2015年8月4日7:00
ベトナムでは二輪の販売金融サービスで単年度の黒字化に成功
インドネシアにも進出し、今後は海外事業で第四の収益の柱を目指す
ジャックスでは、アジアを中心とした海外事業の展開加速を事業戦略の1つとして掲げているが、2010年にベトナム現地法人(JACCS International Vietnam Finance Co.,Ltd.)を設立し、2012年にはインドネシアでも出資をする形で進出している。2014年度にはベトナム現地法人は、単年度黒字を達成。2017年度には10億円の利益達成を目指している。また、今後3年以内に他のアセアン諸国への進出も視野に入れている。
強みは日本で60年培った個品割賦事業のノウハウ
ベトナムでは二輪車販売で今年中の全国展開が完了
ジャックスでは、海外事業を国内3事業(クレジット・カード・ファイナンス)に続く、第4の収益の柱へと成長させることを目指している。ジャックス 国際事業企画部 国際事業企画課 課長 足立良平氏は、「ジャックスとして、アセアンでの事業に軸足を置いている」と説明する。日本では今後人口の減少などが予想され、大きなマーケットの拡大が見込めなくなると予想されるが、市場としてアセアンの新たな可能性に目を向けたのが海外事業開始のきっかけとなった。同社が海外で展開する上で強みとなるのは、「日本で60年培ってきたノウハウにつきます」と足立氏が話すように、国内での個品割賦事業のノウハウをベースに海外展開を行っている。
ジャックスでは、ベトナムでの事業準備室を2008年12月に設置し、2010年4月にはベトナム国家銀行(中央銀行)より、ファイナンスカンパニーライセンスを取得。2010年6月にジャックス100%出資のベトナム現地法人(JACCS International Vietnam Finance Co.,Ltd.)をホーチミン市に設立し、同9月から、ホーチミン市で、ホンダの二輪車を対象とした販売金融サービスを開始。その後、南部のメコン地区、中部のダナン、首都・ハノイ市に進出。日本の7~8倍の二輪車の販売市場があると言われるベトナムにおいて取り扱い店舗も年々拡大し、「今年中に全国展開が完成する予定です」と足立氏は笑顔を見せる。現在、ホンダのディーラーを中心に、500店強で受付を実施。ホンダは、ベトナムで7割のシェアを誇り、現地ではバイクのことをホンダというほど人気が高いというが、今後は600店まで伸ばしていきたいとしている。
2014年はベトナムで単年度の黒字化に成功
日系企業で初めてクレジットカードの発行も開始
ベトナムでは、2014年度に初めて単年度での黒字化に成功したが、当初は数多くの苦労があったという。現地にも駐在した国際事業企画部 国際事業企画課 スタッフマスター 鈴木力英氏は、「現地のスタッフと日本人スタッフとのやり取りでは、部門をまたいだ連携をスムーズに行うのが大変でした。また、ベトナム国家銀行からライセンスを受けてビジネスを展開していますが、2011年5月から2012年10月までは新規出店規制があり、取り扱いが伸びない時期もありました。ただ、出店規制が解除されてから、二輪のディーラー様を順調に拡大でき、取扱高も伸びています」と口にする。
現在は、加盟店拡大やノウハウの蓄積により、債権残高・取扱い件数ともに着実に増加しているが、「未回収率については他のファイナンス会社とくらべても少ない」と鈴木氏は自信をみせる。また、金利については、現地で展開する競合のファイナンス会社と比べても競争力のある水準となっているそうだ。
二輪車の個品割賦事業の成功を受け、2015年4月からは、ホーチミンなど南部の都市を中心に、ベトナム国民向けに、クレジットカード事業を開始。現在は、二輪車の販売金融事業やバイクローン完済者向け無担保証書貸付などの既存優良会員を対象にカードの募集を実施。クレジットカードは今年度2万枚、2016年度は3万枚、2017年度は4万枚の発行を目指しているが、「想定通りのスタートとなっており、ピッチを上げていきたい」と意気込みをみせる。日系イシュアが同国においてクレジットカードを発行するケースは初となったが、ベトナム国家銀行と細かい仕様などを確認し、1年以上前から準備を進めたそうだ。
インドネシアではMPMF社に出資し、40%の株式を取得
ベトナムでは2017年度までに10億円の売り上げを目指す
一方、インドネシアでは、2012年に二輪車ローンを展開するファイナンス会社であるPT Sasana Artha Finance(SAF社)へ出資を行い、40%の株式を取得し経営へ参画した。2014年2月にSAF社とMPM社傘下で、四輪ローンを主に展開するファイナンス会社のPT Mitra Pinasthika Mustika(MPMF社)が合併し、MPMF社を存続会社として事業を展開している。ジャックスではMPMF社に対し、510,000百万ルピア(約45億円)を追加出資し、40%の株式を確保するとともに役員を派遣し経営へ参画している。
今年に入りインドネシアの経済が停滞しており、二輪と四輪の販売台数も前年比で二ケタマイナスとなっているが、MPMグループが展開している日産車のディーラーとの連携を強化するなど、さらなる規模の追求とシナジーの最大化を図っていくという。
ジャックスでは、2015年度より中期3カ年経営計画「ACT-Σ(アクト・シグマ)」がスタート。3カ年計画最終年度となる2017年度の主な経営指標(連結)は、経常利益200億円、自己資本利益率(ROE)9%以上としている。今後の展開として、ベトナムについては、2014年度は1億円の黒字だったが、2017年度までに10億円の経常利益を目指し、最終的にはリーディングポジションを確保していきたいとしている。また、日系企業の進出も予想されるため、ベトナムでは独自サービスを付帯した提携カードの発行も検討している。さらに、アセアン加盟国では、新たに3カ国への進出も視野に入れるそうだ。