2014年12月24日8:00NFCサービスで採用が進むGemaltoのAllynisトラステッド・サービス・ハブすべてのサービス・プロバイダーに単一の接続を提供し、ビジネスを加速
デジタルセキュリティベンダーのGemalto(ジェムアルト)は日本の3キャリアをはじめ、世界各国でNFC SIMやセキュアエレメント、TSM(Trusted Service Manager)のサービスを展開している。2014年9月には、NFCビジネス向けのターンキー・サービスである「Allynisトラステッド・サービス・ハブ(TSH)」を発表。同プラットフォームはサービス・プロバイダーやモバイル・ネットワーク・オペレーター(キャリア)等に向けに単一の接続を提供することで、モバイルNFCサービスを加速させるという。同社のビジネスについて、モバイル・ファイナンシャル・サービス ヴァイス・プレジデントのWinston Yeo氏に話を聞いた。
主に3つのモバイルペイメントの取り組みを実施
TSHで複数の個別契約の必要性を排除
――まずは、ジェムアルト様のモバイルペイメントの取り組みについてお聞かせください。
Winston Yeo:弊社のモバイルサービスは3つに分かれています。1つは近距離無線通信です。弊社のトラステッド・サービス・マネジメント(TSM)プラットフォームでは、機密性の高いセキュアなアプリケーションを管理しています。2014年9月には、「Allynisトラステッド・サービス・ハブ(TSH)」をリリースしました。
2番目にフォーカスしているのはクラウドベースの決済で、大きく成長しています。現在、メキシコにおいて大きなプロジェクトが動いており、モバイル・ネットワーク・オペレーター(通信キャリア)1社と銀行が2つ絡んでいます。最初はPtoP(Peer to Peer)からスタートしていますが、そのサービスをモバイルペイメントに発展させています。
そして、最後に「ウォレット(Wallet)」です。残念ながら、昨今ウォレットは過剰に扱われています。弊社で扱うウォレットは個人の情報がモバイルアプリケーションに安全に移されるリソースのことを指しています。
この3つの分野であれば、弊社はどのサービス・プロバイダーであろうが対応することが可能です。
――「Allynisトラステッド・サービス・ハブ」についてお聞かせください。
Winston Yeo:TSMは弊社のサービスの1つですが、「Allynisトラステッド・サービス・ハブ」は、セキュアエレメントイシュアとサービス・プロバイダーをお互いにコネクト(接続)させることを指します。これまで銀行は、サービス・プロバイダーとモバイル・ネットワーク・オペレーターとコンタクトしなければいけませんでしたが、複数の個別契約の必要性を取り除くことが可能です。
NFC SIMを利用している場合はもちろん、組込みセキュアエレメント(eSE)、Trusted Execution Environment(TEE)、モバイルアプリケーションの「HCE(Host Card Emulation)」等に関係なく接続することが可能です。また、サービス・プロバイダーは、自社のサービスを展開するためにシンプルな接続方法を求めていますが、小売や鉄道、航空など、銀行以外のプレイヤーであっても利用可能です。さらに、日本や香港で利用されている「FeliCa」にも対応できます。
1年かかるプロジェクトを3カ月に短縮可能に
世界中でシームレスな環境を実現
――コスト削減等、具体的にはどのような効果が見込めるのでしょうか?
Winston Yeo:
通常、9~12カ月かかるプロジェクトの期間が、「Allynisトラステッド・サービス・ハブ」を利用すれば3カ月で設定可能です。業務を大幅に効率化させることで、コストも削減できます。
――これまでは、コンテンツプロバイダーとモバイル・ネットワーク・オペレーターやサービス・プロバイダーとの利害関係がNFC普及の阻害要因の1つと言われていました。
Winston Yeo:利害関係よりもそれぞれの国においてシステムが異なる方が大きいでしょう。例えば日本では、モバイル・ネットワーク・オペレーターはNFC SIMに投資しています。しかし、他国にいくと、モバイル・ネットワーク・オペレーターは大きな投資をしないケースも見受けられます。そのため、サービスを提供する側としては、すべての国ではなく、国を選んで投入しています。「Allynisトラステッド・サービス・ハブ」は、それぞれの国で異なる環境においてもリーチが可能です。
HCEの普及によりGemaltoの役割は強まる
日本での展開もさらに強化
――現在、クラウド上で情報を管理するHCE(Host Card Emulation)による認証が注目されていますが、そうなるとTSMサービスを提供する貴社の役割が減るという声もあります。Winston Yeo:
むしろ需要は高まると思います。HCEによる認証も広がると思いますが、セキュリティ面で重要なのはトークナイゼーションです。そこで大切なのは2つあり、1つは16ケタのクレジットカード番号と、トークンの中のパーマネントキー(鍵)です。HCEでは、ソフトウェアがモバイルアプリケーションに格納されているため、外部からの侵入に弱い部分があります。そのため、強固な認証が必要で、1つは利用者がトークンを受け取る前の認証、もう1つはトークンを受け取る銀行が本当に求めているトークンなのかという認証です。弊社ではすでに認証サービスを提供していますので、役割は強まると考えています。
――近年、NFCに関する盛り上がりが薄れてきているという市場の声もあります。
Winston Yeo:NFCについては、2~4年前は教育の側面が大きかったです。しかし、ここ数年で企業は技術的なテクノロジーを把握し、実際にサービスを開発、提供しています。また、TSMをはじめ、すでに数多くのお客様が弊社のデータセンターを利用しており、その数は順調に増えています。「Allynisトラステッド・サービス・ハブ」では、さらに多くのお客様のビジネスを支援できると感じています。
――今後の目標についてお聞かせください。また、日本での展開についてはいかがでしょうか?
Winston Yeo:答えは簡単です。我々のプラットフォームをさらに大きくさせることです。プラットフォームサービスとしては、2017年までに10億ユーロの売上を達成したいです。また、PFO(profit from operations)として2017年までに6億ユーロの達成を目指しています。
また、日本のモバイル・ネットワーク・オペレーターはすでに我々のお客様ですが、さらに多くのサービスを投入していきたいと思います。日本もさらにコンタクトレスの方向に向かうと思います。
※取材は2014年11月2~5日まで開催の「Money20/20」にて