2018年3月18日7:25
台湾経済部は、2018年3月15日、日本のキャッシュレス化の実態を調査する目的等で来日し、NIPPON Tabletがキャッシュレス化の実証実験としてスマホ決済や、7カ国語のテレビ通訳機能などを搭載した同社の専用タブレットを導入している早稲田商店会(東京都新宿区)を視察した。
NIPPON Tabletはタブレットを無償レンタル、地域活性化に向け自治体と提携
台湾経済部は日本でいうと経済産業省にあたるが、来日したのはその中小企業部門となる。同部門は、中小企業が経済をけん引している台湾において、中小企業の生産プロセス向上や技術革新を支援する重要な部門となるそうだ。
今回の視察では、まず、「都電テーブル」にて、NIPPON PAY 代表取締役の高木純氏より、早稲田商店会での実証実験の概要、NIPPON TabletやNIPPON PAYの説明、台湾視察団との質疑応答が行われた。
NIPPON Tabletでは、2017年11月からタブレットの無償レンタルを開始。2018年3月末で2万2,500箇所へ提供する見込みだ。訪日外国人観光客や在日外国人、日本人の利用者に対するサービス向上と地域活性化に向けて、早稲田商店会以外にも、大阪府泉大津市、兵庫県三木市、栃木県益子町、そして徳島県徳島市の4自治体と連携協定締結を発表している。高木氏によると、現在も複数の地域と手続きを進めているとのこと。
NIPPON PAYでは、中小規模の店舗に対し、WeChat Payをはじめとするモバイル決済サービスを提供しているが、2018年4月以降、グローバルプレイヤーの決済サービスが同社サーバを経由して提供される予定だ。また、中国人以外のインバウンド向けのモバイル決済サービス提供も準備している。
タブレットを活用してQR決済や翻訳サービスなどを提供
早稲田商店会では、NIPPON Tabletのタブレット端末、NIPPON PAYのQRコード決済サービスを活用し、訪日外国人観光客や在日外国人に加え、日本人観光客や住民に対するサービス向上と産業振興、および地域活性化に向けて、スマート商店街の実証実験を行っている。決済サービスとして、WeChat Payなどの訪日中国人向けモバイル決済機能に加え、日本人向けモバイル決済機能として「楽天ペイ(実店舗決済)」を利用可能だ。また、外国人に向けた翻訳サービス、免税サービス、スタンプラリーなどの機能を提供している。
台湾経済部では今回、台湾でも普及が期待されるモバイル決済サービスを始め、おもてなしに関するサービスについての現状を把握する目的で、早稲田商店会を視察したという。早稲田商店会では、すでに複数の店舗でNIPPON Tabletのタブレット端末を設置しているが、「こだわり商店」において、「WeChat Pay」および「楽天ペイ(実店舗決済)」の活用シーンを見学した。また、7カ国語に対応した翻訳サービスも体験してもらった。
国をあげてキャッシュレス化を進める台湾、モバイル決済の普及はこれから
アジアにおいて、韓国やシンガポールに比べてキャッシュレス化が遅れている台湾では、国をあげてキャッシュレス化を推進。2025年に95%の比率を目指しており、現在は42%の比率となっているとした。ただし、クレジットカードや電子マネーといったカードの利用が中心であり、モバイル決済は徐々に利用されつつある状態だという。具体的には、LINE Pay、Apple Pay、Samsung Payといった決済に加え、台湾ローカル決済の街口支付(JKOPAY)、歐付寶電子支付(O’Pay)等が展開されており、「モバイル決済は戦国時代となっています」と、台湾経済部 Chief SecretaryのDr. Kwo-Liang Chen氏は話す。
現在、台湾でモバイル決済がもっとも利用されている加盟店はコンビニエンスストアであり、今後成長が見込まれるのはタクシー、駅前の加盟店、百貨店、量販店などとなっている。また、カード決済の普及が遅れている病院などでも有望だ。
台湾政府にとってもキャッシュレス化のメリットは大きい?
若者にとっては、学校の周辺の店舗、夕方から真夜中に営業する屋台である「夜市」などにおいて、小銭を取り出さずに決済できるメリットがある。また、モバイルを利用することで、店舗からの特典が受けられる。従来、夜市や少額決済が中心の店舗では、クレジットカードや電子マネーすら普及していないケースも多かったが、若年層の利用を促進できると期待している。さらに、夜市等の屋台では、税金を納めていないケースも見受けられるが、キャッシュレス化することで、店舗の売上を把握することも可能となる。
さらに、台湾でもお札を管理、更新するのは66台湾ドル(TWD)、日本円で約200億円かかっているが、キャッシュレス化によってそのコストも削減可能になるという。
現状、台湾では、タブレットを無償レンタルする仕組みは提供されていないというが、NIPPON Tabletではこのような仕組みが提供されれば、キャッシュレス化を加速させることができ、国家コストを削減できると考えているそうだ。