2014年12月4日8:00Twitterの「CardSpring」と提携し、メディア事業者を中心にCLOサービスを展開 決済ネットワークを活用し、どの店舗、カードでも利用できるサービスを目指す
TISは、米国でCLO(Card Linked Offer)プラットフォームサービスを提供する「CardSpring」(Twitterが買収)と、日本市場におけるサービス提供に関して業務提携し、カード決済ネットワークを活用したCLOサービスを提供する。従来のイシュア(カード発行会社)を中心に行うCLOサービスとの違いについて、同社に話を聞いた。
加盟店に近い仕組みでCLOを展開へ
米国でCardSpringはファーストデータと連携しサービスを展開
CLOプラットフォームサービス「CardSpring(カードスプリング)」は、デジタルクーポンとクレジットカードの利用情報を連携させ、クレジットカード利用者に現金割引やポイント付与などのインセンティブ提供を行うことができるクラウドサービス(PaaS)となる。CardSpringでは、米国屈指のペイメントプロセッサーであるファーストデータ(FirstData)と連携し、決済ネットワークを活用したCLOサービスを展開している。TIS アドバンストソリューション事業部 アドバンストソリューション事業統括部長 寺本英生氏は、「加盟店に近い仕組みでCLOサービスを提供できるのが特徴です。国内では、まずはメディア事業者等と連携してサービスを提供していきたいと考えています」と話す。
同プラットフォームは、全世界で約4,000万人のユーザーが利用している位置情報を活用したソーシャルネットワークサービス(SNS)のFoursquareなどが採用している。例えばFoursquareではバーガーキングで8ドル以上の支払いを行うと、1ドル割引になるクーポンを配信。利用者はカード番号を入力して、店舗の近くでチェックインするとクーポンが有効になり、後は登録したクレジットカードで決済を行うと割引される。また、あるレストランではカードを登録して、対象店舗でカードを利用すると返金サービスが受けられるサービスを展開。同時に各月・レストランごとの上位利用者ベスト3には金額をバックしている。
加盟店向けの送客サービスを強化したいメディアを中心にサービス提供
カード会社と連携したCLOも同時に進める
CLOを展開する具体的なメリットとして、利用者にとっては登録したクレジットカードで決済するだけで済むため、店舗でクーポンを見せる必要がない。また、加盟店のレジオペレーションも従来と変わらない。TISでは、加盟店向けの送客サービスを強化したいメディア事業者に対し同サービスを提供していく方針だ。メディア事業者は、自社メディアに広告出稿する加盟店向けに、CLOによるデジタルクーポン発行の提案が可能になる。
寺本氏は、「メディアにとっては、どの利用者が、どのクーポンを使ったかという情報をリンクさせることができるため、提供したクーポンがどのように使われたかを基にオファーの変更ができ、パーソナライゼーションによりレコメンドした情報が提供可能です。あくまでも利用者メリットが高い形でサービスを提供し、目指す姿は、どの店舗、どのカードでも使えるサービスとなります」と話し、笑顔を見せる。
すでに国内でも複数のメディア事業者との商談が進行している。例えば、スマートフォンで店舗の紹介を行っており、クーポンを提供している企業は、同サービスが有効であるそうだ。また、CardSpringがファーストデータと提携したように、国内でも主要なペイメントプロセッサーとの連携を進めている。ただ、決済ネットワークと連携したモデルについては、国内ならではの課題もある。例えば、同じ企業でも商業施設のテナントに入っている場合、決済ネットワークが異なるケースもあるからだ。
「TISは、メディア事業者、決済パートナーはかねてからさまざまなつながりがあるので、プラットフォーマーとしてサービスを提供しながら、どういう取り組みができるか考えていきたいです」(寺本氏)
また、決済ネットワークと連携したCLOに加え、カード会社(イシュア)と連携したモデルについても同時に進めており、すでに流通系カード会社と商談が進んでいるそうだ。さらに、POS情報とデジタルクーポンをマッチングすることもできるという。
なお、TISはメディアから受け取ったCLOサービスの成功報酬を決済パートナーとレベニューシェアするモデルとなるため、提携したプロセッサーにとっても新たな収益が確保できるそうだ。
2017年までに50億円の売上を目指す
金融向けのリテール決済ソリューションの1つとしても強化
寺本氏は、「CardSpringが提供するサービスは、米国でも同様のモデルで展開しているサービスはなく、利用が伸びているのが特徴です」と説明する。米国では利用できる店舗も数万店に増えているそうだ。例えば、日本から米国に旅行をする人がクーポンを利用したい場合、ファーストデータの決済ネットワークに接続していれば利用可能だ。
国内でもCLOサービスを展開する企業は複数あるが、「CardSpringが提供するサービスはノウハウも貯まっていますので、そこは差別化になると考えています」と寺本氏は自信を見せる。
今後は、2020年の東京五輪に向け、外国人観光客もさらに増加すると予想されており、メディアや加盟店としても外国人を送客するサービスとして期待が大きいという。具体的なCLOサービスの提供に向けては、TISとCardSpringの仕組みは年内に完成するが、決済ネットワークとの連携に調整が必要となっている。TISでは、スタート当初は慎重に進める必要があるとしながらも仕組み自体は煩わしさがないため、いいオファーを提供できれば、1年後には伸びると考えているそうだ。
TISでは、CLOに関連したビジネスで2017年までに50億円の売上を目指す。同社では、各種決済に対応した基幹システム「CreditCube(後払い方式)」、「DebitCube+(即時払い)」、「PrepaidCube+(先払い)」などに加え、モバイルを利用した決済サービス、マーケティングソリューションなどを集約したリテール決済ソリューションのトータルブランドとして「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」の展開を開始している。「PAYCIERGE」では5年後に200億円の売り上げを目指しているが、トータルサービスの1つとしてもCLOサービスを強化していきたいとしている。