2013年10月25日8:00
カード不要のポストペイ型電子マネー「おサイフくんQUICPay」
簡単・手軽なサービスで若年層の利用を後押し
トヨタファイナンスの「おサイフくんQUICPay(クイックペイ)」は、クレジットカードがなくても携帯電話やスマートフォンで支払いが可能なポストペイ型の電子マネー。利用者は、同サービスに簡単に申し込むことができ、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、ショッピングセンターなどにおいてカードレスで決済が可能。また、利用に応じてポイントが貯まるのも特徴だ。
年会費無料でWebから簡単に申し込み可能 コンビニやガソリンスタンド等で日常的に利用できる
「おサイフくんQUICPay」はトヨタファイナンスが2008年から展開するサービスである。カードを発行せず、ユーザーは「おサイフケータイ」搭載の携帯電話やスマートフォンを利用した「QUICPay」により決済を行う。 利用者は、「おサイフくんQUICPay」に申し込み、QUICPayをインストールしたおサイフケータイを店舗の読み取り端末にかざすだけで、スピーディーな支払いが可能だ。後払い式の電子マネーとなるため、会員はチャージの手間を省くことができる(支払いは口座振替)。 1回の決済額は2万円までで、利用限度額は一律10万円に設定。利用者は、Webサイトや携帯電話、スマートフォンから入会申し込みを行い、最短5日でサービスが利用可能だ。トヨタファイナンス 加盟店部 東京室 市場開発グループ グループマネージャー代理 塩島徹也氏は、「入会の方法が簡単であり、PCや携帯電話、スマートフォンなどを利用してそのままお申し込みがいただけるのが特徴です」と笑顔を見せる。 実際のところ利用状況は好調で、稼働会員数は約4,000人。利用回数は月17件となっており、日常的によく利用されている傾向が見受けられる。 「弊社発行のQUICPayの中でも『おサイフくんQUICPay』はヘビーユーザーが多いです。若者の利用としてコンビニエンスストアが多いので、身近なところで使う場面がマッチしているようです。因みに、『おサイフくんQUICPay』の平均利用単価は1,100円と高水準です」(塩島氏)
インターネットや公共料金の支払いにも利用可能 貯まったポイントは他社のポイントやマイルに交換可能
QUICPayによる街中の支払いに加え、インターネットショッピングや公共料金の決済、さらにはETCカードの発行も可能で、利用の都度、ポイントも付与される。例えば、インターネットショッピングでは、16ケタのカード番号と有効期限を利用して支払いが可能だ。また、電気、ガス、公共料金、放送といった月々の引き落としに設定することができるという。さらに、トヨタ系の会社らしく、ETCカードの発行にも対応している。
ポイントについては、1,000円の利用で5ポイント付与。貯まったポイントは、「PeXポイント交換コース」もしくは「商品交換コース」のいずれかに交換可能だ。他社のマイルやポイントに交換できる「PeXポイント交換コース」では、200ポイントから、100ポイント単位で交換が可能だ。例えば、おサイフくんQUICPayポイント200ポイントをPeXポイント2,000ポイントに交換できる。また、「商品交換コース」では、1,000ポイントから希望の商品と交換可能だ。 トヨタファイナンスのクレジットカード「TOYOTA TS CUBIC CARD」は、トヨタ車のユーザーがメインターゲットとなっている。そのため、30代以降の男性がカードホルダーの中心だ。また、20代の後半でも車離れと言われているなか、トヨタ自身も若者の利用を増やすことが喫緊のテーマとなっている。 「弊社の会員はトヨタ車のユーザーが中心ですが、自動車のユーザー以外を開拓する上で有益な仕組みとして電子マネーに着目しました。『おサイフくんQUICPay』のターゲットは20代から30すぎの若者となり、クレジットカードを申し込むのに抵抗がある方にも便利にご利用いただければと考えています」(塩島氏)
JCBとともにQUICPayの普及に積極的に取り組む 認知度の高まりとともに年々利用は増加
また、トヨタファイナンスでは、これまでQUICPayの発行に積極的に取り組んできた。サービス開始当初はクレジットカードとの一体型カードの自動付帯、子カード型、モバイルQUICPayなどを展開し、アピタ、スギヤマ、アマノといった大型店舗の加盟店で5%キャッシュバック特典などを実施することで、カードの利用促進につなげてきた。
トヨタファイナンス カード本部 カード企画部長 高野克之氏は「弊社として、名古屋地域や新規入会者向けのキャンペーンは継続的に続けてきましたので、年々、QUICPayの利用率が高まっています。また、ジェーシービー(JCB)様も積極的に告知しているため、最近では全国的な認知も進んできました」と説明する。 QUICPayの利用促進については、JCBと連携して進めている。例えば、毎月9日にQUICPayを利用すると、抽選で100人に1人、利用料金が無料となる。また、毎月19日にイオングループでQUICPayを利用すると、利用金額の5%分をキャッシュバックしている(2014年3月19日まで)。さらに、JCBは読売巨人軍、Jリーグのスポンサーとして、QUICPayの広告宣伝活動を強化しているため、「JCBが展開するマスプロモーションと絡めながら、弊社独自のキャンペーンを実施して、販促効果を高められるようになりました」と高野氏は成果を口にする。 また、トヨタファイナンスはJX日鉱日石エネルギーと提携し、ENEOSのサービスステーションで利用可能な「ENEOS CARD」を発行しており、約1,600のENEOSのサービスステーションでもQUICPayが利用可能だ。さらに、エッソ・モービル・ゼネラルの新しい「Speedpass(スピードパス)」となる「スピードパスプラス」はQUICPayをベースとしており、紐付対象カード会社として先行グループにいるそうだ。
スマートフォンアプリと連携した取組を検討 「おサイフくんQUICPay」により若年層の利用を高める
現状、おサイフくんQUICPay」については、インターネットのアフィリエイトなどの仕組みを活用し、会員を獲得している。 今後は、スマートフォンアプリから利用明細を簡単に閲覧できる仕組みなどを整えていく方針だ。高野氏は、「弊社のスマートフォンアプリの初動を見ると、何回も繰り返し見ていただいている傾向があります。今後は、情報配信を含め、会員サービスと加盟店紹介を両輪で行っていきたいです」と力を込める。また、NTTドコモもiPhoneに対応したように、スマートフォンを取り巻く環境も日々、変化を見せているが、「今後のおサイフケータイを取り巻く外部環境がどうなるのかを見極め、「おサイフくんQUICPay」の次の展開を考えていきたい」(高野氏)としている。
「これまで生活や金融、クレジットカード比較などのWebサイトでアフィリエイトにより会員を獲得してきましたが、掲載ジャンルを趣味やスポーツなどに広げて、「おサイフくんQUICPay」の良さをさらにPRしていきたいです。また、スマートフォンサイトからの会員獲得については、現在はバナーをクリックして広告を見る習慣がそれほど浸透していませんが、今後は伸びると思いますので継続して行っていきたいです」(塩島氏) 会員数としては、常時1万人の稼働を目指している。高野氏は、「『おサイフくんQUICPay』の若者を誘導する思想は、サービスの開始時から変わりません。今後は、如何にトヨタファイナンスとして自動車販売に貢献するかが存在意義でもありますので、若者を獲得してディーラーに送客するテーマを形にしていきたいです」と意気込みを語る。 クレジットカードによる小額決済は増えてはいるものの、まだまだ現金には遠く及ばない。今後、国内で非現金化を促進させていくためにはQUICPayのようなポストペイ型の電子マネーの普及は欠かせないだろう。その意味でも「おサイフくんQUICPay」の果たす役割はますます大きくなりそうだ。
取材(2013年9月):ペイメントナビ編集部 ペイメントナビゲーター 池谷貴