2010年9月3日12:40
「カード決済とCRM/付加サービスの親和性」ANA(前篇)
ANAマイレージクラブの好調の要因とは?
幅広いラインアップのカードで顧客の囲い込みを狙う
ANAのANAマイレージクラブ(AMC)は航空機への搭乗や買い物などで貯まる「マイル」を航空券や電子マネーなどの特典と交換できるANAのマイレージプログラムである。券種には「ANAマイレージクラブEdyカード」に代表されるクレジット機能・年会費なしのタイプ、クレジット機能が付いたタイプ(ANAカード)、ヤマダ電機やみずほ銀行など他社が発行するタイプの3種類に大別される。同社の航空決済を促進するツールとしてAMCが果たす役割は大きい。
他社との提携を積極的に展開
ANAではリーチできなかった会員を獲得
ANAのANAマイレージクラブ(AMC)は日本有数の会員組織として知られている。会員数はAMC会員が2,054万人、ANAカード会員が195万人に及んでいる(いずれも6月末時点)。最近ではこれまで同社が注力してこなかった層への積極的な告知や、提携先の基盤を活かした会員獲得にも力を入れている。
中でも同社が重点的に強化するのが、クレジット機能付きのANAカードと、他社が発行する提携カードにAMCの機能を付加した提携カードだ。後者のヤマダ電機、ヤマダフィナンシャルと提携した「ヤマダLABI ANAマイレージクラブカードセゾン」、みずほ銀行と提携した「みずほマイレージクラブカード/ANA」は発行枚数が伸びている。
「みずほ銀行は銀行窓口、ヤマダ電機は店頭で会員募集をしていただくことで、弊社だけではリーチできないお客様にANAマイレージクラブに入会いただけます。また、航空機利用のマイルだけではなく、日常の生活の中でポイントをメインで貯めたい方もいらっしゃいます。30代~40代の方が中心で、弊社の顧客層と親和性は非常に高いです」(全日本空輸 営業推進本部 顧客マーケティング部 主席部員 小西春雄氏)
みずほ銀行やヤマダ電機との提携カードは、日常の買い物利用だけではなく、ANAの航空券の決済でも多く利用されているという。ANAでは今後も親和性のある提携先を積極的に増やしていく方針だ。
若年層や富裕層向けのカードを昨年発行
AMEXの入会者、稼働率は期待以上の成果
ANAカードでは昨年、ジェーシービーと提携した「ANA JCBカード ZERO」、アメリカン・エキスプレス(AMEX)と提携した「ANAアメリカン・エキスプレス・カード」「ANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」「ANAアメリカン・エキスプレス・スーパーフライヤーズ・ゴールド・カード」がラインアップに加わった。
ANA JCBカード ZEROは29歳以下を対象としたカード。入会後5年間は年会費が無料で、発行から5年経過すると一般のANAカードに切り替わる。
「これまで弊社がアプローチしづらかった若年層の方にも間口を広げています。まずはANAに興味を持っていただき、時々航空機に乗るときにはANAを選んでいただければと考えています。より多くの方にカードを持っていただき、将来的には弊社のコアのお客様になっていただく狙いです。現状は、新規会員獲得のチャネルなど試行錯誤しておりますが、これまで弊社が獲得できなかった会員を獲得できるツールとして強化していく方針です」(全日本空輸 営業推進本部 顧客マーケティング部 ロイヤリティ戦略チーム コーディネーター 戸部 純氏)
AMEXとの提携カードは、直近のANAカードの新規発行件数の中でも大きな割合を占めているという。「ANAアメリカン・エキスプレス メンバーシップ・リワード」ポイントのマイルへの移行、ANAグループでの利用時のポイント倍増(1.5~2倍)などの特典がある。AMEXでも積極的にキャンペーンを展開しており、堅調に会員数は伸びている。
「なかでもANAアメリカン・エキスプレス・カードの入会者が予想以上に多いです。弊社と親和性の高い会員も多く、稼働率や利用単価は高いです」(戸部氏)
最近ではAMEXが8月2日から10月3日まで、WebサイトからANAアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードを申し込むとポイントが10倍貯まるキャンペーンを展開し、話題となっている。これは期間中、カードに新規入会すると、入会ボーナスマイル2,000マイルに加え、「ANAアメリカン・エキスプレス メンバーシップ・リワード」のボーナスポイント5,000ポイントをプレゼントするもの。また、入会後3カ月間はカードを利用するごとにポイントが10倍となる。この取り組みからもAMEXのゴールド会員増強にかける意気込みが見て取れる。
そのほか、JR東日本と提携した「ANAマイレージクラブVISA Suicaカード」は、「クレジット機能」・「マイレージサービス」・「Suica機能」の3つの機能が1枚になったカード。発行から約2年が経過したが、陸と空をシームレスに移動できる利便性が支持されているという。