2016年8月29日8:45
「セゾンDMP」でCRMの強化、AD事業の展開、Fintechへの活用を想定
クレディセゾンは、同社が保有するカード会員のデータを活用する「プライベートDMP(Data Management Platform)」(セゾンDMP)を構築し、会員の属性データやカード利用データ、ネットサービスの利用データ等を統合管理したうえで、ネット会員向けに最適化された情報配信を行う。同サービスの狙いについて、クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部長 磯部泰之氏に話を聞いた。
初期・途上与信のイノベーションを目指す
デジタルガレージとの協業で「セゾンDMP」を構築
DMPは、企業が持つ顧客データやマーケティングデータ、ネット上だけではなくリアル店舗などのオフラインのデータも含めたさまざまなデータを統合管理することにより、マーケティング活動全体を最適化するプラットフォームとなる。また、プライベートDMPとは、利用企業の自社データと外部データを統合的に管理し、自社のマーケティング活動全般に活用することを目的としている。
今回、カード会社のクレディセゾンがDMPを構築した理由は大きく3つ。1つめは、CRMの強化だ。従来の情報配信は、仮にセグメントできたとしても画一的で時間がかかっていたため、自社で蓄積した情報をもとに、会員とのコミュニケーションをよりパーソナルにタイムリーにできないかと考えた。
2つ目が、広告事業への進出が挙げられる。高度なターゲティングによるデジタルマーケティングソリューションを開発することで、「アドテクノロジーにクレジットカードのデータが活用できると考えます。カード会員の利用に寄与することはもちろん、効果的な情報配信を実現することで広告主から対価として収入を得る事業を目指しています」と磯部氏は意気込む。
3つ目は、Fintech(フィンテック)分野への活用だ。磯部氏は、「例えば、外部企業がお持ちのデータを弊社のデータとつなぎ合わせることで、初期・途上与信のイノベーションを実現させたいです」と構想を口にする。
セゾンDMPは、デジタルガレージとの協業により構築したが、これにより長期的な視点でのビッグデータの利活用を目指している。クレディセゾンには1,200万人以上の「Net会員」がおり、カード利用明細、属性など、豊富なビッグデータを有し、さまざまな決済ソリューションを展開している。一方、デジタルガレージは、データサイエンス技術、デジタルマーケティングノウハウに加え、グループに決済代行事業者を有している。さらに、グループでインキュベーション事業を行うなど、多岐にわたる事業を展開するなど、クレディセゾンと異なる強みがある。
セゾンDMPにはオーソリデータを10分間隔で送信
行動データの相関性やカード会員の類似性を解析
セゾンDMPのデータベースには、属性、興味、行動など、クレディセゾンの各サーバで分散管理していたデータを日次で格納する。また、クレジットカードのオーソリデータも約10分間隔で送信。これらを機械学習等のデータ解析技術により、行動データの相関性やカード会員の類似性を解析することで、パーソナライズされた最適な情報配信を行う。
磯部氏によると、オーソリデータがリアルタイムに近い時間軸でDMPに格納されるのは国内のカード会社で初めての取り組みだろうということだ。DMPによりクラスタ化されたデータは、会員に応じたマーケティング施策の展開、外部の広告主のために用意されたDemand-Side Platform(DSP)広告などで活用される。
磯部氏は、「他のクレジットカード会社を含め、日本企業でもDMPを活用するケースは増えてきましたが、多くはCRM目的となります。セゾンDMPは外部のDSPと連携することを前提とした、これまでにはない取り組みとなります。」と特徴を述べる。さらに、クレディセゾンは、国内のカード会社として最大級となる1,200万人以上のネット会員を有しており、量の面で差別化が図れるとみている。
なお、DMPに送る会員データはハッシュ化された状態でID連携しており、個人情報を含まないものとなっている。
広告主にとってのセゾンDMPの強みは、①本人確認済みの正確な事実データ、②国内外、オンライン・オフラインの幅広いデータ、③全国の18~80歳超の消費志向の高い会員、④ゴールド・プラチナの高年収層を含む多様な会員層――の4つとなる。セゾンDMPの属性データを見ても、年代は40代を中心に幅広く利用されている。また、女性のユーザーに強いセゾンカード会員に加え、UCカードが加わったことで、男女比のバランスも整ってきた。