2014年2月27日8:00
モバイル送金の新ビジネスモデル
☆☆☆ 送金サービスはモバイルへなびく ☆☆☆
Mobile Money Transfer
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則
●送金サービスのニュートレンド
スマートフォンやタブレットの普及がすすみ、送金サービスのビジネスモデルが激変している。
送金サービスの古典的なモデルは、ウェスタンユニオンやマネーグラムに代表される、窓口へ出かけて送金や受金するウォークイン型である。またの呼び名はエージェント型。
銀行送金だと数日かかるものを数時間に短縮し、銀行口座がなくても送金できるというメリットで、世界中に送金窓口を拡大した。欠点はわざわざ窓口へ出かけなければならないこと。待ち時間があること。ペーパーワークという負担があるということだった。
そこにインターネットが登場し、オンライン型の送金モデルが生まれた。自宅やオフィスからWebで送金。わざわざ窓口に行く必要がない。待ち時間がなく、キー入力ですむ。という利便性がうけてシェアを拡大した。
このビジネスモデルで最も成功したのは、E-mailでの送金を可能にしたPayPalである。送金資金は銀行口座やデビットカード、クレジットカードやPayPal口座残高から引落とす。受金者はPayPal口座から銀行口座へ振替えて現金を引出す。受金者にプリペイドカードを配布して出金するという方法を採用した会社もある。
ところが携帯電話の普及で、もっと個人の生活行動に密着した送金サービスが可能になった。デスク上の固定型パソコンから、モビリティの高い携帯電話へ。いつでも、どこからでも、送金できる。国内の個人間送金や国際送金も簡単だ。有名なのはケニヤで誕生したM-Pesaである。これはE-mailではなく、携帯電話番号へ送金するビジネスモデルだ。
さらに現在では、携帯電話が進化したスマートフォンやタブレットが送金サービスの変容を加速している。今回はスマートフォンやタブレットを利用した、最新送金ビジネスモデルについてレポートする。
●送金に新たな顧客体験を創造
携帯電話からスマートフォンやタブレットに切り替わって、どんなサービスがうまれたのか。GoogleのWallet送金、Squareの革新的なモバイルE-mail送金、レミトリーのコミュニケーション送金、そして英国バークレイズ銀行のモバイル送金を事例にとりあげよう。
これらに共通しているのは、国内送金も国際送金も基本は無料ということである。どこで儲けるのか。それは個社の提供しているサービスに依存するところが大きい。
Googleは広告収入の拡大。Squareは加盟店への支払方法の拡大。レミトリーは送金サービスしかないため、顧客基盤を拡大し、有料の送金へのアップセルをめざす。バークレイズ銀行のPingitは、口座活性化と銀行商品のクロスセルで儲けようとしている。
スマートフォン送金で送金者と受金者を特定させるキーは、E-mailアドレスと携帯電話番号だ。GoogleはGmailを柱にしたE-mailアドレスを活用。SquareもユニークなE-mail活用で両者を特定している。レミトリーとバークレイズ銀行は携帯電話番号が本人特定のIDとなっている。E-mailアドレスは、スマートフォンだけでなく、パソコンやタブレットでも確認できるという優位性がある。
今回のレポートで強調したいのは、送金サービスの課題をコミュニケーションの可視化で解決しようとしていることである。いつ届くかわからない。本当に届いたのかわからない。という不安を解消するサービスを提供している。
送金時や受金時の通知サービス。画像やイラストを添付できるパーソナルなメッセージ機能。送金のやりとりを可視化できる日本のLINEのようなサービス。これらは、いままでにない送金サービスの付加機能だ。付加機能でありながら、ビジネスモデルの優位性を決める重要な要因でもある。送金は送り手と受け手をむすぶ、お金を通じたコミュニケーション、ということを忘れてはならない。