欧米のエンベデッド・ファイナンス (1)エンベデッド・ファイナンスの歴史

2024年7月17日8:00

欧米や日本において、大きな注目を集めているエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance、組込金融)について、イギリスのエンベデッド・ファイナンスはのプロバイダーであり、イネーブラーであるWeavrを含め、次の5つのテーマに基づいて、エンベデッド・ファイナンスの欧米での最近の動向について紹介してみたい。

和田文明

■連載
1
、エンベデッド・ファイナンスの歴史
2、エンベデッド・ファイナンスとFinTechBaaSBanking as a Service
3、アメリカのエンベデッド・ファイナンスは
4、エンベデッド・ファイナンスの三つの役割
5Weavr(ウィーバー)のエンベデッドファイナンスクラウド

欧米や日本において、近年FinTechであり、BaaS(Banking as a Service)でもあるエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance、組込金融)が大きな注目を集めている。このエンベデッド・ファイナンスは、従来の金融機関主導のサービスとは異なり、ECサイトやSaaS(Software as a Service)ツールなど、金融とは一見関係のないサービスにシームレスに金融機能を組み込むことで、ユーザーに利便性と新たなCX(顧客体験)を提供するものである。こうしたエンベデッド・ファイナンスの普及が欧米で加速している背景には、(表)のような理由が挙げられる。

(表)欧米でエンベデッド・ファイナンスが加速している背景

ユーザーニーズの変化

・顧客は、時間や場所に縛られず、必要なときに必要な情報やサービスにアクセスできることを望んでおり、従来の銀行窓口やATMでの取引は、こうしたニーズに合わなくなっている

・顧客が普段利用しているサービスの中でシームレスに金融取引を行えるようにすることで、利便性の向上を図れる

デジタル技術の進化

・API(Application Programming Interface)やクラウドテクノロジーなどの進化により、金融機関以外の企業でも容易に金融サービスを自社のプラットフォームに組み込むことが可能になり、エンベデッド・ファイナンスの導入へのハードルが下がっている

競争の激化

・欧米の金融業界では、競争が激化し、従来型のバンキング業務だけでは差別化が難しくなり、新たな収益源の創出が求められている

・銀行などの金融機関が新たな顧客層にアプローチし、収益源を多様化するのにエンベデッド・ファイナンスは役立つ

規制緩和

・欧米を中心に、金融サービスに関する規制緩和が進んでおり、Fintech企業やその他の企業が金融サービスを提供することがより容易となり、エンベデッド・ファイナンスの普及を促進する環境が整ってきている

パーソナライゼーション

・FinTechにより、顧客の利用履歴や属性データに基づいて、よりパーソナライズされた金融サービスを提供することができるようなった

・従来の画一的な金融サービスでは、パーソナライゼーション実現が難しいかった

各種資料より作成

<参考文献・資料>
・Embedded Finance: When Payments Become An Experience、Wiley
・Embedded Finance and Banking-as-a-Service Report 2023、The Paypers
・U.S. Embedded Finance Market、Grand View Research、Inc.
・2024 The Embedded Lending Opportunity、VISA
・エンベデッド・ファイナンスはの衝撃、東洋経済新報社
・BNPL 後払い決済の最前線、金融財政事情研究会
・キャッシュレス決済ビジネスハンドブック、中央経済社
・Embedded finance – a buyer’s Guide、Weavr
・Embedded finance: Bringing value into focus、Weavr

(1)エンベデッド・ファイナンスの歴史

欧米のエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance、組込金融)シリーズの第1回目は、まずエンベデッド・ファイナンスの1950年代からこれまでの歩みについて簡単に触れておきたい。

エンベデッド・ファイナンスとは、金融サービスを非金融のサービスに統合することを指し、具体的には、銀行や金融機関が非金融のプラットフォームと提携して、顧客体験(CX)をシームレスで便利なものにするために、決済や送金、貸付、保険などの各種金融プロダクツを組み込むことを意味するものである。

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