2016年3月28日9:30
指紋センサーの製造やソフトウェアの開発を行う韓国のCrucial Tecは、バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2016」において、バイオメトリクスが搭載されたクレジットカード、指紋認証を活用した決済サービスを紹介した。
韓国のクレジットカード会社と共同開発
指紋認証機能搭載のバッテリー内蔵型のクレジットカード
Crucial Tecは、公開鍵暗号と生体認証等の技術による新しい認証方式「FIDO(Fast IDentity Online)」の標準化を推進する「FIDO Alliance」のボードディレクターを務めている。FIDO Allianceには、日本からNTTドコモが参加するなど、国内でも次世代の認証技術として普及が期待されている。
MWCでは、韓国のクレジットカード会社と共同開発を行うバイオメトリクス機能を搭載したクレジットカードが展示された。
「バイオメトリクス搭載のクレジットカードは他社でも展開されていますが、その多くが決済端末にカードを接続すると電源が供給される仕様となっています。弊社のカードは、バッテリーを搭載している点が特徴となります」(Crucial TecビジネスデベロップメントDiv マーケティング・グループ ヘッド シニアディレクター Seung Y.Park氏)
コストについてはバッテリーが供給されるため、他社のカードに比べて高くなるが、より使いやすい仕様となっているそうだ。
韓国では、大規模なクレジットカードの情報漏洩事件を受け、国家レベルでEMV ICカード化などのセキュリティを強化している。Seung Y.Park氏は、「ICカードを搭載していてもクレジットカードが仮に盗まれた場合、悪用される可能性があるため、プラスアルファの機能として指紋認証などを追加することに関して、検討されています」と説明する。
現状、韓国国内ではハウスカードの利用がメインであり、韓国のクレジットカード会社ともハウスカードの利用で動いているが、今後は国際ブランドにも提案していきたいそうだ。
指紋認証を活用した本人確認「Bio Pay Payment」
韓国の大手決済事業者のDanalと展開
また、オンラインショッピングでの不正防止対策として、指紋認証を活用した本人確認「Bio Pay Payment」のデモも実施した。モバイル決済の際に会計ボタンを押すと、30秒以内に指紋で認証して本人確認を行う仕組みだ。スマートフォンなどのモバイル端末に加え、PCによるオンラインショッピングでも使用できるのが特徴となる。PCの場合、クレジットカードの番号入力をする際に、PCから端末にメール等でメッセージを配信し、それから指紋で決済を行う。
同サービスは韓国の大手決済事業者のDanalと共同で展開している。現在も加盟店に対して訴求しているが、具体的な利用はこれからの状況だ。
Crucial Soft PresidentのJoshuaPyun氏は、「Bio Pay Paymentのポテンシャルは高いですが、このやり取りで利益に結び付けるのが難しい点が課題となっています。認証の際にキャリアと直接やり取りをするため、料金は月の携帯料金に請求される流れとなります」と説明する。ただし、FIDOの技術は世界中で主流となりつつあり、将来的には普及が見込めるとしている。
※取材は2016年2月22日~25日までスペイン・バルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2016」にて