2017年1月16日8:00
各エリアでのアクセプタンスマークの掲示は着実に増える
ビザ・ワールドワイド(Visa)では、自治体などと協力し、急増する外国人観光客(インバウンド)の旺盛な消費意欲を取り込み、外国人観光客が安心して買い物や食事を楽しめるような利便性の向上等に取り組んでいる。2017年は表参道、京都、札幌という3つのエリア・都市でインバウンド施策を展開。これまでの成果と今後の展開についてVisaに話を聞いた。
インバウンドが話題になる前から取り組みを開始
表参道や札幌では4年間で確実に意識が高まる
Visaでは、自治体や地域の観光協会、商店街と協力しながら、各エリアのカードの受け入れ環境を進めており、同時に訪日外国人による消費環境の強化を図っている。訪日外国人は自国ではカード決済を日常的に行っているが、現金利用率の高い日本に来た際にストレスフリーの決済環境を提供することがペイメントブランドとして重要であるとしている。近年では、訪日外国人も増えており、受け入れ環境を整えることで、機会損失を防ぐことができる。
Visaではまず、沖縄において2012年に訪日外国人向けの取り組みを実施。2013年から東京都表参道の商店街振興組合原宿表参道欅会(欅会)、札幌市と連携した訪日外国人誘致キャンペーンを実施している。両者での取り組みは2017年度で5回目となる。さらに、2015年には京都市と「地域活性化包括連携協定」を締結した。
ビザ・ワールドワイド・ジャパン クロスボーダーマーケティング&ビジネス 龍武史氏は、「日本でインバウンドブームが起きる前からVisaでは取り組みを行っており、各自治体と協力し、ビジョンを持って中長期的にPDCAを回しながら施策を行っています」と話す。取り組み開始前は、アクセプタンスマークを貼っていない加盟店も目立ったが、説明会を実施し、掲示することが売上拡大につながるというメリットを伝え、環境が変わるように努力した。龍氏は、「たとえば、JTB北海道と協力した札幌市の取り組みでは、アクセプタンスマークが見受けられるようになり、特に大型加盟店での掲示が目立つようになってきました。また、表参道についても表示が強化され、4年間で意識が高まっている感触はあります」と成果を口にする。
札幌市では、“笑顔になれる街札幌”というコンセプトのもと、「SAPP‿RO(サッポロスマイル)& Visaロゴマーク」を作成し、札幌市ならびにさっぽろ雪まつり実行委員会、札幌観光協会、札幌駅前通まちづくり、さっぽろテレビ塔のほか、各商店街組合の協力のもと、取り組みが実現した。
「短期間でのキャンペーンというより、長い目で環境を整えていく取り組みのなか、目に見える範囲でのアクセプタンスが増えているのが成果であると考えます。たとえば、札幌では地域観光の二次交通の柱であるタクシーのアクセプタンスマークの表示強化が一つの例です。一般的に日本のタクシーの料金は諸外国に比べて高めと言われており、外国人目線では現金がどの程度必要か分かり難い部分があるため、表示の強化は重要課題でありました。2016年の施策では札幌ハイヤー協会様の協力も得られ、2,600台に貼ることができました」(龍氏)
また、雪まつり会場においてキャンペーンを実施し、自国まで持ち帰ることができる北海道産天然雪のハンドメイド雪だるまをキャンペーン賞品として取り入れ、地域のおもてなしを演出した。龍氏は、「北海道安平町で作った雪だるまを発泡スチロールに詰めて商品にしましたが、地域の資源や素晴らしさを伝えて、地域活性化につなげる狙いが柱にあります」と口にする。確かに雪だるまは自国に帰る前に解けてしまうが、その儚さも含め、非常に好評だった。
さらに、特徴のある店舗が並ぶ表参道では、アクセプタンスマーク自体の掲示は行われていたが、そのメッセージが旅行者に伝わりきれていなかった部分もあった。そのため、店舗の出入り口など、掲示位置を工夫することにより、より訴求効果が高まった実感があるという。
京都での取り組みは、免税店やレストランなどでのアクセプタンスマークの掲示に加え、外国人観光客向けの消費喚起キャンペーンとして、「KYOTO x Visa Campaign」を展開。同時期に実施される、京都の美味しい物を特別な価格で楽しむことができる“京都レストランウィンタースペシャル”とも連携し、抽選で京都の伝統産業品をプレゼントした。
2017年の表参道では欅会に加え、原宿竹下通商店会が参加
札幌は全域を対象にし、京都は「嵐山」「レストラン」「旅館」をテーマに
2017年度も表参道、札幌、京都での取り組みを継続して実施。表参道では、2017年1月16日から2月28日まで“Tokyo Shopping Week 2017”を開催。今回から欅会に加え、原宿竹下通商店会が新たに参加。二大商業エリアが一体となることで、地域間における回遊性を高め、原宿・表参道の認知向上につながりやすくなる。
札幌については、世界中から多くの観光客が来場する「さっぽろ雪まつり」の開催期間および旧正月時期を含む2017年1月16日~3月31日まで、ショッピングを対象としたエリアキャンペーンを実施。今回は北海道が持つ資源・魅力をアピールする北海道全域を対象としたキャンペーンとなる。
京都に関しては、従来の「買い物」「食事」というカテゴリに加え、新たに「宿泊」を加えて、それぞれ「嵐山」「レストラン」「旅館」をテーマとした取り組みを1月~2月に展開し、観光消費のさらなる拡大を図る。京都オリジナルのアクセプタンスマークについては、従来のステッカー型の京都オリジナルアクセプタンスマークの配布・掲出に加え、店舗形態に合わせ、店舗入口やレジカウンターにも設置できる自立型のアクセプタンスマーク等を作成している。
政府のキャッシュレス施策とも歩調を合わせる
Visaの非接触サービスやソーシャルとの連携も検討
龍氏は、「自治体はインバウンドと地域活性化を課題としていますが、Visaではそのサポートに力を入れていきたいです。政府でも2020年のキャッシュレス化に向け、旗振りをしていますので、ペイメントインフラを整える政府の課題も解決する一環として取り組んでいます」と意気込みを見せる。なお、自治体で配布するアクセプタンスマークなどの原資は基本的にVisaが負担しているが、「各自治体には逆にさまざまな協力をいただいています」と龍氏は話す。自治体や商店街との協力体制については、各地域が実現したいビジョンとVisaの取り組みが共有できるようなら今後も協力関係を築いていきたいとした。
今後は、これらのキャンペーンにVisaが推進する非接触決済サービスを如何に絡めていけるかを検討している。また、訪日外国人旅行者は、自身の体験をソーシャルで共有するケースも多いため、それをキャンペーン等に生かしていきたいとしている。