2015年10月20日8:30
ジェムアルトと業務提携し、新サービスをスピーディーに展開へ
大日本印刷(DNP)は、デジタルセキュリティ分野の世界的リーダーであるGemalto N.V.(ジェムアルト)と提携し、NFC搭載スマートフォン等にモバイル決済サービスの機能をネットワーク経由で追加するクラウドサービス「DNPスマートデバイス向けクラウドペイメントサービス」を、2016年春に開始する。「SIM型」「eSE(embedded Secure Element)型」「microSD型」に加え、クラウド上で機密データを管理する「HCE(Host Card Emulation)型」、スマートフォン本体に搭載されているCPUのセキュリティ領域を利用する「TEE(Trusted Execution Environment)型」といった新技術に対応するマルチプラットフォームとなる。
海外展開も見据えジェムアルトと提携
SIM、eSE、microSD、HCE、TEEすべてに対応
「DNPスマートデバイス向けクラウドペイメントサービス」は、クレジットカード番号等のカード固有の情報をクラウド上で管理し、生活者のスマートフォンにクレジット決済やプリペイド決済、電子マネーといった決済機能を安全に追加するサービスとなる。同サービスの提供に向けては、ジェムアルトのクラウドペイメントソリューションを採用。世界屈指の実績を持つジェムアルトと提携することで、「海外の市場動向を素早くキャッチアップでき、今後の海外展開も見据えたうえで、協力体制を敷くことが可能です」と大日本印刷 情報ソリューション事業部 デジタルイノベーション本部 モバイルサービス部 小野寺貴弘氏は口にする。
同ソリューションは、マルチプラットフォーム、マルチデバイス、マルチインターフェース(NFC/FeliCa、QRやネット決済)、そしてマルチブランド対応が特徴となっている。
DNPのNFCサービスではこれまで、SP-TSM(Service Provider-Trusted Service Manager)サービスを2005年から提供している。また、2012年からは決済やポイントなどの複数のサービスをスマートフォンで一元管理するプラットフォームサービス「DNPモバイルWalletサービス」を展開している。従来は自社でサービスを開発していたが、今後はジェムアルトと強固なアライアンスを組むことで、マルチプラットフォームの実装を目指す。
NFCサービスにおけるセキュアエレメントの実装方式については、スマートフォンのSIMカード内に機密情報を格納する「SIM型」に対応していたが、今後は、他の実装方法にもすべて対応できる体制を整えていく。Apple Payで採用されている組み込み型の「eSE(embedded Secure Element)型」、中国銀聯の実験等で採用された「microSD型」に加え、セキュアエレメントを物理的にスマートフォンに搭載せずにクラウド上の機密データを扱う「HCE(Host Card Emulation)型」への対応も進めていく。HCEはスペインやオーストラリアなどの金融機関、Samsungの「Samsung Pay」やGoogleの「Android Pay」などに採用されている注目の技術となっている。また、決済サービスの安全性を高めるために、クレジットカード番号の一部をダミー番号(トークン)に置き換えてスマートフォンに格納する「トークナイゼーション」の採用も加速しているが、ジェムアルトと協力して提供していく方針だ。さらに、今後普及すると予想される「TEE(Trusted Execution Environment)型」に関しても対応するスマートフォンが増えた際に検討していくという。
ウェアラブルデバイス等のスマートデバイスにも対応へ
ビットコイン等の仮想通貨にも対応した国際ブランドカードによる多通貨決済を開発
マルチデバイス対応としては、AndroidやiPhoneといったスマートフォンに加え、「今後は、ウェアラブルデバイス等のスマートデバイスへの対応を検討しています」と小野寺氏は話す。ユーザーインターフェースについては、NFC以外に、日本で定着しているFeliCaも含めてサービスを展開。また、ディスプレーに表示したQRコードを読み取る方式などに対応する。
マルチブランドについては、Visa、MasterCard、JCB、American Expressの4ブランドに対応していく。
2015年10月15日、16日に東京国際フォーラムで開催された「金融国際情報技術展 FIT2015」では、国際ブランドのカードを利用して、ドル、ユーロ、ビットコインにリアルタイムで変換して決済するデモを実施した。同デモでは、Visa、MasterCard、JCB、American Expressの各カードをスマートフォンに格納し、カードによる複数のセキュアエレメントの実装方式を選択可能となっている。小野寺氏は、「円やドルに加えて、ビットコイン等の仮想通貨に対応したマルチカレンシーの非接触決済サービスは全世界的にも存在していませんでした。米国・ラスベガスで開催されるイベント『Money20/20』でもこの特徴をPRしたいと考えています」と意気込みを見せる。
ポイントやクーポンなどマーケティングサービスも提供
5年間で50億の売り上げ目指す
なお、「DNPスマートデバイス向けクラウドペイメントサービス」では、決済機能に加え、ポイントサービスやクーポン、各種会員カード、IDカード等の機能も提供可能だ。小野寺氏は、「ICカードで培った技術やセキュリティはもちろん、プロセッシングサービスやマーケティングサービスと連携できるのがDNPの特徴です」と強みを口にする。
同サービスのメインターゲットは日本のイシュア(カード発行会社)となるが、イシュアから加盟店にモバイルWalletサービスなどを提案するケースも想定される。当面の目標は、関連サービスも含め、2019年度までの5年間で約50億円の売上を見込んでいる。また、海外展開についても引き続き検討していく方針だ。
※デモ画像は「金融国際情報技術展 FIT2015」のDNPブース