電子スタンプを活用した地域通貨「しまとく通貨」を運用 得られた情報をサービス向上やファンづくりに活かす(しま共通地域通貨発行委員会)

2018年4月3日8:00

 五島列島、壱岐島など長崎県内の離島が市町をまたいだ共通事業として展開している、観光客向けの地域通貨「しまとく通貨」は、2016年度より紙から電子化への切り替えを行った。これにより、販売・運用にかかる手間やコストを軽減できたことに加え、観光客の属性や購買データを迅速に集計・分析し、サービス向上やファンづくりに活かすことが可能になっている。 

島外からの観光客を対象に
自治体をまたいで地域通貨を発行

長崎県内関係離島市町(壱岐市、五島市、小値賀町、新上五島町、佐世保市宇久町)で組織するしま共通地域通貨発行委員会では、2016年10月より、電子スタンプを用いた電子地域通貨「しまとく通貨」の運用をスタートさせている。

しま共通地域通貨発行委員会 事務局長 江口義信氏

「しまとく通貨」はもともと県が主導する長崎県内の離島の共通事業として、2013年度からの3か年計画の下で発行されてきた。この計画が終了し、市と町が単独事業として引き継ぐに当たり、それまでは紙で発行してきた通貨を電子化したのである。

地域通貨というと、1自治体が発行し、その住民に配られることが多い。しかし「しまとく通貨」は複数自治体をまたいだ事業であり、なおかつ島外から訪れる観光客を対象とし、島内在住者は購入・利用できないのが大きな特徴だ。

1セット5,000円でこれに1,000円のプレミアムが付き、有効期限は2週間。期間内に1人3万円分(プレミアム分込みで3万6,000円)まで購入でき、500円単位で利用できる。

利用できる加盟店は、土産物屋を含む小売店をはじめ、宿泊施設、飲食店、レンタカー、ガソリンスタンド、タクシーなどほとんどの業種を網羅し、約600カ所。

プレミアム分は市と町が負担。加盟店は売上金振込の際に差し引かれるかたちで発行委員会に2.5%の手数料を支払う。

システムには、電子スタンプを採用。購入希望者はまずスマホまたは携帯電話から専用WEBサイトにアクセスし、指示にしたがって操作・登録を行う。現金払いの場合は、一連の操作後に発行される申込コードと身分証明書を島内の販売所に提示し、代金を支払って手続きを行う。クレジットカード払いの場合は、本人確認からチャージまでをWebサイト上で完了できる。

購入者には通貨を管理・利用するための専用Webページ「しまとくウォレット」が発行される。利用時にはこのページから、利用したい金額を選択し、決済画面を表示。店舗がスマホもしくは携帯電話の画面に電子スタンプを押して、決済完了となる。

地域通貨「しまとく通貨」のシステムには、J&J ギフトとギフティが共同で提供する電子スタンプを採用

 

電子化により紙の課題を解決
電子スタンプで導入コストを抑制

「しまとく通貨」導入の目的は、減り続けていた観光客を島に呼び戻すことにあったが、その効果は目に見えて上がった。3か年計画の最終年度である2015年度には、180万セットの販売計画数を大きく上回る222万5,000セットを販売。3年間の累計で、104億円の売上を計上した。そこで、加盟店や商工会から事業の延長を望む声が上がり、市と町が事業の継承を決定したものの、紙のままで発行を続けるには数々の問題があった。

例えば、販売所の数が限られていることや混雑による、観光客の購入の不便。加盟店や商工会、発行委員会では、換金手続きやデータ集計を手作業に頼らざるを得ず、多くの手間をとられる。さらに、紙であるがゆえの不正利用も絶えなかった。電子化はこれらの問題を一掃するための、必須の施策だったのだ。

導入コストなどを勘案し、採用を決めたのが、現行の電子スタンプ。2016年初頭からシステム構築を進めつつ、同年9月末で紙の通貨の発行を終了。10月から旅行商品のみで電子通貨の運用をスタートし、11月から一般販売を開始した。

この切り替えのタイミングで、2015年度までは通年発行していた「しまとく通貨」の一般販売を、10月~翌3月の冬場に限定。ただし、旅行会社とのタイアップによる旅行商品に対しては、通年で発行している。ちなみに2016年度末の協力旅行会社数は約120社、長崎県内離島向け旅行商品数は400超に上っている。

収集したデータを集計・分析
2018年からは積極的な活用のフェーズへ

しま共通地域通貨発行委員会 事務局長 江口義信氏は、電子化の最も大きなメリットは、購買データをリアルタイムで収集・集計し、観光客の動きを把握して、加盟店のサービス改善や旅行商品の開発に活かせることにあると強調する。

また、「通貨購入時にはメールアドレスを登録してもらっていますので、2018年度からはもう一歩踏み込んで、離島の情報を積極的に発信していきたいと考えています」と江口氏は話す。旅行から帰った後も島とのかかわりを切らさずに、物産品を購入したり、寄付(ふるさと納税)をしたり、繰り返し島に訪れたりするファンを増やしていきたいという。

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