2014年9月8日8:00店頭のショールーミング化で通販サイトの売上アップを目指すNFC活用によりオフラインからオンラインへの送客を強化
工具・資材の通販サイト「DIYツールドットコム」を運営する大都では、大阪・難波に専門店「DIY FACTORY OSAKA」をオープンしている。「単純に商品を販売するだけならばネットの方が儲かる」と同社 代表取締役 山田岳人氏は説明するが、「リアルにはネットにはない価値がある」そうだ。DFO店舗では、通販サイトよりも高い金額で一部の商品を販売。あえてショールーミングさせることで、売り上げを伸ばしていく狙いだ。また、体験型イベントの開催やNFCタグを活用したネットへのスムーズな誘導など、オムニチャネルの取り組みを積極的に行っている。
ネットではできないことをリアルで展開へ
通販サイトの方がリアルよりも安価に購入可能
大都では、2002年から資材や工具の通販サイトを開設。ネットでは、80万にも上る商材を取り扱っている。山田氏は、「通販サイト開設時に比べ、eコマースの市場は大きく伸びており、今後も成長は続くと思いますが、競争は激化しています。そのため、何か新しいことをやろうと考えたときにリアル店舗が思い浮かびました」と話す。
ただ、工具や資材を単純に販売するだけであれば、「リアルよりもネットの方が儲かる」。「だったら、ネットではできないことをリアルでやろうと考えました」と山田氏は笑顔を見せる。
その1つが、“メーカーの抱えている課題を解消する場所にする”ことだ。DFOでは、月額数万円の出展料をメーカーから徴収している。説明会には80社の参加があったというが、現在1年契約で25社が出展。メーカーは店内のスペースを自由に活用可能だ。山田氏は、「現状、賃料は協賛企業からの出展料でカバーできています。また、1年後に出展を希望される企業も多数いらっしゃいます」と成果を口にする。
店内には、工具や資材が所狭しと並べられているが、提供するスペースには限りがあるため、各社が告知できる商材は限られる。DFO店頭でも商品を購入することは可能だが、通販サイトであればさらに多くの商材を安い価格で購入することが可能だ。
“ショールーミングをしてください”がコンセプト
ワークショップ開催でダイレクトに商品の魅力を訴求
「弊社は“ショールーミングをしてください”がコンセプトです。ネットでの販売を伸ばすために、リアルは重要です。特に、“オンタイムで購入に結び付ける”強みは、リアルがネットに勝っています。現状、梯子などの持ち帰りにくい商品は、店舗で見てネットでご購入いただいております」(山田氏)
また、DFOでは、店内の作業スペースを利用して、定期的に「ワークショップ」を開催。実際に商品を手に取って、工具や資材の使い方を体験してもらうことで、ダイレクトに商品の良さを伝えている。イベントでは、出展企業の担当者が実際に顧客と触れ合うこともできるため、顧客の評価を肌で感じることができ、新たな商品開発にもつなげることが可能だ。
「Facebookのファンページは、通販サイトとDFO店舗の両方を運営していますが、DFOの方が反響も多く、共感いただいております。DFOのファンページでは、イベント情報などを随時掲載しており、実際に現場で体験した方は「いいね!」を押していただくことも多いです。今後は、リアルで行っている体験イベントのコンテンツをネット上で展開していきたいですね」(山田氏)
NFCを活用してダイレクトにネットに接続へ
体験型イベントでのNFCパネル活用も検討
ただし、山田氏は課題も口にする。「顧客は買い物に来て、需要が喚起されたタイミングで購入したいと考えますが、そこからネットに誘導して即座に決済していただくにはハードルがあります」(山田氏)。また、顧客が、店舗で説明を受けても自宅に戻る頃には、説明した商品への購買意欲が失われる可能性がある。
そこで考えたのは、NFCタグの活用だ。DFOでは、利用者が店舗に来店し、目当ての商品を見つけた場合、店舗に設置した掲示物をスマートフォンでかざすと、当該商品や関連した商材を紹介したサイトに誘導される仕組みを導入している。NFCタグからは、ダイレクトに商品ページに飛ばすことが可能だ。また、メーカー単位での絞込み結果が表示される場合もある。
現状、店舗で利用されているNFCタグは50枚程度。システムを提供したアクアビットスパイラルズ 代表取締役CEO 萩原智啓氏は、「まだまだユーザーがかざすアクションになじみがないため、それをどう認識させて使っていただくかが僕らの課題です。この50枚を100枚200枚と増やしていき、店内のいたるところからネットにつながる“コテクティッド・ストア”として定着させたい。時間はかかるかもしれませんが、将来的にはリアルからネットへの送客の主流になる確信があります」と意気込みを口にする。
また、仮に店舗でネットに誘導できたとしても、氏名、住所、クレジットカード情報などのネット登録が必要だ。そのため、顧客情報が予め入力されており、IDとパスワードのみで簡易に決済可能な大手ショッピングモールへの誘導も検討している。
DFOでは、レジ前に設置したタブレットにアクアビットスパイラルズの「ダイナピック」を導入。利用者は、タブレット横のプレートにスマートフォンをかざすだけで店舗のWebサイトやFacebookページを開いたり、同社の楽天サイトで商品を購入することもできるようにした。このダイナピックはNFCだけでなくiOSの機能「Air Drop」にも対応しているため、NFCが搭載されていないiPhoneやiPadでもかざすだけでWebへ誘導することが可能だ。
山田氏自身、NFC活用の可能性をすでに見出している。「商業施設で行った出張ワークショップの際、行列ができる受付時間やお子様が作業されている間、親御さんは時間を持て余しています。例えば、そこにNFCを付けたパネルを設置し、Webサイトに誘導させることができれば、待ち時間に商品の良さをご理解いただき、購入につながる可能性があります」
10月に「モノ売りからコト売り」の通販サイトへ変更
ネットとリアルそれぞれの良さを融合
大都では、10月2日にWebサイトをリニューアル。新サイトでは、「モノ作りからコト売りに変更するという。山田氏は、「例えば、商品の検索軸も『ドライバー』から、『締める』、『切る』といったカテゴリーから探せるようにする予定です」と説明する。
同社では、今後もネットとリアルそれぞれの良さを融合させることで、オムニチャネル展開を強化していく方針だ。また、将来的には、DFOに続くリアル店舗の展開も図っていきたいとしている。