2014年2月19日8:00
国際ブランドの資料によると、クレジットカード等、ペイメントカードの不正利用にかかわる犯罪は1980年代から現在に至るまで、大きく変化している。
1980年代は、紛失・盗難カードの悪用が一般だったが、1990年代はチームによるスキマーなどの機械を用いた被害が多くなった。特に、1990年後半には磁気カードのセキュリティの脆弱性を見抜いたカード犯罪者達によるスキミングと磁気カードの偽造による不正行為が増えている。
2000年代は、ローカル犯罪シンジケートによるID窃盗やフィッシングの被害が多くなっている。そして、現在は、国際犯罪組織によるカードを提示しないCNP(Card Not Present)やATM不正などが目立っている。
日本では、1997年から日本クレジット協会(旧日本クレジット産業協会)がカード不正利用の統計データを発表するようになったが、1997年の188億円から2002年までカード被害額が増大している。しかし、その後は、カード業界の警察等と連携した取り組みや、2001年のカード犯罪防止法の成立など、業界を挙げての努力により2012年度は24億円と、ピーク時のおよそ15%まで不正利用の被害は減少している。
ただし、同データは他国のイシュアが発行した偽造カードの数値は含まれておらず、国内でも持ち込みカードによる一定の不正被害が出ていると言われている(数値は非公表)。
海外では、磁気カードのスキミングや偽造被害などを受け、フランスが1990年代に行っていた独自規格のICカードの成功などから、ペイメントカードのEMV ICカード化とPOS・決済端末のIC化が2000年頃からスタートしている。EMVとは、EuropayのE、MasterCardのM、VisaのVの3つの頭文字から取ったものとなる。欧州では、32カ国が加盟するSEPA(Single Euro Payments Area)によるICカード化が進められ、イギリス、フランス、デンマーク等では100%近いICカード化率を実現している。東欧の一部の国に遅れが出ていると言われているが、リアル加盟店での不正利用対策において、大きな成果をもたらした。
その一方で、カード大国の米国は、EMV ICカードの発行が1,500万枚程度に留まっており、犯罪者の不正利用のターゲットとなっている(参考記事)。実際、米国・ニルソンレポートのデータによると、2012年の米国のカード不正は世界の47.3%を占めているそうだ。
そんな中、米国でEMV ICカードの普及に弾みがつくと期待されているのが「ライアビリティシフト」の導入だ。Visaでは、ガソリンスタンドの自動給油機をのぞき、ICカード対応のPOS・決済端末を未導入の加盟店におけるカード偽造の債務責任がアクワイアラに課せられるようになるライアビリティシフトが2015年10月以降行われると発表した。また、MasterCard、American Express、Discover、Dinersも同様のライアビリティシフトの導入を予定している。これにより、米国をはじめ、磁気カード決済が主流の世界各国でEMV ICカード化が進むきっかけになると、国際ブランドは期待している。
書籍「世界のオンライン決済・不正利用対策市場要覧」では、世界のカード不正利用の現状について紹介している。また、ペイメントナビ編集部では、2014年3月25日に無料セミナー「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2014」の開催を予定している。