2012年9月4日8:00
決済代行事業者7社が設立した「EC決済協議会」の目的は?
共通の課題について議論し、行政等に対しての受け皿の役割を果たす
サイバーソース、GMOペイメントゲートウェイ、スマートリンクネットワーク、ソフトバンク・ペイメント・サービス、デジタルガレージ、ペイジェントおよびベリトランスの決済代行事業者7 社は、2012年8月1日、「情報セキュリティ」、「不正利用対策」、「業務運用」などの情報交換を行う「EC決済協議会」を設立した。協議会設立の背景と目的について、メンバー3社に話を聞いた。
EC決済で決済代行事業者が果たす役割が高まる
業界をリードする企業が中心となって設立
インターネット決済の市場が拡大する中、決済代行事業者の果たす役割はますます高まっている。また、決済代行事業者自身、EC化の発展に貢献したいという自負があるなかで、海外のアクワイアラと契約したクロスボーダー取引に光が当たっている現実もある。
今回、EC決済協議会を設立した決済代行事業者7社では、「決済代行サービスにおいて、仮に問題が発生した際、その共有と方向性を出す場が必要という共通認識を持っていた」とスマートリンクネットワーク 執行役員 経営企画部副部門長 桑原透氏は説明する。実際、詐欺的な出会い系サイトなどのトラブルがあるたびに関連団体等から、健全な運用を行う決済代行事業者が集められ、意見を求められることがあったという。桑原氏は、「本協議会で共通課題の解決を目指し、行政との窓口的な役割も果たせていけることが望ましい」と目的を話す。
EC決済協議会を設立した7社は、国内のアクワイアラと契約しており、EC加盟店に利便性の高い決済サービスを提供するために努力している。また、ペイメントカードの国際セキュリティ基準である「PCI DSS」に自ら準拠するとともに、「3-Dセキュア」や「セキュリティコード」、認証アシストサービス等の「属性情報」といった認証手段およびクレジットカードの非保持化の推進に力を入れている。
「決済代行事業者に求められるセキュリティのレギュレーションはいろいろとありますが、協議会メンバー企業のすべてが対応済みです。安全な取引を促進するため、今後は、適正な対応を行っている事業者について、外部からわかりやすいよう、何らかの形で示す必要があると考えています」(ベリトランス 執行役員 総合企画室長 安部勉氏)
会員同士で定期的に情報交換を予定
協議会の設置により問題発生時の迅速な対応が可能に
また、カードブランドでは、決済代行事業者のタスクフォースを結成しているが、7社はそのワーキングにも参加している。さらに、関連省庁や関連団体と情報交換を定期的に行っている。
まずは、会員同士の情報共有集会の実施、個別テーマや課題に関する検討を行うとともに、関連団体との定期的なコミュニケーションを図る。当初は、各社が抱えている悩みなどを共有し、その課題に対して議論する予定だ。また、検討課題に挙がった項目については、ワーキングの設置なども検討する。
具体的な活動のサイクルについては、「決済代行事業者各社の過度な負担にならないような形で定期的に開催していきたい」とGMOペイメントゲートウェイ 執行役員 製品・サービス戦略室 室長 向井克成氏は説明する。現状では、活動に対しての報告やプレスリリースの発信などは考えていないが、「仮に問題が発生した際に業界を代表する7社が集まることで、迅速な措置をとれます」と向井氏はメリットを口にする。桑原氏も「今回、協議会ができたことにより、問題があった際の受け皿ができ、検討できるだけのベースが出来上がったことは大きな成果です」と笑顔を見せる。
ニュートラルな立場で協議会を運営
決済代行事業者の目指す方向に応じて適切なアウトプットを示す
基本的には、ニュートラルな立場で協議会を運営するため、幹事会社などは設けない予定だ。すでに、国内で活動する決済代行事業者から参加の要望もあるが、会が広がりすぎると議論がまとまらなくなる可能性もあるため、立ち上げ後に慎重に検討していきたいとしている。なお、今回の協議会には、オブザーバーとして、NTTデータが参加している。
安部氏は最後に、「メンバー企業が行っていることは、協議会ができたからと言って基本的に変わりません。ただ、同じ決済代行事業者といっても、サービスの提供形態は多岐にわたりますし、今後各社が目指す方向性も異なる可能性があります。そのため、各社の動きに合わせて適切なアウトプットを出していきたいです」と意気込みを語った。