2010年8月1日 22:07
EC決済、モバイル決済の最新トレンドは?
インターネット決済市場は毎年10%程度の成長が続いていると言われる。PCのWebサイトやケータイサイトから商品やサービスを購入・利用するユーザーは増え、クレジットカード、デビットカード、IC電子マネー、ネットワーク電子マネー、コンビニ決済、インターネットバンキング、Pay-easy、携帯キャリア決済、ISP課金、PayPalなど、数多くの決済方式が用いられるようになった。最近では、3-Dセキュアや属性情報などによる認証方式の採用、インターネット決済代行事業者が非保持サービスを打ち出し、セキュリティ技術は向上しているが、その一方で海外からの不正アクセス増加により、カード会員情報が流出する事件も相次いでいる。本項では、EC決済、モバイル決済の最新トレンドや各決済方式の仕組みを紹介する。
■ 各種決済の契約形態
EC決済を行う加盟店と決済事業者との契約形態には「直接加盟店契約」と「包括加盟店契約」がある。
直接加盟店契約はクレジットカード、金融機関、電子マネー、コンビニ決済などに関して、サービス提供者との契約をそれぞれの事業者と個別に行う。売上代金の入金は各事業者から個別に行われる。
一方、包括加盟店契約はサービス提供者との契約を決済代行事業者が代行して行う契約形態だ。審査、加盟店契約、決済・入金処理までを一括して決済代行事業者側で行う。例えば、クレジットカードの場合、包括加盟店契約を利用すればVisa、MasterCard、JCB、AmericanExpress、Dinersの国内で利用できるブランドの取り扱いが可能になる。売上代金の入金は契約した決済代行事業者から一括して行われる。
中小のEC加盟店にとって、各事業者と直接契約するのには非常に手間がかかるため、決済代行事業者を利用した包括加盟店契約を採用するケースが多い。最近ではPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)を取得している多くの決済代行事業者が、加盟店側でカード会員情報を所有しない「非保持サービス」(画面遷移型)導入を強く推奨している。
■ マーケティング活動の実施
EC市場は伸長していると言われているが、長くビジネスを展開している企業の中には、売上の伸びが止まっているところも少なくない。今後は自社サイトを利用する顧客を如何に囲い込むかが重要になるだろう。大手ショッピングモールや大手通販サイトなどでは顧客囲い込みの手段として自社で独自のポイントサービスを展開しているが、中小規模の加盟店が独自ポイントを行うとなると非常に手間がかかる。そんななか、スマートリンクネットワークではネットマイルと提携し、中小規模の加盟店向けにポイント支援を行うサービスを展開している。
J-PaymentはEC加盟店などの販促を支援するマーケティング事業を行っている。最近ではiPhoneなど、スマートフォン向けのアプリケーションに対応させることで、顧客の利便性を図る企業も増えている。
■決済代行事業者はトータルサービス提供の時代?
2010年は決済代行事業者がマーケティング支援企業や物流会社と提携して、決済から物流支援までをトータルに提供するサービスのリリースが相次いだ。デジタルガレージと日本通運は合弁会社「NEXDG」を設立。eコマースサイトの立ち上げから運用に必要なフルフィルメント業務のシステムをASPで提供し、さらにインターネット・メディアなどを活用した集客・販促支援のサービスから物流まで一貫したサービスを展開している。ソフトバンク・ペイメント・サービス、ゼウスなどは物流会社と提携し、決済から配送まで一貫したサービスの提供で競合他社との差別化を狙う。
■中国など海外進出支援事業も活発に
国内市場だけではなく、海外で自社の製品を販売する動きも活発化している。その1つが中国で、各社が積極的な動きを見せる。6月1日にはヤフー(Yahoo! JAPAN)とアリババグループの淘宝が双方のインターネットサイトの接続を開始。日本の「Yahoo!ショッピング」の取扱商品を、淘宝網内に新設する「淘日本(タオジャパン)」で購入することが可能となった。「淘日本」で日本の商品を中国に販売する場合は「Alipay国際決済」を使用している。
SBIベリトランスは銀聯決済専用のWebサイト「佰宜杰.com(バイジェイドットコム)」を展開。J-Paymentは中国に支社を設立し、言語、物流、決済など、中国に進出する企業を支援している。ソフトバンク・ペイメント・サービス、GMOペイメントゲートウェイは、中国でもっとも利用されているEC決済の方式である「Alipay(アリペイ)」と契約している。インターネットペイメントサービスは銀聯、Alipayの両サービスを自社パッケージで提供する国内初の企業となった。
ただし、中国向けのビジネスについては緒についた段階であり、ある家電量販店の担当者が「中国のネット利用者は中産階級が中心のため、当初の期待ほどは売上が伸びていない」とコメントしているように、今後数年間は辛抱が必要かもしれない。
一方、PayPal(ペイパル)は国内企業が海外展開をする際に有効な決済手段として積極的にPRを行っている。
■セキュリティ対策(消費者側)
通常、クレジット決済の場合はカード番号と有効期限で決済を行うが、その場合、たとえばカードを第3者に盗まれれば簡単に決済ができてしまう。その課題を解決したのが「3-Dセキュア」だ。これはネットショッピングにおいて、独自のパスワード認証を取り入れることにより、本人確認を行う仕組みである。ビザ・ワールドワイドが「VISA認証サービス」、マスターカード・ワールドワイドが「SecureCode(セキュア・コード)」、ジェーシービーが「J/Secure(ジェイセキュア)」の名称で展開している。
また、顧客の属性情報やカード券面情報(セキュリティコード)による認証も有効な手段として採用している事業者が増加している。
■セキュリティ対策(加盟店側)
ここ数年、加盟店のECサイトからカード会員情報が漏洩する事件が相次いでいる。そのため、ECサイトなどの加盟店側で、カード会員情報を所有せず、決済代行事業者などに預ける「非保持サービス」(画面遷移型)を導入するケースが増えている。決済代行事業者と加盟店との契約形態も「加盟店がカード会員情報を保持するケース」「加盟店がカード会員情報を処理するが、その履歴を削除するケース」「加盟店側でカード会員情報を処理しないケース」などさまざまだ。
なお、加盟店が決済代行事業者にカード会員情報を委託した場合、ペイメントカードの国際セキュリティ基準であるPCI DSSの取得に必要な要件が緩和されるメリットもある。
また、デジタルガレージ イーコンテクストカンパニーでは不正と思われる取引パターンをルールとして事前に登録することで、それに合致する取引を検知するとリアルタイムに取引停止をし、事業者に通知する「e-contextカード不正対策サービス」を提供している。
EC決済、モバイル決済の最新トレンドと決済手段について(下)
※参考サイト