産保全金から直接返還することが可能になりました。
それから、信託型ステーブルコインについても、運用が国債と定期預金を裏付け資産とすることで、預金を安定的に充当できるように図られています。
このように資金決済法は、利用者保護の観点でも改正が行われました。
電子マネーで寄付もOK 暗号資産には金融商品取引法が適用へ
もうひとつの改正点が、電子マネーによる寄付の承認です。電子マネーは本来、前払い式決済手段として登録され、商品やサービスの対価の支払いが認められているものです。しかし、寄付は、原因取引がなく、一方的にAさんがBさんにお金を渡すという行為ですから、送金と同じで、支払いではありません。間に立つ銀行は、それが何のお金なのかについては一切関与していません。クレジットカードや電子マネーによる支払いには、原因取引があります。これがあるかないかによって、資金移動業の適用になるかならないかが決まるわけです。
しかし、寄付ということになると一方的な資金の引き渡しとなり、資金移動業の議論は避けられません。そこに今回、決着がついたということです。国、地方公共団体および認可法人に対しては2万円まで、電子マネーで寄付ができるということになりました。これに加えて金融庁長官が指定したものについては、適格寄附金受領者ということで支払いが可能になりました。つい先日、この大臣告示が出て、5~6団体が認定されました。青い羽根募金の団体など、公共性のあるところが認定されています。電子マネー事業者はこういったところを加盟店にして取引していけばいいのではないかと思います。
資金決済法の見直しの最後として、暗号資産に関する規制についてお話しします。冒頭に申し上げましたように、これまで暗号資産取引というのは資金決済法の中で扱われていました。これがさまざまなかたちで利用され、投資などにも使われていることがあって、金融商品取引法で証券、債券などの取引と同じように規制したほうがいいのではないかということになり、こちらに統一されることになりました。暗号資産取引は今後、資金決済法から金融商品取引法に移るということになります。その分規制はかなり厳しくなります。
世界各国において本人確認は ICチップ搭載のマイナカードが主流に
次に、eKYCの見直しと不正対策についてお話しいたします。犯罪収益移転防止法には、特定取引については、本人の特定事項などを含め、取引時確認をしなくてはいけないという定めがあります。その際の、本人特定をするための本人確認書類の偽造が甚だしい。ときどき報道もされていますけれども、運転免許証などが偽造され、これが非常に精巧なものだということで、専門の担当者が、運転免許証などの画像をスマートフォンのカメラなどで読み取って、角度を変えてみたりしながら判定していたのですが、それでも見抜けないぐらいになっています。
そこで、偽造が困難なICチップを使った本人確認をすべきだということになりました。私自身、長年カード不正対策に携わっているのですが、やっとここまできたかというのが正直な感想です。マイナンバーカード以前、住基カードのときからこの対策は技術的には可能でした。ただ、国民の理解が得られず、反対意見が多かったために、実現できませんでした。マイナンバーカードの発行枚数が1億枚を突破したことで、やっとここまでこれたということだと思います。
私は2025年に台湾、先月、2026年2月にはインドネシアとシンガポールに視察に行ってまいりましたが、そういった国々もマイナンバー制度で本人確認を行っています。2020年にマレーシアに行ったときにも、もうすでにマイナンバーカードにいろいろな情報、たとえば宗教とか収入などの情報が格納されていました。現地のイオンでは2020年当時から、そのカードを提示してもらって、情報を読み取って、あとは信用情報機関で信用照会をして、即時にクレジットカードを発行するということを行っていました。
日本でもようやくこの仕組みが整ったことで、本人確認書類の偽造による被害は相当減るはずです。ただ、どうしてもマイナンバーカードを持たないという人のために、救済措置として旧来の本人確認方法は残ります。これが不正者の狙い目になることが危惧されるところです。
これにも関連しますが、未成年者取引についてのSNS規制の動きがあります。16歳未満、あるいは14歳未満にSNSを利用させないという規制で、海外ではすでに法制化している国がいくつもあります。そうするとサービス提供者は、利用者が未成年者ではないということを確認する必要があります。ここでも本人確認をする必要性が生じてきます。このあと個人情報保護法の改正についてお話しいたしますが、その中でも16歳未満の個人情報の利用について親権者の同意をとることが必須になります。申込者が16歳以上か未満かを確認し、なおかつ親権者を探して同意をとるという面倒な手続きが発生します。実務上、現場のオペレーションは相当大変なことになると予想されます。
個人情報保護法は3年ごとに見直し 実情に照らして緩和と厳格化を実施
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