2016年4月15日8:00
商品性の充実により、デビット普及の機は熟す
楽天銀行は、Visaブランドが付帯されたデビットカードとして年会費3,086円(税込)のゴールドカードと年会費1,029円(税込)の一般カードからなる「楽天銀行デビットカード(Visa)」を発行してきたが、2015年4月20日から、年会費無料の「楽天銀行デビットカード(JCB)」を新たに提供している。商品性の異なったVisaとJCBのデビットカードのそれぞれの戦略について、話を聞いた。
「楽天カード」と同様のポイント付与をデビットで実現
運用コスト削減分をサービスとして還元
楽天銀行は、イーバンク銀行時代の2007年から、Visaを付帯したデビットカードを発行している。楽天銀行 営業統括本部 営業企画部 カードチーム リーダー 二宮剛史氏は、「Visaは年会費をいただいて発行するカードのため、利用される方の稼働率の高さが特徴です。特にキャッシュカードと一体型になっているカードとしては高い方だと思います」と説明する。
JCBの提供に向けては、運用コストの削減を目指したという。Visaでも内製化を進めていたが、大幅に運用コストを削減したことにより、「お客様にサービスとして還元することができました。クレジットカードの『楽天カード』同様に、年会費無料、1%のポイント付与率を実現しています」と二宮氏はほほ笑む。
JCBでは、楽天会員リンク登録を行うと、利用金額の1%が楽天スーパーポイントで付与される。また、貯まったポイントは楽天市場での買い物や楽天グループ企業での支払いに利用可能だ。さらに、ハッピープログラムにエントリーしている会員は、ポイントを振込手数料としても利用できる。
デビットカードを利用すれば、ATMに出向いて口座から金額を引き出す手間が減り、海外でも便利に利用可能だ。また、デビットカードは、クレジットカードよりも特典が落ちるケースもあったが、「年会費無料でポイント付与率がクレジットカードと同じ以上であれば、デビットを申し込まれる方も増えると考えています」と二宮氏は自信を見せる。
JCBブランドの利用者については、30代、40代の男性が多いが、Visaよりも若い層の入会が見受けられる。同氏は、「有効会員は順調に増えています。口座を開設いただいた方全員にキャッシュカードを提供していますが、JCBを投入してからはデビットカード付を申し込まれる方が非常に増えました」と成果を口にする。客単価についてもVisaゴールドほどではないが、想像以上に高いという。
普及のためにはインフラや環境整備も急務
楽天のサービスなどの追加も検討
一方、Visaに関しては、「海外に強いブランドのイメージもあると思いますが、海外への旅行・出張・留学時により多くご利用いただいており、また、海外ATMでの引き出しも多くご利用いただいています。さらに、ゴールドカードにはショッピング保険や空港手荷物宅配サービスの割引等、豊かな特典があるため、ゴールドカードをお持ちになる方も多いです」と二宮氏は話す。
限度額に関しては、両ブランドとも、口座の残高がそのままカード利用限度額となるため、クレジットカードでは購入できなかった高額商品もデビットカードでは支払いが可能となる。以前は一日あたり100万円が上限だったが、現在は撤廃。また、ブランドではテレビCMを積極的に行っているため、現金感覚で利用できるカードとしての認知度は高まっている実感がある。
国内デビットカードには、オーソリ取消未実施による二重引落や、オーソリ未取得による未収等の課題も依然としてあるが、「現在はリアルタイムでオーソリを実施いただき、オーソリデータと売上確定データが一致しない取引がだいぶ減ってきました。日本ではこれからもデビットカードが伸びていくことが見込めるため、そのスピードに合わせた形で、加盟店の理解をいただきながら、デビットカード決済を取り巻く環境が整備されることを期待しています」と二宮氏は口にする。なお、JCBでは高速道路で利用できる点がVisaとは違うそうだ。
楽天銀行では、デビットカードを発行して10年以上経ったが、今回のJCBデビットの追加によって土台が整い、キャッシュレス決済に貢献できるような施策を展開できる時が来たとみている。「可能性は大きいので、例えば楽天グループ内の他サービスとの連携を模索するなど、お客様にとってより便利なサービスをこれからも追加していきたいです」と二宮氏は意気込みを見せた。