2012年12月3日8:40
決済起業家たちの夢
☆☆☆ 決済の専門知識はいらない、変革の情熱があればいい☆☆☆
Dreams of Entrepreneurs
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則
NCBレポート2012年の年間テーマは「進化する決済」だった。1月号でO2O(オーツーオー)決済をとりあげ、2月にはペイパル(PayPal)の地上戦略、3月号では革新しつづけるスクエア(Squ-are)、4月号は販売スタイルを激変するタブレットPOS、5月がソーシャル決済、6月にはGoogleウォレットとアイシス(ISIS)の戦いをレポートした。ここまでが上半期。
下半期にはいると、7月にカードSyncマーケティング、8月号ではペイパルヒアやスクエアなどのモバイル決済端末競争、9月はリテールバンキングの鍵となるクロスセリングをとりあげ、10月にはブランドプリカで収益を上げるネットスペンド(Net-Spend)、11月はキャッシュレス社会創造に向けた世界の動きを紹介した。
さて、2012年の締めくくりは、ここ数年で台頭してきた決済関連の新サービスをとりあげることにしよう。いずれもスタートアップ企業のビジネスモデルである。
なぜ、起業したのか。ビジネスモデル構築にはどんなハードルがあったのか。それをどのようにして乗りこえたのか。
身近なところに起業や革新のヒントがある。アイデアを実現するには、夢に向かって前進するだけでいい。起業時の構想からは紆余曲折。それでも前進することが進化なのである。本号で紹介する事例は、そう教えてくれる。
●学生時代の実体験から起業
大学の授業料納付というニッチな市場で躍進している国際送金サービス会社がある。米国のピアトランスファー(peerTransfer)だ。2009年設立のベンチャーで、本社はボストン、欧州にもオフィスを開設している。
創業者CEOのイケル・マルカイデ(Iker Marca-ide)は、自動車業界からボストンコンサルティングに転職。3年強のコンサルティング経験をもとに、もう一度自動車業界に戻るが、一転独立してピアトランスファーを設立した。
授業料の送金サービスを思いついたのは、学生時代の経験から。2008年にMBA取得のため、欧州からマサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院へ留学したときの話しだ。
イケル・マルカイデCEOはスペイン生まれ。MITへ入学金や授業料を払込む際、欧州から米国への国際送金の複雑さと高い手数料に苦しんだ。
もっと便利な方法があるはずだ。そう考えたイケル・マルカイデは、すぐに行動に移した。簡単に、低コストで授業料を支払える国際送金ソリューションを開発したのである。