2013年4月17日8:00
書店と顧客を結ぶポイントカード「Honya Club」を展開
ECサイトとの連携で顧客を書店へ誘導
出版取次大手の日本出版販売では、ポイントカードシステム「Honya Club」と書籍通販サイトの「Honya Club.com」の連携により、リアルとネットの双方から読者と店頭を結び、ユーザーの利便性向上と書店のCRM強化を支援している。
書店が投資コストを抑えてポイントカードを導入可能
「WIN+」により来店客の購買動向を分析
日本出版販売が提供する「Hoyna Club」は2006年6月にスタート。書店が顧客向けに展開するポイントサービスとしては、三省堂書店などと並び、早い段階でのスタートとなった。目的は日本出版販売が取引している企業の支援となる。ポイントカードの発行により顧客と書店との結びつきを深め、顧客データを分析することでプラスαのサービスを提供し、店舗のファンになってもらうことが基本スタンスとなる。
2013年3月末現在、会員数は約530万人、加盟店数は349店舗となっている。顧客情報は、Honya Clubに加盟した書店と日本出版販売の双方で共有している。
会員に付与するポイントは1%を推奨しているが、各書店で0.5%の付与など、自由にコントロールが可能だ。書店がHonya Clubに加盟する場合、発行するポイントの原資は各書店が負担し、カードの費用と一定のシステム利用料を日本出版販売に支払う流れとなる。書店が単独でポイントサービスを展開するとカードの発行やシステム投資など、費用がかさむ課題があるが、日本出版販売のシステムを活用することにより、投資コストを抑えることが可能となっている。日本出版販売では、キャンペーンの展開や書店に掲示するポスターなど、書店の販促活動を支援している。
書店のPOSシステムは比較的導入が進んでおり、どこで、何を買ったのかという情報はリアルタイムに収集できるが、“誰が”購入したかのデータを取得するのは難しかった。そこをHonya Clubを導入すれば可視化できるようになる。また、来店する顧客の客層に合わせた本の提案などが可能となった。
書店に向けては、Honya Clubの会員を分析できるシステム「WIN+」の利用を薦めている。日本出版販売 CRM事業部 CRM企画課 係長 後藤智志氏は、「例えば、ある書籍を購入した人が関係のある書籍を購入した、コミックの1巻を購入した人が2巻以降をどの程度購入しているのか、といったデータなど、自店の客層や売れ筋を分析できるのが特徴となっています。書店によっては書籍を並べる配列など、Honya Clubによって集まったデータを活用することにより売上アップにつなげる事例もでてきています」と成果を口にする。
さらに、定期誌購読の拡大に向けて、定期誌取り置きサービス「Maga- STOCK(マガストック)」をリリースした。同サービスを導入することにより、書店は管理業務の負荷を軽減することができ、会員はHonya Clubカードを見せるとスムーズな受取が可能となっている。
HonyaClub.comでは注文商品を提携書店で受け取り可能
ネットとリアル双方からサービスを展開へ
また、ネット向けのサービス「Honya Club.com」は2011年8月にスタート。以前は、書籍やDVDなどを販売する「本やタウン」というサイトを運営していたが、Honya Club.comにサービスを統合することで、より分かりやすいサービスを実現させた。
Honya Club.comでは、注文商品を提携書店で受け取ることができる(宅配も可)ほか、加盟書店を含む提携書店店頭の在庫確認、サイト・加盟書店での購入履歴を一括管理できる機能を搭載している。
また、サイトでの買い物でポイントが貯まり、使うことも可能だ。日本出版販売 CRM事業部 CRM企画課 原嶋智春氏は、「サイト上で貯まったポイントをリアル書店店頭で使えるポイントに変更できるのが特徴です」と説明する。
「昨今では、ユーザーの生活行動としてネットとリアルの境界がなくなっています。また、本に対する需要もネットとリアルを活用して満たしたい思いがあるため、ネットでの購入を店舗の収益につなげていただきたいと考えています」(後藤氏)
「ほんらぶ」プロモーションで「トクベツな3冊」を紹介
ネットとリアルを併用する会員の増加に努める
2012年10月からは、Honya Clubを中心に「ほんらぶ」プロモーションを展開。Honya Club.comに開設した特設サイト「3 SPECIAL BOOKS」では、著名人・書店員・作家・雑誌編集長のみならず、本好きの一般読者が集い、各々が選ぶ「トクベツな3冊」を紹介している。当初は3月でキャンペーンは終了する予定だったが、3 SPECIAL BOOKS は4月以降も継続して展開している。
「ネット書店は目的買いが多く、本に出会うリアル書店の楽しさが少ないことが課題です。3 SPECIAL BOOKSでは、リアル書店のように本に出会う偶然的な発見をネット上で展開することを目的として取り組んでいます」(後藤氏)
日本出版販売では、3 SPECIAL BOOKSを用いた売場づくりを書店に提案しているが、実際に再現する書店も出てきているそうだ。
こうした取り組みの成果もあり、書店における書籍の売上が減少する中、店頭売り上げに占めるHonya Club.comの割合は徐々に高まっているという。ポイントカードを発行する書店はもともとCRMへの意識が高く、書店によっては会員の売上占有が6~7割を占めるところも出てきているそうだ。実際、書店利用者の1回あたりの購買金額は1,000円ほどだが、Honya Club会員は1,200円を超える。また、ネットとリアルを併用して利用する会員はさらに高い売り上げとなっている。
「弊社ではネットとリアルを併用する会員を“W会員”と呼び重視していますが、売り上げへの貢献度の高さが特徴となっています。ただ、全体の割合からみるとまだまだ会員は少ないため、Honya Club.comの利用者をさらに伸ばしていきたいです」(後藤氏)
会員に対してはメールなどを活用してアプローチを実施。メールは、日本出版販売からの配信に加え、各書店が独自に送ることも可能だ。
将来的には、Honya Club.comにおいて電子書籍の展開も予定している。日本出版販売では、リアルの書店と併用して利用してもらうことで、相乗効果が生まれると考えており、書店の売上に還元できる仕組みを構築していきたいとしている。また、店舗でも試験的に電子書籍を販売する取り組みを行っている。
会員数については1,000店舗、1,000万人を将来的に達成させることが目標となる。後藤氏は、「本のポイントカードといえばHonya Clubと呼ばれるように浸透させていきたい」と力強く語った。