2013年4月23日8:00
デジタルサイネージとスマホを活用した「コンパスサービス」を展開
One to Oneのレコメンド情報を提供し人とまちのつながりを深める
大阪駅北口に開業するグランフロント大阪(GFO)。同施設では、ICカードリーダを搭載したタッチパネル式デジタルサイネージ端末とスマートフォンアプリを活用し、施設内の魅力的なスポットを発見したり、同じ趣味の人とつながることが可能なまちの情報プラットフォーム「コンパスサービス」を展開する。単純にネットからリアルへ顧客を送客するだけではなく、施設内でもサイネージ上に表示される他のユーザーのつぶやきから新たな気づきを得られるなど、ネットとリアルを連携し、個々人に合ったOne to Oneサービスの展開を目指している。
266店舗のショップ&レストラン、知的創造拠点ナレッジキャピタル、関西最大級のオフィス、ホテル等の複合用途
経年「優」化も可能な参加型のまちづくりを進める
GFOは、大阪駅の北口「うめきた」の全体24haのなかの7haの先行開発であり、全266店舗のレストラン、知的創造拠点「ナレッジキャピタル」、関西最大級の規模を誇るオフィス、ホテルなどの複合用途からなる。また、水と緑豊かな1万㎡の「うめきた広場」、ナレッジキャピタルの中心に位置する1,000㎡の7層吹き抜け空間「ナレッジプラザ」、施設西側に沿って、イチョウ並木と水景が続く「せせらぎのみち」、南館と北館の屋上に設けられた「テラスガーデン」などの公開スペースも有している。
「これまでのまちづくりは『施設』や『機能』にフォーカスされてきたため、いずれは経年劣化してしまうのが課題となっていましたが、GFO における主役は人であり、活動やコミュニティにフォーカスした街づくりを目指しています。つまり、活動やコミュニティは経年「優」化も可能な参加型のまちづくりを進めています」(一般社団法人 グランフロント大阪TMO プロモーション部 主任 明壁佳久氏)
参加型のまちづくりに向けては、2つのプラットフォームを用意する。まず「ひと」のプラットフォームとしての「SOCIO(ソシオ)制度」。これは、GFOで実現したい「夢」を持ったソシオキャプテンを中心に集まったコミュニティ(ソシオ)の活動を、まちが支援していく制度だ。そして、「情報」のプラットフォームとして、双方向のコミュニケーションが可能な「コンパスサービス」を展開する。
従来のまちの情報サービスは、画一的で、店舗の基本的な情報を一方的に配信したり、クーポンをばらまくなど、固定的な情報が多かったという。加えて、来街者が当該店舗を気に入ったとしても、来街者のリアクションはFacebook、Twitter、食べログなどに流出することも多かった。また、来場者同士での交流促進も充分にできていなかったそうだ。
その点、新たな情報サービスである「コンパスサービス」は、来街者の行動特性に応じたOne to Oneのレコメンド提供を目指している。来街者のリアクションを“まちSNS”へ還元可能とすることにより、来街者の行動特性を把握でき、レコメンドにつながるという。
コンパスサービスは、施設内に設置された36機のタッチパネル式デジタルサイネージ端末「コンパスタッチ」と、専用のスマートフォンアプリ「コンパスアプリ」により実現している。
「GFO OSAMPO CARD」を始めとした手持ちのICカードを利用してユーザー登録
1人ひとりの趣向やライフスタイルを判別するシステムを用意
来街者には、iOSやAndroidの専用アプリをスマートフォンにダウンロードして、自身のSNS(Facebook,Twitter)のアカウントと連携することで、さまざまな機能を利用してもらいたいと考えているが、もっと手軽にコンパスサービスを使ってみたいという人もいることは間違いない。そのため、ユーザーの手持ちのICカードを用いたユーザー認証が可能な設計とし、まちに来たら必ず目に入る42インチのタッチパネル式デジタルサイネージを用意した。
来街者は、手持ちのカードをコンパスタッチ(ICカードリーダはソニーの「PaSoRi」を搭載)にかざすだけで、簡単にコンパスサービスにログインでき、カスタマイズされた情報を取得可能だ。例えば、GFO のショップ&レストランが発行する「GFO OSAMPO CARD」にもICチップが搭載されている。また、「ICOCA」や「PiTaPa」などの交通乗車券、「楽天Edy」や「WAON」「nanaco」といったFeliCaベースのカード、TypeA/Bのカードでも情報の取得が可能だ。さらに、NFCやFeliCa対応のスマートフォンでも同サービスを利用可能だ。
ユーザーがコンパスタッチのリーダ部分にICカードをかざすと、コンシェルジェキャラクター「クピ」が登場。コンパスサービスでは、サービスの利用履歴などのライフログをもとに、1人ひとりの趣向やライフスタイルを判別するシステムを用意している。クピは、これまでのユーザーの行動や検索内容から、GFOのおススメ店舗などを紹介。キャラクターは全部で12種類あり、今のユーザーに一番合ったクピがカスタマイズされて表示されるという。
コンパスサービスの根底にあるのは、GFOから一方的に情報配信するサービスではないということだ。まちの利用者からもまちに対していろいろな情報を投げかけてもらうことで、自分だけにカスタマイズされた情報を得ることができる。また、より多くの人が参加できるように匿名型のユーザー登録性を採用。この匿名IDを利用することにより、デジタルサイネージ端末やユーザーのスマートフォンなどが連携し、ユーザーのアクティビティをまちに学習させ、ユーザー同士が情報を共有することができるコミュニケーションツールとして機能する。つまり、まちに訪れる人がより能動的にまちとかかわることができるのがコンパスサービスの特長となる。
なお、例外的に、グランフロント大阪ショップ&レストランの会員カード「GFO OSAMPO CARD」とナレッジキャピタルの「ナレッジサロン」の会員カードのみ、買上店舗やサロン来訪履歴など一部情報を連携するという。
「知る」「つながる」「参加する」の3つのメニューを用意
「まちツイ」「まちトモ」などスマホ特有の機能も提供
日々変化するまちにいる人の行動を記録することで、GFO内の人のアクティビティや関係性を“見える化”することが可能だ。そうすることで、GFOを訪れる人はまちの多様性を認識でき、気付かなかった発見や感動が生まれ、新しいアクションにつなげることができる。
コンパスサービスへのユーザーからのアクセスとしては、「知る」「つながる」「参加する」の3つのアプローチを用意。来街者は、コンパスタッチの画面右側にあるメニューをタッチすると、3つのメニューが表示される。また、同アプリは、スマートフォンのコンパスアプリでも確認できる。
「知る」では、店舗施設の検索、UMEGLE BUS(エリア巡回バス)の現在地情報やUMEGLE CHARI(レンタサイクル)の貸出情報を閲覧可能だ。バスの情報をリアルタイムに提供することで、バス停での待ち時間軽減に役立てることができる。
また、「参加する」では、イベントの一覧表示、利用可能クーポンの一覧表示、ユーザーのコンパスサービスの利用状況に応じて獲得できる「トロフィー」を表示できる。クーポンについては、アプリ利用者であれば画面を店頭で提示すればよく、デジタルサイネージ利用者もQRコードを読み取ることにより、店舗で利用可能な機能を提供する。
トロフィーでは、初めてコンパスタッチにICカードをかざすと「ねぎトロフィー」が表示されるが、何度もまちを訪れてタッチし続けると「大トロフィー」を獲得できるなど、サービス開始当初は32のトロフィーを設定。将来的には、集めたトロフィーに応じてまち側からのイベント優待などのインセンティブを付与し、まちを楽しんでもらう動機づけとする予定だ。
さらに、「つながる」では、街の公認コミュニティ、ソシオ及びその代表者であるソシオキャプテンの紹介、ソシオイベントに対するフィードバックをコンパスサービスにより集計できる「アンケート機能」を提供する。
また、スマートフォンでは、これらのメニューを閲覧できることに加え、サイネージにはない文字入力機能があるのが特徴だ。同アプリでは、コンパスサービスの中でTwitterのように、自らのコメントを投稿することができる「まちツイ」、コンパスサービスを通じて出会った仲間の友達登録が可能な「まちトモ」といった機能を提供する。また、まちトモ同士でのクーポンや情報のシェアも行える。
なお、コンパスサービスは、電通国際情報サービスのソーシャルシティプラットフォーム「+fooop!(フープ)」を活用している。One to Oneのレコメンドを実現させるエンジンとしては、「ペルソナ判別エンジン」と「レコメンドエンジン」を活用。ペルソナ判別エンジンは、コンパスサービスの利用履歴、購買履歴等のライフログをもとに、1人ひとりの趣向やライフスタイルを判別するシステムとなる。また、レコメンドエンジンは、判別したペルソナと、来街者の位置情報、来街目的、同行者、天候など、さまざまな環境や情報をもとに、「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」のおススメコンテンツを届けるという。
2013年秋にはまちにおける関係性を見える化した
「街内ソーシャルグラフ」の提供も検討
2013年秋には、一歩進んだサービスとして、「街内ソーシャルグラフ」の提供を検討している。街内ソーシャルグラフは、まちにおける関係性を見える化したものであり、自分を中心として、GFOにおけるコンテンツ、他のユーザーとの関係性をゆるやかに表現可能となっている。また、街内ソーシャルグラフによって、例えば、“自分と同じお店に「いいね!」を何回もしているユーザー”とまちトモ(友達登録)になってみたり、”同じクピのユーザー”がいいね!しているお店に足を運んだり、新たな気づきと交流を促すことが可能になると考えている。街内ソーシャルグラフの提供には、一定量のユーザー・コンテンツ・ライフログが必要となるため、開業後に開発期間を経ての導入を予定している。
また、デジタルサイネージ端末を活用したスタンプラリーのサービスなども検討していきたいとしている。
コンパスサービスのメインターゲットとしては、「GFO OSAMPO CARD」の利用者を想定しており、開業後は現地でのキャンペーンなどを展開していく。システム的には100万ユーザーまで利用可能なため、それを目指していきたいということだが、「このサービスはどれだけ多くのユーザー数を獲得するかではなく、どれだけユーザーに深くご利用頂けるかで評価していただくものと捉えているため、4月26日の『まちびらき』(開業)以降もその観点でサービスを常に向上させていきたいと考えております」と明壁氏は目標を語った。