世界中で広がるスマートフォン決済、国内ではセキュリティや安全な利用が求められる

2012年8月9日10:00

●「Pay Pal Here」の国内展開で注目が集まる

スマートフォンやタブレットにイヤフォンジャックやジャケット型のカードリーダを装着して決済するソリューションが注目を集めている。

四角いカードリーダをイヤフォンジャックに挿入するSquare(出典:SquareのWebサイト)

ソフトバンクとペイパルは、2012年5月にデジタル決済を推進する合弁会社「ペイパルジャパン」を設立し、「Pay Pal Here」を国内で展開すると発表したが、ソフトバンク 代表取締役 孫正義氏は、モバイルPOSはクレジットカード決済を導入していない中小規模の加盟店を開拓するソリューションになり得ると強調した。また、O2Oを実現するソリューションとして位置づけた。

●M-POSは1990年から用いられる

モバイル端末を活用したPOS(M-POS)は決して目新しいものではなく、米国では1990年代に一部の決済代行会社などによって中小のマーチャントや展示会会場などの決済端末機の代替として用いられてきた。また、国内でも従来の携帯電話を利用してクレジットカード決済を行うサービスをリリースした会社も過去に存在したが、それほど広がらなかった。

●SquareやPayPalに加えGROUPONもM-POSに参入へ

スマートフォンを決済端末に活用した取り組みとしてまず話題をさらったのは、Squareだ。その後、アメリカでは、PayPalの「PayPal Here」やIntuitの「Intuit Go Payment」、VeriFoneの「VeriFone SAIL」、MAGTEKの「Qwick Pay」、IREVの「RevCoin」、NCRの「PCMobile」などが登場している。また、オンラインクーポンサービスを提供するGROUPONもM-POSに参入する意向を示している。

●アクワイアリングの形態が海外と日本では異なる

日本でも複数の企業がスマートフォン決済ソリューションをリリースしている。また、国内の主要なカード会社も加盟店の新たな開拓のツールとして期待しているところは多い。

しかし、国内ではカード会社の加盟店審査の基準が海外よりも厳しくなることが想定される。モバイルPOSは、持ち運んでの決済が可能になることにより、場合によっては不正利用の温床になりかねない。そのため、アクワイアリング時の加盟店審査については、従来のモバイル端末同様に厳しくなるだろう。また、決済ソリューションを提供する企業にとっては、国内のカード会社との契約が求められるため、一部の参入企業が撤退を余儀なくされた事例もある。

国内でもフライトシステムコンサルティング、ゼウス、ロイヤルゲート、日本ポステックなどがスマートフォン決済ソリューションを提供

●国内では第一にセキュリティが求められる

日本クレジット協会や日本クレジットカード協会のガイドラインでは、決済端末自体のセキュリティ基準も厳しく設けられており、カード決済時の暗号化の実施や端末固有の識別も求められる。現状、国内でサービスを提供している企業の多くは、カード会社等と連携して、強固なセキュリティを確保したシステムを構築している。

一方、海外では、Squareのイヤフォンジャックに挿入する端末の脆弱性が指摘され、リーダの置き換えが発生するなど、セキュリティ面の問題が発生している。

●業界のガイドラインではリアル処理が必須に

さらに、海外のソリューションの場合は、スマートフォンで読み取った決済データをオンラインの電文で処理しているが、国内のガイドラインではリアル電文で処理することが明記されているといった違いもある。例えば、リンク・プロセシングでは、当初からリアルの電文で決済処理を行っていたが、フライトシステムコンサルティングやロイヤルゲート、ゼウスといった企業は業界のガイドラインを受け、システムの変更が発生したという。

なお、書籍「O2Oビジネスガイド」(9月10日発売予定)では、Square、PayPal、Intuit、VeriFone、MAGTEK、IREVなど、海外企業が提供するスマートフォン決済ソリューションを取り上げるとともに、国内の動向や今後の展望についてまとめている。

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