2016年11月17日5:46
現在、スマートフォンやタブレット端末機に専用アプリをインストールし、カードリーダと連携する決済が世界中で行われるようになった。「世界の送金・決済のイノベーション」では、モバイルPOSペイメントサービスについて、世界中の動向とコアモデルを紹介している。近年、従来のカードの磁気ストライプの読み込みからEMV スタンダードのICカードの読込にシフトしており、PIN(暗証番号)対応やデジタルサイン、NFC(Near Field Communication)を含むコンタクトレスペイメント、カード全体の読込(カードスキャニング)などのテクノロジーの導入も進んでいる。
発展途上国や新興国ではインフラ面からも期待が大きい
スマートフォンやタブレット端末機によるモバイルPOSペイメントは、クレジットカードやデビットカード、プリペイドカードによる決済を受け入れるマーチャントの裾野を拡大させた。特に、アフリカや南アジアなどの経済発展途上国やインドやブラジル、中国などの新興国では、固定通信回線インフラの整備が十分ではなく、日本や欧米先進国のように電話回線などによるPOSカード決済端末機の設置を拡大するのは難しい。スマートフォンやタブレット端末機によるモバイルPOSペイメントへの期待は大きい。
一方、先進国では、“O2O(Online to Offline)マーケティング”ツールとして注目されているほか、展示会やデリバリーにおける代金決済手段としての活用も見込まれている。また、スマートフォンやタブレッド端末機などのモバイルフォンデバイスを用いたモバイルPOSペイメントは、カード加盟店にとって、既存のPOSシステムと比較して小さな初期投資で導入できるという点からもメリットが大きい。
サービスプロバイダーにより取扱可能なカードデータの読み取りおよび認証方法は異なる
モバイルPOSペイメントは、“Squareレジスター”がアメリカで始まった2010年代の初めは、通信販売などカードを提示しないCNP(Card Not Present)におけるカード番号やカード有効期限などカードデータの手動入力と、CP(Card Present)の店頭におけるクレジットカードやデビットカードなどの磁気カードデータの読取とデジタルサインによる認証でのみ使われていた。
ヨーロッパを中心にEMV ICカードが急速に普及し、また2015年10月のライアビリティシフトにより、世界最大のペイメントカードのマーケットであるアメリカにおいてもEMV ICカード化が始まった。EMV ICカード化によって、カード偽造による不正リスクから解放されると、少額決済を中心に、イギリスやカナダ、オーストラリア、シンガポール、台湾、香港、中国などでコンタクトレスペイメントの普及が始まった。モバイルPOSペイメントは、当初の磁気カードのみならず、“Chip & Signature”(ICカードデータの読込みとデジタルサイン)や“Chip & PIN”で(ICカードデータの読込みとPIN(暗証番号)による認証)を行うEMV ICカードやMastercard ContactlessやVisa payWaveなどのコンタクトレスペイメントにも対応するようになっている。
(図表)は、現在のモバイルPOSペイメントのカードデータ読み取りと認証のバリエーションを示したものである。モバイルPOSペイメントのサービスプロバイダーによって、取扱可能なカードデータの読み取りおよび認証方法は異なっており、専用のカード読取機やPIN入力機の導入が必要である。また、カードデータの読み取りと認証の方法によってカード加盟店手数料が異なっている。