2013年5月31日8:00
オムニチャネルバンキング戦略
☆☆☆ モバイル時代に対応するチャネルの再構築がはじまった ☆☆☆
OmniChannel Banking
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則
米国メガバンクのリテールバンキングに異変が起きている。各行が競って支店のリニューアルと次世代ATMの投入、そしてモバイルサービスの拡充を推進しているのだ。チェイスやウェルズファーゴに加え、バンクオブアメリカもこの戦いに参戦した。
その背景には、スマートフォンやタブレットの浸透がある。消費者の購買行動が劇的にかわった。それにあわせて小売や金融業界がサービスをかえようとしている。その戦略がオムニチャネル(Omnichannel)だ。オムニとは「全」「総」という意味。テレビでオムニバスといえば総集編。オムニディレクションは全方位。オムニチャネルとは、すべての顧客接点という意味になる。
では、従来からいわれているマルチチャネルとはどこがちがうのだろう。オムニチャネルにはO2Oの概念が加わった。ウェブやモバイルというオンラインサービスと、オフラインの店舗とのシームレスな連携。これがオムニチャネルのコアとなるコンセプトだ。たとえば、オンラインでローンについて調べ、フェイスブックから支店の面談時間を予約。支店に行くとタブレットがおいてあり、その人のローンニーズにあわせた商品を、比較表や動画などをみせながらわかりやすく提案してくれる。ローンの申込みはタブレットからログインIDで簡単に完了する。オムニチャネルでこんなことができるようになった。
シスコ(Cisco)の調査によると、最もITリテラシーの高い人(アーリーアドプター)は、オンラインバンキングの利用が90%でありながら、オフラインの支店利用回数が月間3件と最も多かった。逆に、ITリテラシーが低い層(ラガード)は、オンラインバンキング利用が76%で、支店利用回数は1.8回と最低だった。ITリテラシーの高い優良顧客ほど、複数のチャネルを利用していることがわかった。
米国銀行が競って進めているオムニチャネル戦略とはなにか。どんなサービスをスタートしているのかをレポートする。