2011年12月26日8:00
国内で非接触ICカードのインフラを確立したFeliCaの次なる展開は?
新領域の開拓、NFCによるグローバル展開も視野に
ソニーが開発した非接触ICカード技術「FeliCa」は、決済や交通乗車券、社員証など、国内のインフラとして重要な役割を果たしてきた。FeliCaは「NFC(Near Field Communication)」と互換性があり、ISO/IEC18092、21481に準拠しているため、グローバルに広がる可能性を秘めている。そこで、ソニー FeliCa事業部 プロダクト&サービス部 商品企画担当部長 渡邊誠氏に新分野の開拓など、FeliCaビジネスの今後の展開と、NFCへの取り組みについて話を聞いた。
ソニー
FeliCaチップの累計出荷個数は5億個を超える
ソニーがNFCフォーラムのテストラボの認定も取得予定
――現時点でのFeliCaチップの普及状況とソニー様のNFCとの関わりについてお聞かせください。
渡邊:FeliCaチップの出荷累計は、2011年3月末時点で5億1,600万個となり、そのうちモバイルには1億7,000万個が搭載されています。国内を中心に非接触ICカードやモバイルペイメントのインフラを確立する一役を担えたと考えています。
例えば、電子マネーは1億6,000万枚以上が発行され、国民が1人1枚以上保持するほど普及しています。決済件数も7月に月間2億件を超え、数字はまだまだ伸びています。
NFCへの取り組みでは、2004年にノキア、フィリップスと共同でNFCフォーラムを設立し、「カードエミュレーション」、「ピアtoピア」、「リーダライタモード」をTypeA/B、FeliCaを含めた形で推進しています。同フォーラムには現在、160社以上が参加しており、ソニーとしてもNFCフォーラムのテストラボの認定取得を予定しています。
――FeliCaは、決済や交通乗車券、セキュリティなどの幅広い分野で利用されていますが、新分野としての展開をお聞かせください。
渡邊:例えば、ファンクラブなどの会員カードが廉価版の「FeliCa Lite」を使ったICカードになることで、コンサート会場で利用できるとともに、オークション対策にもなります。カードをかざしてポータルサイトにアクセスするなど、スマートポスター的な活用も行えます。また、スマートフォンのリーダライタ機能を利用することで、カードをかざすだけで、簡単にWebサイトにアクセスでき、コンテンツを楽しむことが可能になります。アーティストによっては、数十万人規模の会員を抱えていますので、導入できればかなりの規模になると思います。そのほか、オープンにできないことも含め、いろいろな展開を考えています。
AESを採用した次世代のFeliCaチップや、FeliCa Lite-Sを開発
低価格化にも力を入れ、TypeA/Bとの差は徐々になくなる
――スマートポスターとしてのFeliCa Liteの活用に関してはいかがでしょうか?
渡邊:これまでスマートポスターをおサイフケータイで行う場合は、ドコモの903以降のおサイフケータイであることという縛りがありましたが、Android搭載スマートフォンであれば、アプリをインストールすればキャリアに関係なく利用できるようになります。街中のいたるところにFeliCa Liteなどが貼付されるようになるのは、時間がかかると思いますが、広告媒体としての活用も増えてくるのではないでしょうか。
――FeliCaはTypeAに比べて、カードのコストが高いという声もありますが、低価格化に向けた取り組みについてお聞かせください。
渡邊:ICカードに利用するチップそのものの価格は量産効果の要因が大きいです。また、日本では海外に比べ、カード形状にしたときの品質要求が厳しいため、FeliCaは価格が高いと思われがちです。
弊社としてもカードの低価格化には力を入れており、AESを採用した次世代のFeliCaチップは、従来のFeliCaチップよりも低価格での提供を視野に入れています。また、廉価版の「FeliCa Lite」については、よりコストを抑えた「FeliCa Lite-S」の商品化を進めており、量産化が実現できれば、TypeA/Bに比べ、言われているような大きな価格差はなくなると思います。
リーダライタはすでにFeliCa、TypeA/Bをサポート
全世界のPCやタブレット端末に搭載可能
――リーダライタでは、すでにFeliCaに加え、TypeA/Bをサポートしていますね。
渡邊:Androidに加え、Windowsの次期OSがNFCをサポートする動きがありますので、タブレットメーカーなどからお問い合わせも増えています。今後は、スマートフォンやタブレット同士、スマートフォンとタブレット、スマートフォンとテレビなど、ピアtoピアにも使われていくと思います。Androidに関しては、Googleが「Android Beam」を発表するなどの動きがありますので、これまで日本で行ってきたことがグローバルに広がると感じています。
ソニーのPaSoRi(パソリ)では、FeliCaだけではなく、TypeA/Bをサポートしており、住民基本台帳カード(TypeB)を使った国税電子申告、納税システム(e-Tax)にも使われています。また、ソニーが行ってきた従来からのFeliCa性能検定に加え、NFCフォーラム認証試験も実施できる体制になります。FeliCa検定によりリーダライタとの相互接続性は重視してきましたが、NFCで規定されるコンプライアンステストのベンダーに対してもわれわれのリーダライタプラットフォームをリファレンスサンプルとして提供しています。
「Cartes Identification 2011」でも、全世界のタブレットやPCにNFCのリーダライタを搭載可能な、Globalに使えるユニバーサルNFCリーダライタとしてのHIDとの協業製品を発表しました。
――今後、TypeA/Bを含めたNFCは、国内でどのように広がると考えていますか?
渡邊:国内ではFeliCaのインフラは普及していますが、TypeA/Bのアプリケーションについても今後は徐々に広がると思います。ただ、現在、TypeA/BのNFCケータイで決済をと言われていますが、そんなに簡単ではないと考えています。ネットワークの仕組みやセキュリティの担保などを含めたシステム構築が必要となりますので、実験や障害を繰り返しながら少しずつ広がると思います。