2013年5月29日9:30
世界のICカードのプロジェクトは1990年代に数多く立ち上げられた。過去のIC電子マネーの国際的なプロジェクトとしては、“Visa Cash”や“Mondex”(Master Card)、“プロトン”(ベルギー)が存在した。
一方、IC電子マネーのナショナルプロジェクトとしてドイツの“ゲルトカルテ”やシンガポールの“NETSマネー”、デンマークの“ダンモント”、スイスの“キャシュ”(Cash)、オランダの“チップニップ”、フランスの“モネオ”、 タイの“マイクロキャシュ”、マレーシアの“Pパース”、南アフリカの“V-Cash”などのIC電子マネーが注目を集めていた。
また、国内でも“スーパーキャシュ”など独自のIC電子マネープロジェクトが行われていた。
アメリカでは、EFTバンクPOSネットワークの統括会社であるMACのIC電子マネーやカナダの“eXACT”などが独自の試みを行っている。
VISAは1996年7月~8月に開催された“アトランタオリンピック”で“VISAキャシュ”の大々的なデモンストレーションを展開。1997年10月にはVISAとMasterCardがニューヨーク市の中心部マンハッタンにおいて、“VISAキャシュ” と“モンデックス”の「マンハッタントライアル」と呼ばれる共同の実証実験展開。しかし、ユーザや加盟店などからの評価を得ることはできなかった。
ドイツの“ゲルトカルテ”やオランダの“チップニップ”、スイスの“Cash”などは自国で発行されているバンクカードのほとんどにIC電子マネー機能を搭載することに成功したものの、銀行、加盟店の両者における“IC電子マネー”の導入コストやオペレーションコストの負担の思いの外の大きかったことや、消費者にとっても“コイン”(硬貨)を上回る格別のメリットを感じられなかったといわれている。
1990年代の初めから中頃にかけて欧米や日本、アジアで注目を集めたプロジェクトは、小額決済の割に使い勝手の悪さや高コストなどが嫌われ、ドイツの“ゲルトカルテ”やシンガポールの“NETSマネー”などの一部を除いて、日本のIC電子マネープロジェクトを含み、その多くが姿を消している。
書籍「世界の電子マネー・プリペイドカード市場要覧」では、過去の電子マネーのプロジェクトを振り返るとともに、IC電子マネーとして現在も発行されているゲルトカルテ(ドイツ)、Moneo(フランス)、NETS(シンガポール)といった世界のIC電子マネーの動向を1章で紹介している。