2017年3月29日10:41
楽天経済圏以外のECとリアルで利便性の高い決済サービスを目指す
楽天は、2017年3月28日、楽天グループの決済ブランド「楽天ペイ」についての記者説明会を開催した。当日は、「楽天ペイ(実店舗決済)」(旧楽天スマートペイ)、2016年10月27日から開始した実店舗でのスマートフォン決済「楽天ペイ(アプリ決済)」、楽天IDとパスワードによって楽天グループ外のECサイトで支払いが可能な「楽天ペイ(オンライン決済)」(旧楽天ID決済)についての説明が行われた。
☆記事のポイント
①実店舗決済は2017年夏から14ブランドに対応 WeChat Payと銀聯カードを提供へ
②アプリ決済は「QRペイ」と「セルフペイ」から選択可能 利用が多い業種は?
③オンライン決済は4,000店舗以上で導入 他のID決済サービスよりも利用は多い?
④導入サイトに楽天スーパーポイント残高を表示 会員登録とログインを共有できる「楽天ID Connect」の採用は?
現金不要、安心・安全、ポイント還元が特徴
楽天では、グループの資産を活用し、ECとリアル両面に対応した、利便性の高い決済サービスの実現を目指している。従来は「楽天スマートペイ」「楽天ペイ(アプリ決済)」「楽天ID決済」という別々の名称でサービスが展開されていたが、2017年2月に、加盟店やユーザー向けの決済サービスを「楽天ペイ」に統一した。
すでに5兆円の取り扱いがある「楽天カード」は3兆円の流通総額となる楽天市場を上回る成長を示しているが、楽天 執行役員 カード&ペイメントカンパニー 楽天ペイ事業部 ジェネラルマネージャー 小林重信氏は、「楽天ペイを通じて、楽天経済圏を拡大させていきたい」と意気込みを見せた。
「楽天ペイ」では、現金が不要で、安心・安全な支払いが可能であり、なおかつポイントが還元されるため、リピート利用につながるとした。
楽天ペイ(実店舗決済)は2017年夏から14ブランドに対応
WeChat Payと銀聯カードを提供予定
まず、「楽天ペイ(実店舗決済)」は、店舗が保有するスマートフォンと専用のカードリーダとの接続でクレジットカードの利用が可能だ。カード業界のスマートフォン決済のカードリーダとしていち早くEMV ICカード対応を開始。2017年夏からは、「楽天Edy」や「Suica」、「PASMO」などの交通系9ブランド、「nanaco」、「WAON」(2018年サービス開始予定)、「QUICPay+(クイックペイプラス)」、「iD」への対応を順次開始する。電子マネー決済に関しては、シンクライアント方式を採用する。また、国際ブランドの非接触決済の提供も準備している。
2017年3月6日から、クレジットカードと電子マネーの決済機能が搭載された「Rakuten Card & NFC Reader Elan(1万8,800円 税込)」を販売。カードリーダを利用したスマートフォン決済サービスの導入店舗数として、インテージの調査では№1となっているそうだ。
今後の予定として、「WeChat Pay」と「銀聯カード」への対応を予定している。日本ではブランド側の制約等により、両決済をあわせて提供する企業はほとんどないが、「対応できる予定」と小林氏は語る。
アプリ決済は「QRペイ」と「セルフペイ」から選択可能
飲食、美容、アパレルでの利用が多い
「楽天ペイ」(アプリ決済)は、実店舗でのスマホ決済が可能になるサービスだ。利用者は、楽天市場での買い物同様に、楽天会員IDでログインして決済ができる。また、サービスのセットアップも楽天IDとパスワードを入力してログインし、クレジットカードを入力して、セキュリティコードを入れると完了する。すでにクレジットカードは過半数が登録しているため、「最短10秒でセットアップが可能」な点が売りであると、楽天 カード&ペイメントカンパニー 楽天ペイ事業部 アプリペイメントグループ マネージャー 諸伏勇人氏は話す。実店舗決済の加盟店はアプリ決済も利用可能だが、サービス開始後の初速として、実店舗決済の3倍速でサービスが利用されている。現在の導入店舗数は非公開だが、飲食、美容、アパレルが利用の多いトップ3の業種となる。
決済方法は、店舗のスマホ・タブレット端末からQRコードを読み取る「QRペイ」とユーザー自身がスマホに金額を入力して決済する「セルフペイ」から選択可能だ。利用者には、「楽天ペイ」アプリで支払った決済金額の0.5%分の楽天スーパーポイントが貯められる。また、楽天カードを設定すると、200円で3ポイントが付与される。楽天では、ポイント還元キャンペーンの実施などにより、利用を促している。
オンライン決済は4,000店舗以上で導入
他のID決済サービスよりも利用は多い?
「楽天ペイ(オンライン決済)」は、利用者が普段楽天市場などで利用しているIDとパスワードを使って他のECサイトで決済できるサービスである。2017年3月現在、4,000サイト以上に導入されている。2016年下期以降は、ENOTECA、サンプル百貨店、ローソンフレッシュ、ONWARD CROSSET、swatch、KOBE LETTUCE、RUNWAY channelなどで採用されている。
無印良品、nano universe、fifthといった導入企業からは、新規会員の獲得、客単価の向上、ポイントと絡めた利用促進が可能な点などが評価されている。ある物販サイトでは、客単価向上効果がプラス23%となった。また、国内にはAmazon Pay、リクルートかんたん支払い、Yahoo!ウォレット、LINE PayといったID決済サービスがあるが、ある導入サイトでは「決済件数が圧倒的に多い評価を得ている」と、楽天 ECカンパニー チェックアウト事業課 シニアマネージャー 石井宏子氏は説明した。
導入サイトに楽天スーパーポイント残高を表示
会員登録とログインを共有できる「楽天ID Connect」はENOTECAで採用
オンライン決済の利用者からは、「ポイントが使える」「ポイントが貯まる」ことへの評価が高いことから、導入サイトで買い物中のユーザーに、現在保有している楽天スーパーポイント残高を表示することにより、利用を促進させる取り組みを行っている。ある物販サイトでは、これによりプラス53%の利用の成果となった。また、楽天市場を中心とする各種グループ媒体からの送客も行っている。楽天には、「Rebates(リーベイツ)」というポイントアップモールを開設しており、同サイトを経由して買い物をすることで、購入金額に応じて楽天スーパーポイントを付与する取り組みを行っているが、オンライン決済の特設ページもリリース予定だ。
なお、オンライン決済では会員登録とログインを共有できる「楽天ID Connect」(事前審査あり)を提供しているが、すでにENOTECAで採用されている。今後は、集客から販売キャンペーンまで対応することで、売上向上の課題を解決するトータルソリューションとして提供していく方針だ。